二者択一で転生した令嬢は将来も選択したい

館花陽月

文字の大きさ
39 / 56

シェンブルグ共和国の姿。

しおりを挟む
「・・・ルベルト・・さ・ま。・・アルベルト様?大丈夫ですか??」

ガタンガタン。

大きな馬車の揺れも気にならない程、思いめぐらせていた。
アルベルトを心配そうにエリカは覗き込んだ。

「いつまでも愚図愚図しなーーーい。
貴方のせいでも、誰のせいでもないのですよ?血は繋がってはいなくとも、サフィール様とアルベルト様の時間は真実です。変わらず弟で良いではないですか!!」

さらっと笑顔でエリカは優しい言葉を言う。
アルベルトは、エリカの言葉に胸が少しだけ軽くなる。

「そうだね。サフィールは弟だ、大切な弟なんだ・・・。」アルベルトは顔を上げ、嬉しそうにエリカに告げた。


「辛気臭い顔はよして元気出してください!いつか思いは通じます。きっと王妃様もそう思っておいでですよ。さぁ!シェンブルグの国境の街ルピリシアにもうすぐ着きますよー!!
あ、チョコレートが美味しいって書いてますよ。お土産買いましょうねー!!」

いやいや、お土産は旅の最後でしょう。
エリカの明るさに、アルベルトは笑顔になる。

「運命に皆を巻き込み、自分の呪われた生まれのせいで傷つけてばかりの私のほうが辛いのだぞ、アルベルト。」カイザルに揶揄され、アルベルトも苦笑いをする。
「そりゃそうだな!!カイザルの重圧ったらないぞー??俺なら御免だ、勘弁だ。」

「お兄様、カイザル様に謝って!ほら、・・図星すぎてちょっと落ち込んじゃったじゃない!」もー。と怒り、すまんすまん。とサイラスが笑う。カイザルも横を見ながら少し拗ねている。

他愛もない会話に私たちは笑顔を取り戻す。

シェンブルグまでは馬車で2日、1日目の行程を経て国境を超えたルピリシアまでもうすぐ。

ルピリシアは、行商が行き交う賑やかな街だと聞いていた。
大きな広場に噴水があり、憩いの場になっていると・・シェンブルグの見聞録には確か書いてあった。

大きな森を抜け、街が見えて来た。
書き記されたような、賑やかな街並みはそこにはなく一同が呆然と窓の外を見ていた。

焼け焦げ、原型の保たぬ家とが無数にあり、人の姿は見えない。

「なんだ・・・。なんで国境近くの町がこの有り様なんだ?」
サイラスは驚き、窓から身を乗り出す。

「自棄に静かだ。それに町の様子が絵とは違いすぎる・・。人の気配も疎らだ・・・。まるで死んだ町だな・・・。」カイザルは驚いて馬車を止めるよう指示をする。

「お兄様、広場の方に倒れた人々が・・・。」「いや、それよりも・・・。川の方には死体の山が築かれている・・・。疫病か、戦でもあったのか?」


手分けをして街の様子を見に行く。
この町の様相を知れば知るほど、その惨状に凍り付く。
倒れる人と、死体の数々・・。焦げた家々が物語る現状の悲惨さに吐き気がする。

「お姉ちゃん・・・。お水ある?」

ドレスの裾を引かれ、驚いて下を見ると痩せこけた頬に、簡素な布を纏った女の子が立っていた。
慌てて私は、持っていた水筒を手渡すと少女はがぶがぶと飲み始めた。
泣きながら「何日ぶりかのお水だった・・・の。有難う・・。」
そう言ってその場に倒れた。
私は急いで、少女を抱き留め座り込んだ。

「えっ、ちょっと!!しっかりして。何があったの?!」

意識が薄れた少女に問うと、「お・・王様・・・に殺さ・・れ・・・・。」

その言葉に近くにいたカイザルは眼差しを険しくした。
すぐにカイザルは魔力を放ち少女に手を翳した。時すでに遅く、光を放つ間もなく少女の息は絶えてしまった。
心臓マッサージを繰り返すも、脈は触れることはなかった・・・。

さっきの彼女の言葉は・・・王様?王様に・・・。
まさか!!
この先が紡ぐ言葉に唖然とする。

私は頭の中に疑問が浮かんだ。
エミリアン王子はシェンブルグは魔法が主流の国家であり、医術よりも魔法が万能であると言っていた。

「・・ここに魔術使いはいないの?こんな数の病人が出ている町を王家は無視しているなんて・・・。
あんな小さな子が水も飲めず死んでいるのに・・・。」

私は悲痛な顔でカイザルの方を見た。

先ほどのカイザルの眼差しは、何かを知っているようだった。
私を静かに見下ろしたカイザルは、悲しそうに呟いた。

「この国はもう王の暴走により、民は疲弊し、病に侵されても治すための魔術師は王都にすべて召し上げられている。医術を認めず、魔術にも頼れず・・・。
この国では一日に何千人もの民が死んでいっているのだ。自らの私欲のために、民の命を守らぬ愚かな愚王を・・・私は許せぬ。」


「王様が民の命を?そんなの信じられない・・・。」

ルーベリアの王族を見て育ったルナの記憶がある私には、信じられなかった。

カイザルも、陛下や父や、アルベルトを見て育っている。
宿命を知り、シェンブルグの現状を知った時はどんなに驚いたであろう。

祖国の民の命が軽んじられる国に、王への憤りは凄まじい物であった筈だ。

「私はそんなシェンブルグの愚王と決着を着けるためにこの国にやって来たのだ。
何時までも刺客を放ち、母と私の命を狙ってくる王と対峙する為に・・・。
私は闇の力と光の力の二者択一を選択をする宿命を持つ王子だ。私の選択はいつか王を殺し、闇を選択することになるかもしれない。・・・・その為に私は一人でここに来ようとしていた。」

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。

石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。 ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。 そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。 真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。

元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ
恋愛
 侯爵令嬢のアンネマリーは流行り病で生死を彷徨った際に、前世の記憶を思い出す。前世では地球の日本という国で、婚活に勤しむアラサー女子の杏奈であった自分を。  病から回復し、今まで家や家族の為に我慢し、貴族令嬢らしく過ごしてきたことがバカらしくなる。  また、自分を蔑ろにする婚約者の存在を疑問に感じる。 「あんな奴と結婚なんて無理だわー。」  無事に婚約を解消し、自分らしく生きていこうとしたところであったが、不慮の事故で亡くなってしまう。  そして、死んだはずのアンネマリーは、また違う人物にまた生まれ変わる。アンネマリーの記憶は殆ど無く、杏奈の記憶が強く残った状態で。  生まれ変わったのは、アンネマリーが亡くなってすぐ、アンネマリーの従姉妹のマリーベルとしてだった。  マリーベルはアンネマリーの記憶がほぼ無いので気付かないが、見た目だけでなく言動や所作がアンネマリーにとても似ていることで、かつての家族や親族、友人が興味を持つようになる。 「従姉妹だし、多少は似ていたっておかしくないじゃない。」  三度目の人生はどうなる⁈  まずはアンネマリー編から。 誤字脱字、お許しください。 素人のご都合主義の小説です。申し訳ありません。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)

透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。 有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。 「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」 そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて―― しかも、彼との“政略結婚”が目前!? 婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。 “報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。

処理中です...