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シーグラルド公国編
魔弾。
しおりを挟む夕食の知らせを伝えにリンダが、セレーナを探しまわっていた。
ランドルの部屋から、腰が立たなくなった私が全力で脱走しようとしている姿を見つけて助けてくれたのだった。
湖で濡れた後、びしょ濡れで宿に戻った話をすると、リンダが爆笑したので理由を聞けば、
「そんなの風の魔法ですぐ、乾くのに!」
そんな事を忘れていた私と、絶対分かっていただろうランドルを思いむうっと頬を膨らまして怒ったのだった。
私は、リンダとアスコットと新たな第3師団の仲間と共に楽しい夕食を取った。
食後は広い食堂で、思い思いに集い、意見交換などを行っていた。
「そうだセレーナ、今朝話していた・・魔術師団に帰れない理由は何だ?」
ランドルが、注がれたカップの紅茶を飲みながら私にゆっくりと顔を向けた。
「シーグラルド公国のアヴァの伝説を聞いたのです。魔力が枯渇せぬ姫・・。
神巫女と呼ばれた姫君の話でした。
この今の戦争に近づく気概をどう収めれば良いのか皆悩んでますよね。
だけど、私がその神巫女の力を持ち合わせているならば戦や争いを回避出来るでしょう?」
「そうか知ったのか・・。
初めて会った時から気づいていた。
桁外れの魔力と、不思議なオーラ。それにその瞳・・。
君は、子どもの頃に母に読んでもらった「クレアルス神話」に出て来る。
アヴァ姫そのものだったからな・・。」
「クレアルス神話・・と言う書があるのですか?」
「ああ、カルドリアにも、マグダリアにも、ここシーグラルドにも伝わっている全世界共通の神話本だ。そのアヴァが最期を迎えた都「エストラルド」の全景も描かれた本だったな。
確か、カルドリアに原本があるはずだ。」
「ランドル様、私はその「エストラルド」に行きたいのです。
その為に古代史研究をされている、メイデル殿下を訪ねようと旅に出ました・・・。
今朝は、その途中で貴方達に偶然会えたのです。」
「古代神殿都市「エストラルド」か。
きっとメイデルも同じ事を考えてるだろう。だから先ほど、その話を快諾したのだな。
「クロニクル」の防衛兵器は完成してあるし、ドス黒い野望がどちらにあるのかも見えてきた。
アリストラドの話は・・先ほど、エミールからも聞いたが。
私達の見聞きしていた事と事実は大きく違う。
魔術師団に伝わっている話や、民からの話とは全く違っていた。
私も、実は「クロニクル」からこちらへ来る事を、魔術師団には報告せぬまま来たのだ。」
真剣な表情で部屋の様子を見渡すランドルの発言に、私は驚いた。
私も魔術師団には今は、信頼や安心感は持てない・・。
師団長である、ランドルまでが同じ気持ちを抱いているとは思っていなかったが、
聡明な彼らしい、冷静な判断と思った。
「大丈夫なのですか??
そうだ、クレード様からは無事だと伺ったのですが。。ケイレブ様は連絡がなければ、ご心配なさっているのでは?」
急に椅子の後ろから良く澄んだ低い声が響く。
「・・そのケイレブすら、信用できぬのだろう?・・・ランドル。」
団欒の雰囲気になっていた食堂に、その人が立っていた。
「アリストラド様?・・どうしてここに?!」
私が、驚いて目を合わせるとフッと笑った。
アリストラドは苦しそうに、ランドルの方へと視線を向けて言った。
ランドルも、驚いたようにアリストラドを見つめる。
「夜は・・お前を一人に出来ぬからな。
転移して会いに行くと言っただろう。
しかし、ランドルも・・気づいたようだな。
お前は昔から頭も切れる男だった・・。
やはり、セレーナを・・任せられるかも・・な。」
ふらっと大きな体を揺らがせた。
その動きに違和感を見て取った私は、急いでアリストラドの元へと駆けた。
アリストラドの後ろに座っていたアスコットは、椅子から立ち上がり真っ青な顔で叫んだ。
「・・総長!!貴方、背中にっ・・!!!」
ランドルも慌てて、側へと駆け込む。
崩れそうになる体を私は必死に支えようとするも・・力が足りない。
ランドルがグイッとアリストラドの体を抱きとめた。
「貴方の背中に・・黒い矢が刺さっております!!」
「なんだ!?おい・・アリストラド、どうしたんだ?誰にやられた??」
ジェイデンも、大慌てで側へと駆け込んで来る。
ドロリと流れる血に私は真っ青になり、ランドルが横にした姿勢で寝転がす。
ドクドクと広がる血の海に、私は強張り、何が起きているのか分からなかった。
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