転生したらストーカーも転生したようなので、魔術師団に入ります。

館花陽月

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シーグラルド公国編

揺れる。

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誰が決めたのだろう。

どちらが正しく、どちらが間違っているか。
その価値観こそが、自分が植え付けられた作られたモノなのかもしれないのに。

嫌と言う程、私は複雑に揺れていた。

魔術師団から見たスコーピオン。
スコーピオンから見た魔術師団・・。

ここにいれば居るほど、その揺らぎは大きくなっていく。

自分の価値観の正しさに自信が持てなくなっていた。


「嫌がっているだろう?やめろ、アリストラド!」

パキッと木の枝が折れる音が聞こえ、緩んだ隙に私は雷を落としアリストラドの身体がぶっ飛ぶ。

「人を呼びつけておいて、何をしているんだか。」

振り返った私の前に立っていたのは、1人の落ち着いた雰囲気の男性だった。

サラリと揺れる短く切りそろえられた赤い髪に
その瞳の緑はクリスの瞳に近い碧。

年の頃はランドルと同じくらいの青い騎士服に、
銀色のマントを羽織った秀麗な印象の男性だった。

身体を起こしながら、イラッとしたようなアリストラドは、その男を見て溜息をつく。

「ジェイデン。お前、昼前にはこちらに着くと言っていただろう。
遅いから来ないと思った。
折角、セレーナと愉しんでいたのに・・。」

慌ててアリストラドの肩をバシッ!!と思い切り叩き事実無根を証明する。

「全く愉しんでません!!
今のあの・・あれは、合意ではないので!
私は、とっとと下がります!
ごゆっくりとお話しくださいませ!!」

「・・・っ、痛いな。ったく、セレーナは、素直ではないな。」

叩かれても嬉しそうな、アリストラドに腹が立ち
ついでに足も踏みつける。

恥ずかしい痴態を見られ、真っ赤になっている私をジロジロ不躾に見てくる、赤い髪の男性の視線に
・・・今すぐ消えたい思いだった。

痛がるアリストラドに再度、睨みを利かせて、
ペコリと頭を下げて踵を返し、逃げ去ろうとした。

「待って、行かないでセレーナ。」

驚いた私を制止した男性は、こちらに近づいて来て私の手前で止まり微笑んだ。

「セレーナ=アルベルディアだね?
こんにちわ、初めまして!!
僕は、このシーグラルド公国の現公主メルディアスを父に持つジェイデン=ラムダ=ザッハルト=シーグラルドです。
君とは従妹の関係になる・・。会えて嬉しいよ!」

クリスにそっくりの瞳はキラキラと輝く。

「はい。ジェイデン様・・とお呼びしても宜しいですか?
セレーナ=アルベルディアと申します。
親戚筋の方なのですね!お逢い出来るなんて思ってもおりませんでした!
こちらこそ、どうぞ宜しくお願いいたします。」

私は、この国での公族家との接触など叶わないと思っていた。
セレーネはこの国を捨て、カルドリア王国へと嫁いだ。

神巫女の話を聞いた私は、二度とここへは戻って来ない覚悟だったのではないか・・と、勝手に推測していたのだった。

「君も居てくれて良いよ。」そう言ったジェイデンに、アリストラドは困ったように眉根を寄せる。

「資金調達の件で用意した物を持参した。
この邸のエントランスホールに運び込ませている。「クロニクル」の研究者の兵器の開発は上手く行っているか?」

私は驚いていた。

ブルームスコーピオンの組織の背後にシーグラント公国の資金が動き、しかも公の子息が援助しているなんて・・!?

「ああ、かなりの数の兵器が作られて来ている。
逆らう者がもっと多く出るかと思ったのだが・・。
洗脳や抹殺を以て対応しなければならない人数が思ったより、少ないのだ。」

「それは・・・。
お前の話し方が良かったのだろう。
「クロニクル」にいる科学者の中で、魔力持ちの人間は多くいるからな。
迫害され、その力を科学に融合させる事により居場所を見つけた者達は多くいる。」

「そうだな。マグダリア王家は科学に力を入れ
魔力のある者の排斥や、居場所を奪うような現状があるからな・・。
私達の行いたい革命の動きに、賛同してくれる者も多いだろう・・。」

私はポカンと口を開けて2人の会話を聞いていた。
「クロニクル」の科学者は、兵器の開発など望んでいないと思っていた。

そんな!
この2人の言っている事が確かなら、グロームスコーピオンに賛同している
科学者が少なからずいると言うことだ!!

