転生伯爵令嬢は、裏切り者からの寵愛に戸惑う。

館花陽月

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マルダリア王国の異変。

アレクシアが宿すもの。⑥

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「不味いな・・。
この戦闘が続けば、一般人を巻き込みかねないよ??しかもさ・・。こいつら変だよ!!
急所を突いても何で倒れないんだ!?」


麒麟と応戦していたユヴェールが額に汗を浮かべたまま叫んだ。


「・・ああっ。確かに可笑しいな。
しかも、痛みに強すぎるだろうが・・。
傷付いても痛みを感じて笑っている。・・・異常だ!!」」

気絶することなく、何度も立ち上がる刺客にぶるりと肌寒い畏怖のような物を感じていた。

エリアスも、不思議そうな表情で敵の不敵な笑みに恐ろしさを感じていた。

「これは神力の力じゃないな・・。
何か別の力のようだ!!どうなってるんだ?」

レオは、剣を別の手に持ちかえるとミリアの腹部を鞘で強く突いた。

「ぐうっ・・・。お・・のれ!!」

ミリアの琥珀色の瞳が痛みで震えていた。

「レオっ・・!!
僕にちょっと試してみたい事があるんだ。
みんな一度、一か所に固まろう!!」


 「「「「 ・・わかった!! 」」」」

クリスの呼びかけに、ルカとエーテルも含めたみんなが顔を見合わせて頷いた。



その頃、カイルと向き合っていた私は極めて不思議そうに目の前の王子に腕を引かれて戦闘から少し離れた場所を歩いていた。

「カイル・・。ねぇ、どこに行くの!?みんな戦ってるわよ???」

後ろを振り返ると激しい戦闘音が聞こえていたが、誰一人としてこちらに追いかけてくる者はいなかった。

その声にピタッとカイルの足が止まった。

「ねぇ、シア・・。
この馬車はここに来るまでに乗ってきた馬車だよね??身内のテントはエリザベートが温泉掘っちゃったし、他の救護テントにいる民間人を巻き込む訳にはいかない・・。
組織の狙いは君で、争いの火種であるシアが静かにここに隠れて見つからなければ大丈夫だよ!!
・・・さあ。これに乗って。」

「なるほど・・。流石カイルねっ。
そうそう・・。私が火種だものね。
私さえ黙って隠れていればみんなが平和・・・」

カイルに掴まれた腕を離そうとした瞬間・・。

鮮烈に見えた映像に私は息を飲んだ。

「・・まさか、嘘でしょう!?」

身体を引き離すように、カイルの手を振りほどいた
私は目を大きく見開いたままで、隣に並んでいたカイルを見上げた。

「あれ??どうかしたの・・???」

不思議そうに私を見下ろすカイルが首を傾げて小さく笑った。

「カイル・・・。貴方はカイルよね?
ザイード国の王太子で、レオやユヴェールの親友・・だよね。」

「どうしたの??シア・・・。
そうだよ!!
僕は正真正銘、ザイードの王太子で・・・。」

驚いた表情で両手を広げて私を見下ろしていた。

明るく色気のある男らしい中東風の美形王子。

「・・・じゃあ、レオニダスって誰よ??」

低い声で、私はカイルに問いを向けた。

目の前にいるカイルの強張った笑顔がひくりと引きつる。

一瞬だけ見えた映像の中に、カイルがミリアに「レオニダス」と呼ばれ、そのレオニダスがミリアに「イヴ」と組織の通り名で呼びかけていた映像ビジョンが脳裏を過った。

「カイルは青薔薇の栄光ローゼングローリーの幹部の一人・・。
「レオニダス」・・なの!??」

「・・あれ?あははっ。可笑しいな?
どうしてそれを君が知っているの??
僕、君に組織の事も、僕の組織名や地位についても何も喋っていないよね?
ああ、そうか・・。
シアの授かった神力は「聞く力」なのかな・・。それとも「見る力」の方なのかな??」

見たこともないような酷薄な表情を浮かべたカイルは強い力で私の顎を掴んだ。

「・・っ!?
何をするのよ、カイルっ!?この馬車って・・・。
まさか、これに乗せて私を攫うつもりで!?」

「ねぇ、シア・・。
今すぐその口を封じてもいい??
愛しさ余って憎さ百倍だよ・・。
いつまで経っても、君は僕の物にもならないしね?
妙に勘と運にも恵まれている君が心から羨ましいよ。」

カイルの金色の瞳が獲物を捕らえるように鋭く尖りを見せた。

その言葉に、ゾッと背筋に悪寒が走った。

「・・う、うっ・・。
そう何度もあっさり誘拐されるものですか!?
再度誘拐されたとか、拐われるのが、、趣味みたいじゃ・・ないの。
カイル、何で?・・どうしてよっ!?」


「初めから計画されていたんだ・・。
マルダリアの王立学院に留学生として在籍していたのも、アルトハルトに
来ることになったのも組織の目的の為にやって来たんだ。でも、王立学院で君に出会って恋に落ちたのは唯一の計算外・・。
いや、最悪の計算ミスだったかな。」

顎を掴んだカイルの指に力が入った。

「・・っ。カイル!?」

金色の瞳に、力なく揺れる私の水色の瞳が映っていた。

「直属の組織のトップからのご命令が下り、君を探し所望されておられる。ザイードもだが、マルダリアも危機的状況が続いている状況なんだ・・。
王が崩御間近な最悪の状態でね・・。」

カイルの言葉に一瞬、耳を疑った・・。

でも、ザイードもって・・。

そもそも、カイルは何故組織に身を置くことになったんだろう。

港で出会った兄と、マルダリアの王太子であるエヴァンから香った不穏な香りを思い出した私は不安気に瞳を揺らした。

「マルダリア王が・・。崩御間近って本当に??
だとしたらそんな中・・。
お兄様とエヴァン様は、アルトハルトで何を・・。」


「シア、僕は王立学院の雑魚たちのような愚かな失態はしない。君を必ずマルダリアへ連れて行かなければならないんだ!!あんな下っ端達とは違う。失敗出来ないんだ!!」

声を荒げたカイルの感情が伝わってきて鮮烈な映像が再び私の頭の中を駆け抜けた・・。

その余りの衝撃に、頭が追い付かずに戸惑っていた私をカイルの大きな両腕が包み込んだ。

カイルの柑橘系の香りに包まれたままで立ち尽くしていた。


「でも、何故いつも君なんだろうな・・・。
好意を持った唯一の女性である君を組織や・・。レオに。ユヴェールまで・・。
どうして誰もが君を望んでしまうんだろう・・!!」

カイルは苦しそうに眉根を寄せて私を強く抱きしめた。

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