転生したらストーカーも転生したようなので、魔術師団に入ります。

館花陽月

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シーグラルド公国編

それぞれの動向。

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大きな庭園には色とりどりの花が咲いていた。

ジェイデンと、アリストラド、セレーナは用意されたアフタヌーンのティセットの前で何時間も話しをした。

今のこの国の君主である、セレーネの弟の話、セレーネがどのようにこの国で針の筵のように過ごしていたのか。

それなのに、いつも優しく自由な姫だった事など・・。
ジェイデンの乳母が、セレーネのメイドだったこともあって
乗馬で駆け出しては戻らぬ姫を心配させられた等の手を焼かされた話を聞くと、自然と、自分に近い感覚を持った姫だったのだと分かったのだった。

その話をアリストラドの紅い瞳は嬉しそうに、目を細め聞いていた。

「セレーナ、聞いてもいいかな?君も・・セレーネと同じ神巫女の力を持っていると聞いた。
私も魔力持ちだから、君の漲る魔力はビンビン感じる。
君のその力を・・知っている者はいるかい?」

ジェイデンは、注がれたカップを片手に私の方を見る。

「そうですね、魔術師団の者は知っていると思います。後は、クレードや王家の者・・。
あとは、マグダリアの王子メイデル様も
何となくですが、ご存じの様子でした。」

「そうか、メイデルは知っているだろうな。
あいつは、古代史や神話を専攻して学んでいると聞き及んでいる。神巫女の話だけでなく、神話を読み解き、我々も知らない事を知っている
可能性はあるな。」

アリストラドは、思案気に宙を見ながら呟いた。
私もメイデルとは色々話をして見たかったのだった。

「神巫女の力を使えば、こんな兵器を使わなくても・・祈りだけで世界をどうにか出来るのだ。
しかも、世界の形すら変えられる創造の力を持つ姫を・・あの2国は狙い、欲していたはずだから。
君がここにいることを必死で突き止めようとしている者達の動きもある。君は・・どうしたい?」

「・・・私ですか?正直、今混乱しているのです。
でも、魔術師団には私を待っている人達がいます・・・。だから・・。」

手元のテーブルにバン・・!!と手をつき
険しい顔でアリストレアはジェイデンを睨む。

「ジェイデン!!ダメだ・・。
セレーナは私の元へ置いておく。命に代えても守ると決めたのだ!
あんな・・魔術師団は危険なのだ・・。
私だって言われもない罪で殺されたのだぞ!!」

「分かっている。
だけど、僕は今の時点でのセレーナの気持ちを伺いたかったのだ。
君は揺れているのだね?」

「はい、情けない話なんですが・・。
私には今、何が正しいのか分からぬのです。
でも、ここは敵地です。私はもし魔術師団に戻れば貴方達と戦わねば
ならぬのです・・でも、今の私には出来ない気がするのです。
お願いします・・!!
私に時間を下さい。神話のアヴァ王女の話も詳しくメイデル様に伺いたいです。
「エストラルド」へ行き、真実を見極めたいのです。」

「それは、ここから・・出て行くと言う事か?」

震える声でアリストラドが、私の手をぎゅっと握る。

「そうですね、私にはこの世界に転生した意味を知る権利があるとは思いませんか?
自分の運命を、この世界を自分の目で見定めたいのです!!」

顔を上げ、私は碧の瞳を強く向けた。

ジェイデンと、アリストラドはその美しい姫の顔に容姿だけでなく内からの強さと、美しさを感じたのだった。

「自分の運命を自分の目で見て、決める・・か。セレーナらしいな。」

アリストラドは苦しそうに笑んだ。

「分かった。だが、私も共に行きたい。グロームスコーピオンの長として
君を保護する義務がある。」

「アリストラド?!何言ってるの?駄目だよ!!
君は「クロニクル」の科学者の件も、潜入した国からの情報収集と、革命に備えた準備がある。
僕が行くよ!!君の従妹である、僕がメイデル王子の所まで連れて行き、エストラルドまで共に行く!
・・エミールとシフォンは借りていくぞ?」

「なんでだ!!セレーナと一緒に旅がしたいのに。お前ばかりズルいだろ!!」

「貴方は、子供ですか・・。
駄目ですよ、重役の貴方は留守番です。」

冷静な突っ込みと、冷たい視線をアリストラドに送る。

私は非常に焦っていたのだった。
ジークラルド公国の公子であるジェラルドが・・旅のお供なんて!!

