転生伯爵令嬢は、裏切り者からの寵愛に戸惑う。

館花陽月

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マルダリア王国の異変。

アレクシアが宿すもの。⑦

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カイルの胸元に強く押し付けられていた為に少しだけ速い心拍数が聞こえた。

葛藤と混乱の中で、私はゆっくり口火を切った。

「何故組織に狙われているのかも、レオやユヴェールに私なんかが好かれている理由もよく解らないんだけど。私は調薬の作業が大好きで、恋愛なんか異次元の事だったし。興味もなかったわ・・。
それに、(一応だけど)浮気性の最低男で屑で馴れ馴れしい婚約者も幼い頃からいたしね!!」

「ねぇ、カイル・・。貴方に、例えどんな理由があったとしても、大切な人達を裏切るような真似をしてはいけないと思うの。」

強く抱き締めて離さないカイルを宥めるように
腕の中に力なく留まっていた。

「あははっ・・。一世一代の告白にそう来る!?
残念ながら、僕にはそんな人はいないんだけど。
守りたい人も家族もそんな風に思っていた時もあった。・・だけど、全て捨てたんだ。」

カイルの声が震えていた。

痛むような心に初めてカイルの本当の姿が見えた気がした。

「捨てたって言うけど・・。大切な物ってそんな簡単に捨てられないと思うよ。」

「そうだな・・。普通はそう思うよね?
そんな物があったら組織への鋼の忠誠心に穴が開いて綻びが出てしまう。これからも大切な物は作らない。・・そう決めていたのに、これだもんね!?」

さっき私が見た映像は衝撃的なものだった。

ザイードの民たちがロージアナのように、水を飲み苦しみ叫ぶ映像ビジョン・。

カイルがその様子を目にして絶望する瞬間・・。

ミリアや刺客達が身に付けていた青い色味の衣服を身につけた者たちが混乱しているカイルに、冷徹な表情で何かの選択を迫るような光景。

絞り出すように放った自らの言葉を聞いて組織の連中が立ち去りカイルがその場に泣き崩れる様子が過った。

その余りの苦悩を浮かべ、哀しそうな涙のカイルに私も苦しくなっていた。

いつの間にか相手の過去を読めるようになるなんて・・。

やばいわ!!
この神力、やっぱり最強かも。

私、今・・。軽く神力無双している気がするわ!!

いやいや違う違う!!

無双自慢じゃなくて、本題よ・・!!

「カイルがそうは思っていたとしても、レオやユヴェールはそんな風に思ってないわよ。
カイルを大切な友人だと思ってるわ。
あの2人は、カイルがこのロージアナの民を必死に助けてくれたようにカイルの為なら、どんな協力だってしてくれると思う!!」

砂漠の国では水が貴重な命綱であることは周知の事実だ。

脅されているとしたら、カイルが組織の手先になって行動しているのは本人の意志ではないと私は信じたかった。

「あいつらが・・。僕をどう思おうと何も思わないし、別に協力なんて欲しくないよ!!
感情なんていつの間にか麻痺させる術を覚えた。
誰かを好きになんてならなきゃ・・。
時々ね、レオが憎くて堪らなくなくなるんだ。
君が欲しいって強烈に思わなければ良かったのに!!本当はね、シアを攫って2人だけで全て捨て去って逃げれたら楽なのにって思うんだ・・。
今ならそれが出来るかもしれない。僕にはその力だってあるのに・・!!」

「力って神力のこと?どう言う意味・・??」

カイルの震えがいつの間にか止まっていた。

私の身体を両腕でゆっくり引き離して見つめ合った。

金色の瞳は何かを確信したように私を真っすぐ見つめていた。

「そうだ・・。僕の神力を使えばいいよ。
そしたら、シアの全部を僕の物に出来るんだ・・。
組織が喉から手が出る程欲した力を・・。
気持ちは変えられないとしても立場は・・。」

ブツブツと呟くカイルにゾクリとした違和感を覚えた私はカイルの身体をドンッと突き飛ばした。

妙な震えが身体中を駆け抜けていた。

「何をしようっていうの??カイル!?」

カイルの神力なんて初めて聞いたわ。

ザイードの王太子であるカイルも神力持っているの!?

