二者択一で転生した令嬢は将来も選択したい

館花陽月

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その後

沈黙のサフィール。その3

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大きな湖畔の前にある黒塗りの王城に、赤い尖塔が並ぶ大きく厳つい城塞がある。

そこに、勢い良く青と金で縁取りがされた白い馬車が駆け込む。 

この城にある執務室では、難しい顔で会談準備に追われている元王子の姿があった。

「サフィール殿、まさかの事態になったな・・。
アンダルディアが、攻めいるかもしれぬなぞ、、由々しき事態だ。リリア様も急ぎこちらに兵を送る算段を整えている。危惧で有れば良いが・・。」

「サイラス様、アンダルディアは内政が逼迫しております。戦という名の隠れ蓑で民を鼓舞し、外部へと目を向けさせたいのは承知。
ただ私はルーべリアを守るだけ・・。命を賭し、この地をお守りする所存でございます。」 

エメラルドの瞳は不安気に揺れていた。

目の前の強い金色の瞳は覚悟に燃え、前を向いて強い光を宿していた。

銀色の美しい髪は長く伸びて、後でまとめてあり
35才には見えない美しい美貌と、落ち着いた精悍さがあった。   

「シェンブルグからも、兵と魔術師をお貸ししますわ!!」

執務室の扉は開け放たれた。

金色の長い髪を靡かせなが、美しい姫君が現れる。
サイラスにもそっくりのエメラルド色の瞳には、大きく、薔薇色の頬と勝ち気にあげられた唇。

「エリカ・・?!お前、何故ここに?!」

「父からルーべリアの危機を知りました。
すぐに、戦の準備をした援軍を派遣する様にと。
私はシェンブルグの使者に名乗り出、こちらまで参りました!!」

16才になった姫はルナ=フエナルディを彷彿させる美しさに、強い意志や考えを持つ聡明さを持ち合わせていた。

「・・・エリカ殿、ここまで危険な道のりであったであろう。無茶をしてはダメだ。
兄上もどれだけ心配しておられるか・・。」

サフィールは、驚き、努めて冷静にエリカを見る。
更に美しく成長をした令嬢は、ニヤリと笑う。

「私には、イムディーナ様が着いてます。
私の神力も生まれながら強く出現しております故、父は心配よりもサフィール様に迷惑がかからぬようにと言いつかりましたわ!」 

笑顔で、サフィールを見て綻ぶ花のように笑う。

くすくす笑うサフィールに頬を赤くし、視線をしどろもどろにさせたエリカを見て、サイラスは驚いていた。

「・・なんだ、エリカ。お前、サフィールを好いておるのか?」

「もう!!サイラス叔父様はデリカシーがないわね。同じ叔父でもサフィール様とは大違い!」

頬を膨らませ怒るエリカに、サフィールは笑う。

「急ぎ駆けつけてくれて、有り難うエリカ殿。
・・・しかし、まだ戦になるとは限らぬが、ここは危ない。
援軍の知らせは、彼方の国を牽制する意味でも有り難い知らせだ。
すぐに、この話を彼方の国へも届くよう流してくれ。」

「はっ。畏まりました!」

兵が頭を垂れて直ぐに部屋を出ていった。

「いやです!!ここで様子を伺い、サフィール様のお側にいたいです。お願い、私なら貴方を守れます。」

エリカは強い抵抗を見せた。

サフィールは困り顔でエリカを見る。

「君にもしものことがあれば、兄とルナ妃に申し訳がたたぬであろう。
姫、ここは危うくなる。どうか、お帰り下さい。」

「危ないのはあなた様です!!私は貴方の運命を変えるための選択をしたいのです。
ずっと、初めて会った時から好きなの・・!貴方を捨て置けません!!」

涙を流したエリカは苦しそうに、サフィールを見る。

「大丈夫だよ、エリカ殿。私は気持ちだけで嬉しい。
イムディーナ殿、どうか、エリカ殿を兄のもとへ無事にお届けください。」

儚い笑みで、イムディーナへの礼を取り背を向けた。

エリカは涙を流し、悲痛な顔でサフィールを見ている。
イムディーナは、困った表情で立っていた。

「エリカ様は、殺したって死にませんよ。貴方様の方が遥かに危ないです。
カイザル様から、貴方を守るように申し付かりました。
エリカ様も、あまりにカイザル様にしつこく申すものですから・・・。
どうか、姫と私をここに置いて下さい。
違う未来の選択をさせる機会を・・・。」

イムディーナが静かに嘆願する。

違う未来の選択・・・。
兄であるアルベルトが望み、選んだ選択を思い出した。

そうか・・・。
もしや私に何かが・・・。

「エリカ殿・・・。私は、大丈夫です。死にません・・。」

「嘘です!!いつだって自分なんてどうでもいいとお思いでしょう?!
私は耐えられないのです。私にまで・・後悔させるおつもりですか?」

サフィールは目を瞬かせた。
兄の選択は理解した上で、自分にも深い傷と後悔が残る・・。
この痛みを彼女の人生に残すことは辛かった。

「分かった・・。危険なことはせぬ様にな。」
金の瞳は細く窄められ、優しい笑みをエリカに向ける。

「はい!!有難うございます。」

エリカは目の前の美しい元王子を見やり、涙を止めて笑った。

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