二者択一で転生した令嬢は将来も選択したい

館花陽月

文字の大きさ
44 / 56

黒い陰謀。

しおりを挟む
シェンブルグの王都、ミストラルは霧で覆われていた。

「エミリアン王子殿下の力は「心の声を聞く」こと、「先を読む」の極めて魔力の低い王子です。
どうしても、今、この内政がひっ迫している時期に王太子に任命する儀を行わねばならぬのですか?」

この国の宰相、ジェラルド=ガードナーは王へ問う。

「当然だ!!あいつを王太子に任命することで、カイザルはいなかった事になるのだぞ。
いつまでも、行方知れずの第一王子がいるかもしれない。そやつが、国を救ってくれるかもしれないなぞ、そんな期待なぞ下らぬと白絞めねば。・・・これで、馬鹿な民衆の妄言も止むであろう。」


「しかし、カイザル=エルタニアン=ルード=シェンブルグはまだ・・・。」

「ほざけ!!いつまで奴を始末出来ぬ・・・!?何十、何百人もの刺客を派遣したと思っているのだ!!
魔術師も使えぬ者が多く、無駄な奴らばかりを雇いおって・・・。」

「申訳っ、ございません・・・陛下!
明日の任命式が終わり次第、魔術師を増員し、着々と用意しております兵と共にルーベルグに派遣いたします故・・。」怯えた表情で、静かに頭を垂れた。

「そうだな。明日が終われば、ルーベルグも戦の罠に落ちるだろう・・。式典に王の名代で参加するアルベルト=エルフラン=ザッハ=ルーベルグの屍と共にな。」

杯に赤い液体が注がれ、それを飲み干すとシェンブルグの王、カディールは酷薄な笑みを浮かべ、ワインのような赤い瞳を光らせた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「はーい!!みんな注目ー!」

エリカが話を終えたろうタイミングを見計らって、皆の視線を集めた。
なんだと振り返る男性の人口密度が高いこの部屋に、大きな樽を抱えた執事が入ってくる。

ガシャン。

「ざっと、200種類の毒薬・劇薬・睡眠薬がこちらにございます。
小ズルイ手を使わせていただこうと思いますが、問題ないでしょうか?」

「・・・・これ、ああ。荷車の後ろに大きい樽があるなぁと・・。え?そんな危ないのと一緒に俺たちは旅して来たのか?!」サイラスが真っ青になった。

「これはルナが、カイザル様の毒薬を解す薬を作るために用意した物なの。
彼女の今までの努力を、この戦いで思いっきり使ってみては如何でしょう?
エミリアン殿下、これ、明日の魔術師や兵の朝食にちょちょっと混ぜていただけますか?」


「ルナは、そんな事をしていたのだな・・。知らないことばかりだな・・。彼女の厚意は無駄にしたくない。使える物は使おう。」カイザルは自分のための彼女の成果を少しだけ嬉しそうだった。

「・・・・・ああ。承知した。エリカは、危険な女だな。背筋が凍った。」

エミリアンはそう言いながら楽しそうだった。

「あははは。ちょちょいとか!エリカは、残酷なセリフを・・さらーっと言うのだな。」
・・・何故かアルベルトは爆笑していた。

ちょっと、こっちは大真面目なんすけど。

「死ぬ量じゃなければいいじゃないの。」、「まぁそうだな。」と、エミリアンと目で通じ合う。

「ちゃんと容量はノートに書いてきたので、任せました!」と、心で伝えると、さっそくエミリアンは部下に大きな樽を王宮へと運ぶよう指示する。

「これからの未来に悪い予感しかしない。明日、必ず決着を着けよう。
この際、・・手段なんてどうでもいい。
姫は私が必ず神殿へ送り届ける故、皆安心して休め。」

神に仕える者とは言えない暴言で、イムディーナも笑む。


王宮に戻る為、早々に部屋を退出するエミリアンと、それに続きカイザル、サイラスが部屋を出る。

私も退出しようと、扉に向かおうとするとアルベルトが私の後ろに立ち、静止した。

「どうしたんですか?」驚いて顔を上げると、アルベルトの手から、黒い石のリングがペンダントヘットになっているチェーンがシャラっと目の前に垂らされた。

「これ・・これは?」

「ブラックオニキスで出来た指輪。
・・・・サイラスとリリアの婚約指輪を見ていたら、どうしても僕もエリカにあげたくなった。」

恥ずかしそうに、真っ赤な頬を隠すように俯きざまに言葉を発する。
ラバトで買い物に行った時に見つけてくれたんだ・・。

「見たことないけど、君の黒い瞳はきっとこんな色かなって・・想像しながら選んだ。
・・・どうかな、気に入ってくれる?」

エリカはそっと、受け取った。
好きな人からの初めての贈り物を嬉しそうに身に着けた。
 
「有難うございます。すごくすごく!嬉しいです。・・・大切にいたします。」

エリカはアルベルトに体当たりで抱き着いた。
嬉しそうにサファイアの瞳を見つめた。

「僕の選択は決まっている・・。
例え、どんな結果になっても僕はそれを後悔しないよ。
だから、どうか君も信じた自分の選択をしてくれ。君がどんな選択をしても、変わらず君を愛している。」

愛している。

初めて言われた言葉に涙が出そうになった・・。

「はい。」と頷くエリカをアルベルトも思いきり抱きしめた。

美しい涙に頬が濡れたエリカに優しくキスをくれた。

・・・そんな光景を、退出のタイミングを逸してしまったタイミングの悪い「神官」イムディーナは、ピカピカの猫を抱えながら気まずそうに隅でその光景を見ていたのであった。


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。

石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。 ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。 そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。 真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。

元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ
恋愛
 侯爵令嬢のアンネマリーは流行り病で生死を彷徨った際に、前世の記憶を思い出す。前世では地球の日本という国で、婚活に勤しむアラサー女子の杏奈であった自分を。  病から回復し、今まで家や家族の為に我慢し、貴族令嬢らしく過ごしてきたことがバカらしくなる。  また、自分を蔑ろにする婚約者の存在を疑問に感じる。 「あんな奴と結婚なんて無理だわー。」  無事に婚約を解消し、自分らしく生きていこうとしたところであったが、不慮の事故で亡くなってしまう。  そして、死んだはずのアンネマリーは、また違う人物にまた生まれ変わる。アンネマリーの記憶は殆ど無く、杏奈の記憶が強く残った状態で。  生まれ変わったのは、アンネマリーが亡くなってすぐ、アンネマリーの従姉妹のマリーベルとしてだった。  マリーベルはアンネマリーの記憶がほぼ無いので気付かないが、見た目だけでなく言動や所作がアンネマリーにとても似ていることで、かつての家族や親族、友人が興味を持つようになる。 「従姉妹だし、多少は似ていたっておかしくないじゃない。」  三度目の人生はどうなる⁈  まずはアンネマリー編から。 誤字脱字、お許しください。 素人のご都合主義の小説です。申し訳ありません。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)

透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。 有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。 「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」 そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて―― しかも、彼との“政略結婚”が目前!? 婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。 “報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。

処理中です...