二者択一で転生した令嬢は将来も選択したい

館花陽月

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祝福の子。

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自分の能力は自分の「選択」によって決まる。
私はいつか選択を迫られるだろう。

生まれたときから持っていたこの力を二者択一する日が・・・もうすぐやってくる。


世界の光となる力。
世界の闇となる力の両方を持ち併せて産まれてきた「祝福の子」がいた。

理由があって彼は生まれてすぐに母親から離された。
疎まれ、ネグレクトを受けていた。
敏感期と呼ばれる発達と愛着の形成期に
彼は一度も愛を持って抱きしめられることも、口づけられることもなかった。
彼は愛を知らない乳児期を過ごしたのだった。

2歳の誕生日に優しい両親に引き取られた。
しかし、あまり笑わない、警戒心の強い子供になっていた。

新しい家族の元へ来てから不思議なことが起こるようになった。
家の周りには沢山の警備が敷かれていたのに、夜になると寝室に
見知らぬ男が現れ、命を狙われるようになった。

生まれながら、’力の祝福’を持って生まれた彼は次第に難なく刺客を撃退出来るように
体の成長と共に強くなっていった。

少しの傷もこの’力’なら、手を翳すだけで治る。
例えば重い病でも数分あれば治癒出来る。

そして・・・。誰かを殺すのも簡単だった。
初めて人を殺したのは5歳の頃。

警備が厳重な城の中にまで現れた刺客が、大切な幼子である2人を巻き込んで私を狙ってきたのだった。
初めて人を傷つけるために力を使った。
目が眩むほどの光と共に剣を振り回し、こちらに襲い掛かる刺客をあっさりと霧散させたのだった。

城の王は警備を更に強化し、彼らに専属の魔力にも対応出来る騎士を付けたのだった。
刺客も学び、こちらを直接襲うことを諦めた。
毒を盛られることは多々あった。

毒には幼少から慣らしてあったが、尋常ではない多量の毒を仕込まれた時は何度か意識を失うことが
あった。
家族の前で自分の醜態を晒すことは出来なかった。

何故なら、幼少期から命懸けで自分を守ろうと必死になってくれた優しい人たちを心配させたくなくて。
9歳のある日、フェナルデイ伯爵家のサイラスの元へ向かう途中に刺客によって襲われ、傷だらけになった。

毒を仕込んだ剣で数か所、傷をつけられたが命からがら逃げることが出来たのだった。
サイラスの家まで・・・もう少し。

見える距離まで来たのに、途中の野原で力尽きたのだった。
意識を失いかけ、胸が苦しかった。

次第に意識も保てないほどの体の熱さに、絶望したのだった。
金色の髪の小さな女の子が遠くから近づいてきた。
花を沢山摘んで、嬉しそうにスキップしながら近づいて来たのだが。

私が倒れているのを見てしまい、驚いた顔をして真っ青になった・・・。
緑の大きな透き通った瞳と、美しい黄金の髪。
頬はバラ色の美しい少女は、私を迎えに来てくれた天使なのだと思い込んだ。
目を開けている力もなくなり、私はそこで意識を失ったのだった。


気が付いた時には、手に温かい温もりを感じた。
横を見やると、学問の師であるフェナルデイ伯爵が、私の手を握りしめていた。

「可哀想に・・・・。何故お前ばかりがこんな目に合わなければならないのだ。苦しかっただろうな・・。お前の苦しみを変わってあげられればいいのに・・。」
と、自分の痛みのように目に涙を溜めて呟いていた。

私は、生まれた時から殆ど喜怒哀楽の感情を持たず、心が動くことはなかったはずなのにいつの間にか両目から温かい涙が流れていた。

フェナルデイ伯爵の言葉が、・・・手の温もりが暖かかくて胸が一杯になった。

「お父様?おにーちゃまは大丈夫なの?」

先ほど天使と見違えた少女は、ひょこっと伯爵の後ろからベッドを覗き込んできた。
私は、泣いている自分の顔を見られたくなくて、毛布を頭まで被った。

「黒髪のおにーちゃま、お歌好き?」

「・・・別に。」

「そう、じゃあ歌うね・!」

「・・・・・。」

目の前で気を失った私に何の疑問や警戒心を持たずに話しかけてくる。
サイラスに妹姫がいると言っていた。
彼女が妹姫であるルナ姫なのだと思った。

流れてきた歌は、小さな子供の音程が外れた気まぐれで頓珍漢な音ではなかった。

儚く、切なく、温かい気持ちになる声音。
フェナルデイ伯爵の手と同じ温かさ。
まだ小さな少女が、私にがんばれ。とエールを送っているように感じた。

毛布の中で丸まり、彼女の歌を目を閉じながら聞いていたらそのまま夜までぐっすり眠ってしまって
いたのだった。
久しぶりに良い夢を見て、安心しきって深い眠りについてしまったのだった。


その後、王宮のお茶会で再会した時もルナは美しかった。
私は容姿の美しさよりも、彼女の心遣いや透き通った歌声、仕草に心が洗われるようだった。
一緒に大きくなりながら、自分の隣でどんどん美しくなる彼女に気持ちは膨らむばかりだった。

変わらず刺客は所々で現れ、命を狙われる日々が続いていた。
17歳になったある日エトナの町に買い物に行っている時に小道で狙われた私は、腹を殴られ意識を失った隙に毒を飲まされ殺害されそうになった。
人が通りかかり、大きな声を出してくれたお陰で町に同じく買い物に来ていたルナが私を見つけ、持っていた毒消しの薬草の瓶で治してくれた。

それから彼女は私に「カイザル様、また毒薬を飲まされた時にはこれを飲んでください。貴方がまた狙われた時に命が助けられるように、薬を作ってお渡しします。ご家族や周りに心配をおかけしたくないでしょうから、受け渡取りにいらして下さい。お日にちや時間は予めお約束して、初めて貴方とお会いしたシロツメ草の野原で待ち合わせましょう。」

「でも、それでは貴方が狙われるかもしれないし・・・。それに私のために毎回薬を作らせるのは申し訳ないから。」
丁重に断りを入れようとした。
彼女と二人っきりで会うのは・・・あまりにも自分に取って心細く、嬉しいのに、苦しかった。
側に誰かをおけるような自分ではないのだから。

「それでは、父上や兄上がお家にいる日にいらしてください。何かあっても二人が何とかしてくれますもの。」
「いいえ、それだけでは不安です。私の護衛も貴方に着けさせてください。それでも・・と申してくださるのなら
有り難く頂戴させて頂きます。」

「いいわ。貴方が何を抱えているかは分からないけれど。それを知りたくもないし、それに同情もしません。
ただ、友人として何か出来ることをさせて欲しいの。そうでないと私が勝手に心配になるから!!
我儘を聞いてくれて有難う。」

ルナの美しさは女神のようだった、
いつの間にか天使から女神のように美しさも思慮深さも持ち合わせた素晴らしい令嬢になっていた。
愛してやまない。私にとっての・・・たった一人の女性だった。


アルベルトが15歳になり、姫を望んだことを知った時は悔しさと、寂しさと自分の持って生まれた力を憎んだ。
しかし、この力がある限り狙われ続けるであろう。

アルベルトのルナへの想いは本物だった。人となりを知り、私が信頼できる数少ない人間の一人である誠実な男だった。ルナもアルベルトとなら幸せになれるだろう。
彼女には幸せになって欲しかった。

・・・・隣にいるのが私ではなくても。


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