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異世界
婚約者候補の招集。
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ガシャン!!!
オーク調の書斎のテーブルの上に、
ティーカップが乱雑に置かれ、跳ね散った紅茶がクロスにシミを落とす。
「はぁ?!・・・婚約者ですって?!・・私、まだ16歳ですよね?!」
素っ頓狂な声を出し、父は魂の抜けた顔で私を見る。
「どうしたの?セレーナさん。そんな品のない声を上げるなんて・・。」
美しい艶のある金の髪を後ろで纏め、義母のカミーラが驚いて青い目を大きく開け、口を片手で覆う仕草を見せていた。
きっとこの間の転落で、頭の打ちどころが・・。みたいな、残念な視線だわ!
「もう、4年前から打診があった縁談だよ?あちらは魔法省の大臣の息子で、
王子と同じくらいの身分だ。この国では高位に望まれる立場だぞ!?何が不服なんだ!??」
「お父様、お言葉ですが、地位とか身分とかはよく解りませんし。
用意された縁談よりも、相手ぐらい自分で決めたいのですけど・・・。候補と言う
ことは、他にもその立場の方に釣り合う令嬢はいるのでしょう?」
「・・ああ。但し、筆頭公爵家は国でも3家だけだぞ?うちと、大臣のクラリシッド家、
後は・・モルディール家だが。
モルディールには同じぐらいの年齢にご令嬢がおらぬのだ。なので、ランドル殿に釣り合う家格の令嬢は・・このアルベルディア家ぐらいだ。
他は侯爵家のメルダ譲、伯爵家のロレーヌ嬢の2人だ。
そうすると、うちに白羽の矢が立つであろう。
それに加えて、お前の品格や、知性、美貌は知られておるからな。」
「ふーーん。・・侯爵家のメルダ様、伯爵家のロレーヌ様ですね。
分かりました!!頑張りますわ、お父様・・。」
「そうか!?お前がやる気になれば、婚約者なぞ目を瞑ってでもすぐになれるぞ。
お前は秘匿しておきたいくらい可愛い、自慢の娘だからな!!」
「セレーナさんなら、そのままで大丈夫ですわ。
作らずとも、そのままで品格を忘れず、微笑めばそれだけで殿方はお選びするでしょう。」
艶やかに、カミーラが笑う。
義母なのに、優しいんだ!!と、驚いてしまう。
義兄も優しいし、親切でいつも話しかけてくれる。下の兄妹は皆、可愛いのだ。
この家の穏やかさと、温かさをたった1日で痛感したのだった。
「あ、はい。他の令嬢とくつっけて差し上げようと思いまして。」
「・・・・・は・・?」父がパチクリと目を瞬く。
「そうだ!!作戦を練らねば・・・・!!
少々、戦略が必要かと思いますので、私、この場は失礼いたします!!」
急ぎ足で、椅子から飛び上がり、書斎を飛び出したセレーナは「失礼しました!!」
と綺麗な礼を取り、バタン!!と勢い良く扉を閉めて自室へと戻って行った。
呆気に取られて、ソファの上でティーカップを持ったまま固まる公爵と、
口を開けたままになっていた義母カミーラの姿がそこに、取り残されたのであった。
トントン。
隣室からノックが聞こえ、公爵は「どうぞ・・。」と、恐る恐る入室を許可する。
「へぇ・・。セレーナ譲は面白い事を言うのですね、マノロ公爵。
僕は、従順な人形のように淑やかなご令嬢と聞いておりましたので。
驚きましたよ。・・・良い意味で。」
顎に手を当てくすっと笑う。
整えられた黒髪と、黒い詰襟に紋章が沢山ついた軍服のような金糸の刺繍が入った
洋服に、魔剣と、ダイヤモンドの石が込められたタクトが、腰の脇に吊るされている。
背の高く、すらりとした紅玉のような左目の下の黒子が、艶めいていた。
「ラ、ランドル様・・!!不快な思いをさせ、申し訳ありませんでした。
娘はその、頭を打ってから雰囲気が変わりまして・・。
もう一度よく話してみようと思います。
来週からの婚約者候補の召集の話は、また私から・・。」
「いいでしょう。でも、召集の前に顔を見せるのは良いでしょうか?