青薔薇の栄光ローゼングローリーの幹部たちは・・。みんな当たり前に神力を持っているの??王立学院の時に見た組織の人間やジュリア達とは全く違う。恐ろしい程の力と殺気・・。
身に纏うオーラが全然、桁違いだわ。」

「あんな管理の行き届かない末端の刺客以下の民間人達と僕達は違うさ。育ちに秘密を抱えた者や、宿命を背負っている者たちが自分達が生きていく為に
忠誠を誓った組織なんだよ。
だからね・・。幹部や、直属の部下を持つ組織の管理側の人間は人外に強く在らねばならない。
もちろん、金銭を得る為に入信してきた浅はかな人間もいるけれどね?」

爛々と輝く瞳に口角をニッと上げたカイルは私の腕を掴んだ。

「私、秘密結社万歳!とか、格好いいなぁ!!とか、ほ、ほんのちょっと入ってみたいとか。(恥)最初はミーハー気分で思っていたんだけど。平和に暮らす民を傷つけたり、毒を飲ませて苦しめる行為を平然と行っているなんて怖いと思うわ!!
貴方達の組織は何が目的なの・・!?
私を攫ってどうするつもり!?お願い、教えてよ・・・。」

ザリッ・・。

後ろに後ずさりをした私は掴まれた腕を振り払って
息を殺して私を見つめるカイルに叫んだ。

「さあ・・。組織の目的と、ダラス様の目的が必ずしも一致してるとは思わないんだ。
だけど、命令の通りに君を連れて行くしかない事は頭では理解している。
シアのいい部分だと思うよ。人を疑わない所も性善説を健気に信じている純粋さもね・・。
そんな穢れのない君が眩しく感じるんだ。
きっと、僕とは真逆な場所にいるから好きなんだろうね。」

「真逆な場所になんかいないわよ!!
カイル、みんなの所に戻ろう??
ちゃんと自分でレオと、ユヴェールに話して・・。
みんなで最善の策を一緒に考えて行きましょう??」

「ふふ・・。さてここでシアに問題です。
組織の重大な秘密を僕はどうして君にベラベラと喋ったと思う??」

「えーと、うっかり全部バレてるっぽいから素直に告白しちゃったんじゃないの!??」

「あはははっ・・。それ、シアっぽい考えだね!!?本当にシアは可愛いなぁ・・。
でも、そうじゃないよ。
何故、直接裏切り者だと注意を集めていたミリアに君を襲わせたか・・。注意を引きつけさせた隙に、僕を信じているみんなを欺いて君を連れ去る算段だったんだけどね。
僕の神力はね、こうやって一対一になって行わないと相手に効かないんだよね。困ったことにさ?」

次の瞬間に、黒目が鳥目のように細黒く存在感を放ちながらカイルの金色の瞳が光輝いた。

「カイルの神力って・・!?私を一体どうするの?」

身体がざわざわとした違和感に包まれて私は息を飲んだ。

「何よこれ・・。可笑しいわ!?
何かにガッチリと足を取られたように、、。
身体が全然動かない・・。離してよ!!」

漆黒の髪がふわりと風に靡いて、凛々しいカイルの顔から目を背けることが出来なかった。

「さぁ、シア。僕を見て・・・。
さっき君が聞いた組織の情報を全て忘れるんだ・・。」

「は!?忘れないわよ?むしろ特性強いんだってば!!あっああ。何か頭が痛っ・・。」

ズキンズキンと重い頭痛に見舞われた私は涙目でカイルを睨んでいた。

「大丈夫だよ。すぐ楽になるからね?
よく聞いてね、アレクシア・・。
今から君はザイードの王太子である僕の婚約者「アレクシア=グレース=ブランシュ伯爵令嬢」になるんだ。」

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