私は動揺を隠せない。

「・・・戦争なんて科学者は望んでいないんじゃないですか?!
私が知っている限り、シーグラント以外の少なくとも、カルドリアもマグダリアも魔力と科学の
共存で上手く関係性を築いているのでしょう?」

「セレーナちゃんは、カルドリアの魔術師団で我々と戦って来たのだから、
そう考えるのは当然だと思う。
でも、正義って・・・。
お互いの理念や正義は、それぞれの立場によって違うだろう。
少なくとも、今のマグダリアとカルドリア王家には私たちは不満があるのだ。」

「セレーナ、私達は戦争を起こしたいのではないのだ。
革命をもたらす力を欲しているのだ。
王家には、不審しかないのだ・・。
セレーネを物のように付け狙い、命を狙い続けた
そして、私を裏切り続けた2つの国を・・。
不審な事変が起こり続ける魔術師団や、クロニクルの存在意味を考えるとな。」

アリストラドは紅い瞳を強く私に向けて思いをぶつけるように見つめた。
私は、その瞳を反らしたい衝動に駆られたが・・ぐっと向き合う。

「本当に、全てを支配をしたいのは、カルドリアや、
マグダリアの方ではないのか?
私たちは、民の国の庇護が届かぬ暮らしや、
魔術を生まれつき持って生まれた者達の忌むべき迫害を
見た時にぞっとしたのだ。
・・その文明や魔術の享受を受けていない者達を救うために、
我らは、この組織、「グロームスコーピオン」を立ち上げたのだ。」


私は何も言えずに立ち尽くしたのだった。

現代でも、いつも疑問だった事。
それは、テロと国の引き起こす戦争によって何の罪もない人々が亡くなり、傷ついていく。

私は世界のニュースを見ていた時に、いつも疑問に思っていたのだ。
テロを正義と信じている人の理念はただの宗教理念だけなのか?
そして戦争をしている国家は本当に正しいのか?

私には、分からなかったのだ。

魔術師団の中から見えたスコーピオンと、ここで見たスコーピオンの中身が
大きく違うように。

私には、まだ知らなければいけない事が沢山あるような気がしたのだった。

「我がシーグラルド公国もね、そうなんだよ。
魔力があって生まれた者はバケモノのように迫害される。
町に生まれたら村八分、都に生まれても迫害を受け魔力を隠して生きるか、他国に亡命するかしかないのだ・・・。私も、少ないが魔力持ちでね。
隠して生きている身なのだ・・。」

切なそうにジェイデンが笑う。
公国の君主の息子ですら、魔力があるだけで肩身の狭い思いをしているなんて・・。
セレーネはどれだけ、この国で辛い思いをしていたのだろう。

アリストラドの庇護が無かったら、命を狙われ迫害され・・。
他国にその力を狙われる姫。

「可笑しくはないか?生まれ持った物を否定して生きる国など。私は父が憎い・・。
この国は、その政策を神話時代の過去の惨劇になぞられて脈々と受け継がれているのだ。
・・アヴァの悲劇を繰り返さぬ為にな。」

「・・・アヴァの悲劇?
想い人に裏切られ世界の滅亡を願った姫の事ですか?」

私は、高鳴る胸を落ち着かせながらジェイデンへと向いて問うた。
緑の瞳は悲しい色を浮かべていた。

「そうだな、、しかし事実はよく分からぬ。
この国に伝わる魔力を否定するような神話なのだ・・。
ただ、その悲劇の最中、神巫女の手にしていた祈祷具の損失により、国は乱れたのは確かだ。
世界すら創造してしまう神巫女の道具は、人の欲望を納め、清い心に浄化する魔具だったと聞いている。もう1つは時を司る魔具だった。
その2つの紛失により、世界は混沌とした物へと落ちた・・と。」


「人の欲望を浄化する魔具・・・。
時を司る魔具それはどこにあったんですか??」

「古代神殿都市「エストラルド」だ。」

アリストラドは、整った顔を向け静かに告げる。

古代神殿都市「エストラルド」・・・。
確か・・・!?
古代神殿都市「エストラルド」の発掘調査を行う予定だと言っていた者がいた。
そうだ、メイデルの研究領域だ・・!!

私の転生してきた理由・・。

不審な転落を遂げたセレーナ。
私を追いかける影、その人が作ったホログラム。

時を司る魔具と、アヴァの神話。

私は、それらと対峙しなければならない。
その先に真実が見えてくる。
・・・・そんな気がした。
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