彼女は僕がランドルと知らないので、知らない僕と、どう接するのか見てみたい。
縁談ではなく、心を落とせば良いのでしょう?」
「いいですが、簡単には行かぬと思いますよ。セレーナは、そこら辺の女とは違う。
政治も語るし、本も沢山読む。華やかさや、地位や美貌だけでは落とせませんよ?」
急にバリトンのような美しい声色が、横やりを入れる。
驚いたように公爵と、ランドルは書斎の入り口に目をやる。
「カストロ!!どうした、お前・・。何か用が・・?」
驚いた公爵が椅子から立ち上がる。
「ランダル殿、セレーナを恋に落とすなど・・・。笑止。
貴方が噂に違わぬ人物でも、妹は恋よりも読書や乗馬が好きな娘。
難しいと思います故、ご覚悟をお願いします。」
「ふぅん。・・・貴方は誰??妹って事は・・・セレーナの兄君かな・・?」
「私の、連れ子で・・名はカストロ、カストロ=アルベルディアです。」
母が緊張した様子で間に入る。
「義理の兄か・・。
カストロ殿と言えば、王立図書館を仕切る精鋭であると聞いたことがある。
以後、宜しく頼む、・・義兄上。」
ムッとした表情のカストロを、くすりと一瞥したランドルは「今日はこの辺で失礼いたします。」
とその場を辞したのだった。
そんな書斎の緊張感などを全く知らぬ私は、自室で紙とペンを取り、作戦に必要な
情報収集をメイドのネットワークに詳しそうなローゼから、詳しく聞き取っていた。
樹形図を作成し、その家の状況や人物像を詳しく調べていたのだった。
「ふーん、お二人共淑やかで、ランドル様に憧れているのね・・。
招集は辞退出来ないのかな?面倒くさいし、会わなきゃ他を選ぶんじゃないかしら・・。」
「お嬢様、それは・・無理ではないでしょうか?」
「そう?逃げる方法はある?ローゼだったら、嫌な相手と結婚しない為にどうするの?」
「修道院か・・。私に魔力があればなのですが・・・。」
「うん、魔力があれば・・。どうなの?」
「魔術師団に・・入ってしまいますかね。
あそこに入れば年頃でも結婚は自由ですし。・・様々な特権が許されます。」
「そうか、魔術師団ね!!それも選択に入れておくわ。有難う、ローゼ。」
笑顔で、戦略その③に魔術師団に入る!と書き足す呑気なセレーナに、
苦笑いを浮かべるローゼだった。
オーク調の書斎のテーブルの上に、
ティーカップが乱雑に置かれ、跳ね散った紅茶がクロスにシミを落とす。
「はぁ?!・・・婚約者ですって?!・・私、まだ16歳ですよね?!」
素っ頓狂な声を出し、父は魂の抜けた顔で私を見る。
「どうしたの?セレーナさん。そんな品のない声を上げるなんて・・。」
美しい艶のある金の髪を後ろで纏め、義母のカミーラが驚いて青い目を大きく開け、口を片手で覆う仕草を見せていた。
きっとこの間の転落で、頭の打ちどころが・・。みたいな、残念な視線だわ!
「もう、4年前から打診があった縁談だよ?あちらは魔法省の大臣の息子で、
王子と同じくらいの身分だ。この国では高位に望まれる立場だぞ!?何が不服なんだ!??」
「お父様、お言葉ですが、地位とか身分とかはよく解りませんし。
用意された縁談よりも、相手ぐらい自分で決めたいのですけど・・・。候補と言う
ことは、他にもその立場の方に釣り合う令嬢はいるのでしょう?」
「・・ああ。但し、筆頭公爵家は国でも3家だけだぞ?うちと、大臣のクラリシッド家、
後は・・モルディール家だが。
モルディールには同じぐらいの年齢にご令嬢がおらぬのだ。なので、ランドル殿に釣り合う家格の令嬢は・・このアルベルディア家ぐらいだ。
他は侯爵家のメルダ譲、伯爵家のロレーヌ嬢の2人だ。
そうすると、うちに白羽の矢が立つであろう。
それに加えて、お前の品格や、知性、美貌は知られておるからな。」
「ふーーん。・・侯爵家のメルダ様、伯爵家のロレーヌ様ですね。
分かりました!!頑張りますわ、お父様・・。」
「そうか!?お前がやる気になれば、婚約者なぞ目を瞑ってでもすぐになれるぞ。
お前は秘匿しておきたいくらい可愛い、自慢の娘だからな!!」
「セレーナさんなら、そのままで大丈夫ですわ。
作らずとも、そのままで品格を忘れず、微笑めばそれだけで殿方はお選びするでしょう。」
艶やかに、カミーラが笑う。
義母なのに、優しいんだ!!と、驚いてしまう。
義兄も優しいし、親切でいつも話しかけてくれる。下の兄妹は皆、可愛いのだ。
この家の穏やかさと、温かさをたった1日で痛感したのだった。
「あ、はい。他の令嬢とくつっけて差し上げようと思いまして。」
「・・・・・は・・?」父がパチクリと目を瞬く。
「そうだ!!作戦を練らねば・・・・!!
