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異世界。
暴走のアレクシス。
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薔薇園の入り口にある美しい女性と男性を象った像に背をもたれて
長い脚を組んだ黒い騎士服姿のアルベルトが、そこに存在感を放って立っていた。
金色の瞳は宵闇に揺れて、流れるように揺れていた。
長い睫毛の奥にあるブルーサファイアの瞳は、大きく輝いていた。
「・・・アルベルト殿下。今の話を聞いていたんですか?」
「悪い・・。晩餐の時間になってもノア王子が見つからないと護衛兵士が
探していたので手分けして探していたんだ。
聞くつもりは無かったんだが、タイミングを逸してしまって・・。すまないな。」
柔らかく微笑むアルベルトは、困ったように笑っていた。
アルベルトの姿を見て、ホッとした私は力が抜けそうになった。
私の言葉を読んだかのように、コホンと咳払いをして駆け寄り、私の手を引いた。
「美月、行くぞ・・・。
姉がお前を連れて来いって煩い。
明日の出立の前に、「歌姫・エリカの話を聞き倒す会!!」なる肌寒さを感じるものを母と、
計画しているようだ。
それはもう、必死で探し回っていたぞ・・。」
不機嫌そうに、ノアから私を引きはがして王宮へと歩を速める。
「アルベルト殿下・・・。
私は美月を我が妃に望みます。
私達は運命の相手だと思っています。
だから、くれぐれも私たちの邪魔だけはしないで下さい・・。」
強く睨み付けるように大きな声で、アルベルトの背中へ向けてノアが声を張り上げるとアルベルトの足はそこで一度、立ち止まってゆっくりと振り向いた。
「ノア王子、僕は二人の邪魔などするつもりはございません。
婚約もプロポーズも・・。勝手になさればいい。
ただし、ちゃんと美月の気持ちを考えてあげて下さい・・。
この世界に残る選択をすることは、また、彼女から両親や兄弟を失う悲しみを齎すことになるんだ・・。」
アルベルトの言葉にノアは、一瞬驚いた顔で見上げた。
息を飲むように私も、隣で私の手を強く握るアルベルトの横顔を見た。
美しいサファイアの瞳に迷いはなく、顰められた眉と力強い瞳の強さに何故か・・私の心は揺れた。
「そうだとしても・・。家族を失っても、その分彼女を幸せにする。
私には、その覚悟があります。私には、彼女しかいない。・・他の女性では駄目なんです。
だから美月、ゆっくり考えておいてくれ・・。
・・では、また後程な。」
銀色の髪を揺らして、反対方向の左翼へと歩いて行くノアの後ろ姿を見ながら銀色の月を見上げた。
昨夜よりも、大きく輝くその月は強い光を私に向けていた。
私の横顔をジッと見守るアルベルトの視線に気づいて振り向くと、彼は悲しそうに笑った。
「美月には・・、選択ばかりが突きつけられるな。
ただでさえ、知らない世界、知らない人間に囲まれて、家族や親しい人間とは離されて・・慣れない環境で生きているだけで大変なのにな。」
私の茶色の瞳は激しく揺れて、唇が渇いていた。
何故だか、アルベルトの言葉に胸が熱くなる。
私を理解しているような言葉に・・・。
・・・どうして?
アルベルトの言葉に、胸の鼓動が高鳴る。
「何でさっき・・・。庇ってくれたの?
心が読めるから・・??」
「違う・・。読まずとも、解るだろう?
残された者の気持ちの方が辛いと僕は思う。
ただ、思ったことを言っただけだ。別に、お前を庇った訳でもない・・。」
不貞腐れた表情のアルベルトは、私の瞳から視線を反らして遠くを見た。
「変な男・・・。」
私は思った言葉が素直に言葉に出て、ボソッと呟いた。
その言葉に敏感に反応したアルベルトは、怒ったようにこちらを
向いて私の両頬を掴んで思い切り伸ばした。
わたしは頬にピリッと走った痛みに顔を顰めた。
「・・痛いっ!!!」
本気で伸ばしてる、この人・・。
睨むように見上げたら、クスッと笑われた。
「王子に向かって、変な男とはな・・。
不敬罪で、処刑されたいか?」
「ふーん・・・。王立騎士団に捕縛されない自信しかないけど・・!?
