バッドエンド予定の亡国公女は幼馴染の騎士様と王子様に困惑する。

館花陽月

文字の大きさ
8 / 8

騎士の誓い。②

しおりを挟む
「一番下の第4皇子は俺たちの1つ上の14歳だ。
成人の儀を行えるのは18歳の年。
あと4年の猶予がある。
その間の期間、内乱がどうなっていくのか様子を見て行くことに決まったよ。」

カイの美しい銀色の髪がサラッと揺れた。
真剣に話す青みが濃いアースアイを私をジッと見つめていた。

「あと4年・・。私が17歳になる年ね。」

「・・4年か、上等だ。
こちらも黙ってただ様子を見ているつもりはないけどね。」

話を聞きながら考え込むような仕草をしていたシオフィンが閃いたように、目を細めて笑みを浮かべた。

私が17歳になった年は、前の世では祖国セレンダートが帝国に滅ばされた年になる。
この時期までに答えを見つけなければならない!
大事な祖国を守る道を必ず見つけるわ・・。

「それにしても・・。詳しいな、カイ?
お前、帝国に知り合いでもいるのか??」

ハッとしたフィンは、驚くように詳しく説明をしたカイを不思議そうに椅子に座ったまま見上げた。
一瞬、カイの瞳が揺れた。
動揺を映したカイの瞳は苦しそうに揺れてふいっと瞳を反らした。
その時、ガセボへと向かう足音が聞こえた。

「フィン探したぞ!!どうしても眠れないんだ!!お前、妹君の絵姿を持って来てはいないか??」

ガセボの前の生垣を越えて現れたレキオスお兄様が、私たちを見つけて息を荒くしたままフィンの前へと進み出た。

現れてすぐにド阿呆な質問を真顔で繰り出す兄に、
私達は一瞬呆気にとられた表情で玉のような汗を額に浮かべた兄さまを呆然と見つめた。

フィンは口元だけに笑いを浮かべた後に「持ってますよ。見せて差し上げますよ、お義兄様」と言って私達には「先に戻っているよ」と少し寂しそうに笑った。
犬のように嬉しそうにフィンを待つお兄さまに声をかけると、パンパンと手でお尻の砂を払って立ち上がると王宮の方へと先に戻っていった。

気のせいか、私の目にはレキオスお兄様の後ろ姿には耳と尻尾が見えた気がした。

「・・なんだあれ??
ソフィア王女の絵姿って何だよ。」

「夕食の時にね、、色々あったのよ。
ソフィア王女が美人だと知ったお兄様が婚姻に前向きになっただけの話なのよ。
色恋が絡むと残念な困った人になるのよね・・。」

「なるほど露骨だな・・。
既に、フィンに遊ばれてる気がするけどな。」

二人でガセボに取り残された私達は、お兄様の変貌について笑いながら話をした。
ふと、先程のフィンの言葉を思い出した私は不安になってカイに聞いた。
「カイ、貴方・・。帝国に詳しいの?尋ねたことはなかったけど、あの国に縁でもあるの??」

私はカイが前の世では、ロンバビルス帝国に留学していた事を思い出していた。

カイが私の17歳の誕生日前に、ロンバビルス帝国に急に留学すると言って旅立った。

その理由を問いただしても、はぐらかして教えてはくれなかった。
そして、ただ最後にあの言葉だけを残して私の前から立ち去ったのだった。

「別に何もないよ・・。
俺は騎士のエルダート公爵家の息子だからな。
敵となる可能性がある帝国の竜騎士についても、かの国の歴史や王族についても学んできている。
ただ、それだけだ・・。」

「・・本当に??
貴方は、隠し事をしないで欲しいの・・。
わたしね、お父様にロンバビルス帝国からの婚姻の件を直接知らされていなかったのよ。
もし、私が知らされていなかったことから間違った選択をして、祖国や大切な人たちに危険が及ぶ結果になるかもしれない。
わたしは、ただ守られるだけじゃなくて、ちゃんと知っていたいの!!自分の選択で大切なものを守れるようになりたい・・。」

「そうだよな。
アイリスはそういう奴だもんな・・。
ごめん俺、嘘ついた。今はさ、まだお前に言えないこともある。
だけど、いつか必ずお前にだけは本当のことを言うって約束するよ。
もう少しだけ、待っていてくれないか??」

「うん・・。
あなただけは、いつだって正直だった。
カイのことは信じられる気がするの。
猶予があるなら4年間に、祖国やみんなを守れる人間になるために沢山学ぶわ!
私がロンバビルス帝国に嫁いでも、みんなが平和であり続けるといいわね。」

「同感だ。
お前なら大事なものを守れるよ。・・絶対な。
知っているか??騎士の誓い。
お前がロンバビルス帝国に行く時は一人にしない。
俺も一緒に行くよ。
お前を大事に思っているみんなの為にも、お前を死なせはしない。
アイリスは、この命に代えても守るよ。」

月夜に照らされたガセボに向かい合った私の前で、カイは左手を右胸に当てて跪いた。
私の右腕を取ると、自らの頭上に置いた。

私のアメジスト色の色の瞳は月夜に照らされて紅く輝く。

「ここに剣はないけど・・。
騎士の誓約を刻むよ。」

「えっ、なに??どうするの??」

「・・このカイエン=エルダートはここに騎士の誓約を刻む。この命に代えても・・。
アイリス公女殿下をこの身が尽きるまでお守り致します。わたしは、貴方の騎士として嘘偽りなく仕え続けることをここに誓います。」

互いに混ざり合った色の瞳は虹色を映し出していた。銀色の滑るような艶やかな髪は冷たかった。
こんなの過去にはない・・。

私は膝をついて銀色の長い睫毛に影を落としているカイをただ黙って見守っていた。

カイが私を見上げて重なる視線には、穏やかさの中に強く力強い意思がそのラピス色と翠色が交じり合って、見たことがないような宝石のように衝撃的に美しかった。

「死ぬときは一緒だ・・。アイリス。」

「私でいいの??だって、騎士の誓約って気軽にするものじゃないよね??」

「いいんだ。
俺も逃げないって・・決めたからさ。」

誓い合った二人は、立ち上がると互いの目を見合わせて微笑んだ。
何故だか急に瞳が熱くなって心臓の鼓動が逸る感覚に私は違和感を感じて下を向くと不思議そうにカイは首を傾げて「・・おい、なんだよ?」と笑う。

前に体験した13歳の誕生日は、アメルディア王国から私にフィンとの婚姻の申し出があって、父は前向きに返事を返していた・・。

あの頃から、カイとは少しずつ距離が出来てしまったような気がする。
騎士団に入り、鍛え上げた肉体と女神に揶揄された美貌でアメルディアに留まらず、他国の姫君たちの憧れの的になっていったカイと、フィンの婚約者だった私との距離は大きくなるばかりだった。

「なんでもないよ。ただ、月が奇麗だなって思っただけ・・。」

「え・・。ああ、本当だな。今夜は満月か・・。」

私は少し背が高いカイの細長い影に並んで何時の間にか天高く上がった月を見上げた。

あの頃と、違う選択を選んだ私の人生が変わり始めていることを噛みしめていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

処理中です...