少々、戦略が必要かと思いますので、私、この場は失礼いたします!!」
急ぎ足で、椅子から飛び上がり、書斎を飛び出したセレーナは「失礼しました!!」
と綺麗な礼を取り、バタン!!と勢い良く扉を閉めて自室へと戻って行った。
呆気に取られて、ソファの上でティーカップを持ったまま固まる公爵と、
口を開けたままになっていた義母カミーラの姿がそこに、取り残されたのであった。
トントン。
隣室からノックが聞こえ、公爵は「どうぞ・・。」と、恐る恐る入室を許可する。
「へぇ・・。セレーナ譲は面白い事を言うのですね、マノロ公爵。
僕は、従順な人形のように淑やかなご令嬢と聞いておりましたので。
驚きましたよ。・・・良い意味で。」
顎に手を当てくすっと笑う。
整えられた黒髪と、黒い詰襟に紋章が沢山ついた軍服のような金糸の刺繍が入った
洋服に、魔剣と、ダイヤモンドの石が込められたタクトが、腰の脇に吊るされている。
背の高く、すらりとした紅玉のような左目の下の黒子が、艶めいていた。
「ラ、ランドル様・・!!不快な思いをさせ、申し訳ありませんでした。
娘はその、頭を打ってから雰囲気が変わりまして・・。
もう一度よく話してみようと思います。
来週からの婚約者候補の召集の話は、また私から・・。」
「いいでしょう。でも、召集の前に顔を見せるのは良いでしょうか?
彼女は僕がランドルと知らないので、知らない僕と、どう接するのか見てみたい。
縁談ではなく、心を落とせば良いのでしょう?」
「いいですが、簡単には行かぬと思いますよ。セレーナは、そこら辺の女とは違う。
政治も語るし、本も沢山読む。華やかさや、地位や美貌だけでは落とせませんよ?」
急にバリトンのような美しい声色が、横やりを入れる。
驚いたように公爵と、ランドルは書斎の入り口に目をやる。
「カストロ!!どうした、お前・・。何か用が・・?」
驚いた公爵が椅子から立ち上がる。
「ランダル殿、セレーナを恋に落とすなど・・・。笑止。
貴方が噂に違わぬ人物でも、妹は恋よりも読書や乗馬が好きな娘。
難しいと思います故、ご覚悟をお願いします。」
「ふぅん。・・・貴方は誰??妹って事は・・・セレーナの兄君かな・・?」
「私の、連れ子で・・名はカストロ、カストロ=アルベルディアです。」
母が緊張した様子で間に入る。
「義理の兄か・・。
カストロ殿と言えば、王立図書館を仕切る精鋭であると聞いたことがある。
以後、宜しく頼む、・・義兄上。」
ムッとした表情のカストロを、くすりと一瞥したランドルは「今日はこの辺で失礼いたします。」
とその場を辞したのだった。
そんな書斎の緊張感などを全く知らぬ私は、自室で紙とペンを取り、作戦に必要な
情報収集をメイドのネットワークに詳しそうなローゼから、詳しく聞き取っていた。
樹形図を作成し、その家の状況や人物像を詳しく調べていたのだった。
「ふーん、お二人共淑やかで、ランドル様に憧れているのね・・。
招集は辞退出来ないのかな?面倒くさいし、会わなきゃ他を選ぶんじゃないかしら・・。」
「お嬢様、それは・・無理ではないでしょうか?」
「そう?逃げる方法はある?ローゼだったら、嫌な相手と結婚しない為にどうするの?」
「修道院か・・。私に魔力があればなのですが・・・。」
「うん、魔力があれば・・。どうなの?」
「魔術師団に・・入ってしまいますかね。
あそこに入れば年頃でも結婚は自由ですし。・・様々な特権が許されます。」
「そうか、魔術師団ね!!それも選択に入れておくわ。有難う、ローゼ。」
笑顔で、戦略その③に魔術師団に入る!と書き足す呑気なセレーナに、
苦笑いを浮かべるローゼだった。
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