団長様、あれじゃあ即、瞬殺されるわよ。もう少し鍛えなさいよね。」
「はぁ・・。美月は可愛くないな・・・。部下は無能だと言うなら
縛る役目は団長のこの僕が見本を見せないとな。
・・そうだ、今すぐに直々に縛り上げてあげようか?」
「いらないわよ!!また、馬鹿なこと言ってると・・・。ほら、あのアレクシスあたりが・・・。」
ガサガサ・・・。
庭園の垣根が揺れて、人の気配を感じた私は驚いて息を飲んだ。
ザザッ・・。と人がよろけて私たちの目の前へと現れる。
「・・・お、お、・・・。」
ガサッと葉っぱを漆黒の頭に乗せたまま、驚いた表情で私とアルベルトを見上げていた。
紫の瞳が、私とアルベルトの双方を見やり涙目で何度も頷いていた。
「「・・・アレクシス!?」」
「そう・・か・・。君たち・・・。こんな所で・・・。」
「はぁ!?」
ちょっと、アレクシス?!
・・何言ってんのよ!?
私は意味が分からず、アレクシスの震える瞳に驚いていた。
「お・・おいアレクシス・・。待て、落ち着け!」
アルベルトは、強張ったような声でアレクシスの側へと近づいていく。
「俺、何度もごめん・・・。お、お邪魔しました!!!!」
ダッ!!と、その場から走り出して王宮内へと走り込んで行ってしまった。
嵐が過ぎ去った後のような静けさがその場にもたらされる。
「・・・今日の晩餐会は欠席しても良いかしら?」
「それは、アレクシスの暴走と、あの人達の妄想を一気に突き抜けた物にしてしまうけど・・。
覚悟はあるのか?」
横目で私をニヤニヤした瞳で見つめたアルベルトを睨み付けた。
「絶対嫌よ!!断固阻止するわ。・・・行きましょう。」
「賢明な判断だ。一分一秒でも早く、晩餐会場に急ぐぞ!!アレクシスの妄言を一秒でも短く止めねばな!!」
アルベルトは、私の手を取って走り出す。
さっきまでの苦い気持ちは、消え去ったように私の心は軽くなる。
その私の笑顔に、アルベルトの瞳が嬉しそうに細められていた。
晩餐会場に着いた私達は勿論、疑惑の瞳と、好奇心を持った瞳の双方が渦巻く食卓に着くことになった。
アレクシスの妄言は、少々どころか大きく盛られて伝わることになったのであった。
長い脚を組んだ黒い騎士服姿のアルベルトが、そこに存在感を放って立っていた。
金色の瞳は宵闇に揺れて、流れるように揺れていた。
長い睫毛の奥にあるブルーサファイアの瞳は、大きく輝いていた。
「・・・アルベルト殿下。今の話を聞いていたんですか?」
「悪い・・。晩餐の時間になってもノア王子が見つからないと護衛兵士が
探していたので手分けして探していたんだ。
聞くつもりは無かったんだが、タイミングを逸してしまって・・。すまないな。」
柔らかく微笑むアルベルトは、困ったように笑っていた。
アルベルトの姿を見て、ホッとした私は力が抜けそうになった。
私の言葉を読んだかのように、コホンと咳払いをして駆け寄り、私の手を引いた。
「美月、行くぞ・・・。
姉がお前を連れて来いって煩い。
明日の出立の前に、「歌姫・エリカの話を聞き倒す会!!」なる肌寒さを感じるものを母と、
計画しているようだ。
それはもう、必死で探し回っていたぞ・・。」
不機嫌そうに、ノアから私を引きはがして王宮へと歩を速める。
「アルベルト殿下・・・。
私は美月を我が妃に望みます。
私達は運命の相手だと思っています。
だから、くれぐれも私たちの邪魔だけはしないで下さい・・。」
強く睨み付けるように大きな声で、アルベルトの背中へ向けてノアが声を張り上げるとアルベルトの足はそこで一度、立ち止まってゆっくりと振り向いた。
「ノア王子、僕は二人の邪魔などするつもりはございません。
婚約もプロポーズも・・。勝手になさればいい。
ただし、ちゃんと美月の気持ちを考えてあげて下さい・・。
この世界に残る選択をすることは、また、彼女から両親や兄弟を失う悲しみを齎すことになるんだ・・。」
アルベルトの言葉にノアは、一瞬驚いた顔で見上げた。
息を飲むように私も、隣で私の手を強く握るアルベルトの横顔を見た。
美しいサファイアの瞳に迷いはなく、顰められた眉と力強い瞳の強さに何故か・・私の心は揺れた。
「そうだとしても・・。家族を失っても、その分彼女を幸せにする。
私には、その覚悟があります。私には、彼女しかいない。・・他の女性では駄目なんです。
だから美月、ゆっくり考えておいてくれ・・。
・・では、また後程な。」
銀色の髪を揺らして、反対方向の左翼へと歩いて行くノアの後ろ姿を見ながら銀色の月を見上げた。
昨夜よりも、大きく輝くその月は強い光を私に向けていた。
私の横顔をジッと見守るアルベルトの視線に気づいて振り向くと、彼は悲しそうに笑った。
「美月には・・、選択ばかりが突きつけられるな。
ただでさえ、知らない世界、知らない人間に囲まれて、家族や親しい人間とは離されて・・慣れない環境で生きているだけで大変なのにな。」
私の茶色の瞳は激しく揺れて、唇が渇いていた。
何故だか、アルベルトの言葉に胸が熱くなる。
私を理解しているような言葉に・・・。
・・・どうして?