でも、手が早く異常偏愛の変態アリストラドよりは、マシな気がする・・。

「でも、いいんですか?
私に選択権があるなんて・・。捕虜みたいな物だと思ってましたのに・・。」

「捕虜がこんな扱い受けるか。
セレーナ、このお菓子のおかわり何回目だ!?
私の妻待遇だ!
あ、妻か・・・。
そうだ!!行く前に神に変わらぬ愛を誓ってから行かぬか?」

「・・・それだけは、ないです。
ついでに、貴方への愛もないです。御免なさい。」

変態だけでなく妄想の域まで行ってしまっている事を危惧した。

ガックリしたアリストラドの肩をポンと叩いたジェイデンは
ニヤリと含み笑顔で笑う。

「・・今が大事な時だろ?
僕だって魔術だけでなく、魔科学の扱いにも慣れているし剣術もかなり幼少から鍛えられている。
しかも、文句なしのエミールと、シフォンもいれば安心だろ??
・・・寂しかったら転移して来ればいいだろ!!」

「ええっ?!また貞操の危機と戦いながら旅をするんですか?
正直、しんどいんですけど・・?!」

それじゃあ今の生活と変わらないじゃない。
またいつもの押し問答が繰り返される事になるのか・・。

「・・そうだな。毎晩転移して行くぞ。二言はないからな。」

「じゃあ、決まり!」

何でも良さそうに、ジェイデンは笑う。
ちょっと・・最後は適当に流すなよ!

ジェイデンは生き生きとした表情で、部下を呼ぶ。

「メイデルの居場所を急ぎ調べよ。
居所を突き止め次第、報告するのだ。すぐにその場所に向けて出立する!」

呆然と椅子の上で、旅の中でもアリストラドからの貞操の危険に怯える不安に戦々恐々としているセレーナと、喜々として、何かを企みながら嬉しそうにお茶を飲んでいる二人が対照に佇んでいた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

場所は変わり、学術都市「クロニクル」にある
王家が特別に作り上げた特別研究棟には
マグダリア王子メイデルと、カルドリア第1魔術師団長ランドルの姿があった。

ここには、多数の研究者が集い防衛の科学と魔術の融合体である迎撃用の魔科学兵器と、攻撃を吸収し、倍返しで放射される防御壁が完成していた。

その地下には、何故か正体を隠して攻撃出来る飛行機や、戦闘機も開発されている。

「メイデル。この兵器は防衛の枠を既に超えた・・これこそ危険な兵器の開発が行われている場所と化しているのではないか?」

「そうなんだよね。私もこの地下施設については多いに疑問なんだよ・・。
ジェンダリン=ボマード博士の声により、防御壁と
迎撃用の兵器は完成したのだけど・・。

何故攻撃用の兵器を大量生産するに至ったかについては・・。
カルドリアとマグダリアの決め事らしい。きな臭いと思わないか?」

紅い瞳は、不安そうに交差しあう。

「ボマード博士が危惧していた戦争の温床にならねばいいがな・・。」

ランドルの美麗な紅い瞳にも、恐ろしい不安が映る。

「この地下施設は・・博士にも隠しているんでしょう?一体どうなってるのかな・・。」

「魔術師団も、クロニクルの科学者も・・。
この兵器を使い、何と戦うのかを理解出来ている者は少ない・・。
武器を持ち、理性を持たずにこれらを使えば世界は終焉へと向かう。」

ランドルは複雑そうな表情で、その研究棟の様子を見やる。

「あちらも・・スコーピオンとて、
アリストラドが指揮官だとすればそんなに愚かな事はせぬだろうしな。」

不思議そうに、メイデルはランドルの顔を見つめた。

「アリストラドは、愚か者ではないの?理性など、持ちあわせていない愚者のように・・・父は言っていた。
その発言しか、私は知らぬから。
私は、彼の事は恐ろしい存在だと思っていた。」

ランドルは、くすっと笑いメイデルの頭をポンと撫でた。

「総長・・アリストラドは、優しく、思慮深い魔術師団の長だった。
・・・家族のように団員を愛し、魔術をもって生まれた事で排斥されていた
者を魔術師団で保護しているような人間だった。
この国が科学を取り入れ、魔術を捨てた事は納得していただろうがな。
排斥や、排除される人間の痛みをよく理解した男だったと思う。」

「そんな人間が、何故王家の人間に牙を向けたり、自分の兄に反逆の気持を持ったのかな?」

「分からぬ・・・。しかし、私の知っているアリストラドは・・。
優しく、強い人間だった。私が唯一尊敬していた師団長だったな。」

切なそうに、窓の外に広がる空を仰いだランドルはふ・・と思い出す。
セレーナに口づけ、消え去ったあの日の出来事が過った。

「だけど、セレーナだけは・・渡さぬ。
私の婚約者で、唯一心を許したただ1人の女なのだ・・必ずこの手に取り戻す。」

苦しそうなランドルを心配そうな表情で見つめるメイデルの前に数人の魔術師団の制服を身に纏った男女が現れた。

「ランドル君、セレーナを見つけたよ。
彼女は今、シーグラルド公国にいるようだ。
・・・僕は君に直接、話しがあって来たんだ。」

「アスコット・・。
アスコット=ルアー。どうしてお前がここに?」

金髪をさらりと揺らし、眼鏡の奥の蒼い瞳は精悍な表情を浮かべる。

リンダ=ラクシャータと新たな師団員を引き連れたアスコット=ルアーが
目の前に現れたのだった。

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