アルベルトの言葉に、胸の鼓動が高鳴る。
「何でさっき・・・。庇ってくれたの?
心が読めるから・・??」
「違う・・。読まずとも、解るだろう?
残された者の気持ちの方が辛いと僕は思う。
ただ、思ったことを言っただけだ。別に、お前を庇った訳でもない・・。」
不貞腐れた表情のアルベルトは、私の瞳から視線を反らして遠くを見た。
「変な男・・・。」
私は思った言葉が素直に言葉に出て、ボソッと呟いた。
その言葉に敏感に反応したアルベルトは、怒ったようにこちらを
向いて私の両頬を掴んで思い切り伸ばした。
わたしは頬にピリッと走った痛みに顔を顰めた。
「・・痛いっ!!!」
本気で伸ばしてる、この人・・。
睨むように見上げたら、クスッと笑われた。
「王子に向かって、変な男とはな・・。
不敬罪で、処刑されたいか?」
「ふーん・・・。王立騎士団に捕縛されない自信しかないけど・・!?
団長様、あれじゃあ即、瞬殺されるわよ。もう少し鍛えなさいよね。」
「はぁ・・。美月は可愛くないな・・・。部下は無能だと言うなら
縛る役目は団長のこの僕が見本を見せないとな。
・・そうだ、今すぐに直々に縛り上げてあげようか?」
「いらないわよ!!また、馬鹿なこと言ってると・・・。ほら、あのアレクシスあたりが・・・。」
ガサガサ・・・。
庭園の垣根が揺れて、人の気配を感じた私は驚いて息を飲んだ。
ザザッ・・。と人がよろけて私たちの目の前へと現れる。
「・・・お、お、・・・。」
ガサッと葉っぱを漆黒の頭に乗せたまま、驚いた表情で私とアルベルトを見上げていた。
紫の瞳が、私とアルベルトの双方を見やり涙目で何度も頷いていた。
「「・・・アレクシス!?」」
「そう・・か・・。君たち・・・。こんな所で・・・。」
「はぁ!?」
ちょっと、アレクシス?!
・・何言ってんのよ!?
私は意味が分からず、アレクシスの震える瞳に驚いていた。
「お・・おいアレクシス・・。待て、落ち着け!」
アルベルトは、強張ったような声でアレクシスの側へと近づいていく。
「俺、何度もごめん・・・。お、お邪魔しました!!!!」
ダッ!!と、その場から走り出して王宮内へと走り込んで行ってしまった。
嵐が過ぎ去った後のような静けさがその場にもたらされる。
「・・・今日の晩餐会は欠席しても良いかしら?」
「それは、アレクシスの暴走と、あの人達の妄想を一気に突き抜けた物にしてしまうけど・・。
覚悟はあるのか?」
横目で私をニヤニヤした瞳で見つめたアルベルトを睨み付けた。
「絶対嫌よ!!断固阻止するわ。・・・行きましょう。」
「賢明な判断だ。一分一秒でも早く、晩餐会場に急ぐぞ!!アレクシスの妄言を一秒でも短く止めねばな!!」
アルベルトは、私の手を取って走り出す。
さっきまでの苦い気持ちは、消え去ったように私の心は軽くなる。
その私の笑顔に、アルベルトの瞳が嬉しそうに細められていた。
晩餐会場に着いた私達は勿論、疑惑の瞳と、好奇心を持った瞳の双方が渦巻く食卓に着くことになった。
アレクシスの妄言は、少々どころか大きく盛られて伝わることになったのであった。
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