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シーグラルド公国編
湖の妖精。(アリストラド視点)
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初めて、彼女の姿を見たのは11歳の時。
大国と化したマグダリア王国に生まれ育ち、魔力が強かった私は兄よりも優秀であった。
勉学でも、魔術でも、馬術や剣術でも・・。
しかし、兄が王位を継ぐ事に何の疑問を持っていなかった。
背が高く、長く伸びた漆黒の髪に、紅い瞳の美貌の王子。
隣国カルドリアとマグダリアは王族の血の縁が濃く、特にマグダリアでは紅い瞳の王が多く輩出された国であった。
兄は、芸術や、詩の朗読、科学の研究など専門的な技術への偏りがあったが成長するにつれて頭角を現すようになって行く。
母はどちらも、同じように可愛がってくれた。
優しく、おっとりとした兄も、私を可愛がってくれていたのだった。
子供の頃から、眠る前に読んでもらう本には「クレアルス神話」からアヴァの話が好きだった私は、何度も乳母にその話を強請ったのだった。
アヴァは、銀色の髪に、不思議な碧色の瞳の姫。
古代神殿都市「エストラルド」の悲劇は、姫を含め3人の人間の命を奪い世界が大きな揺らぎと、落雷、強風、豪雨が続き。
地獄図のような崩壊へと向かった。
3つに割れた地は、それぞれが国として神が降臨しその神の子孫がそれぞれの王族だと伝えられた。
特にアヴァの生まれ育った国が原型となったシーグランド公国は甚大な被害と、アヴァが信じた一人の男が魔術使いであった事から魔術を忌み嫌い、そのような力を禁忌としたのだった。
いつしか、私はアヴァに、そして彼女が生まれ育ったシーグランド公国に憧れを抱いていた。
それが全く、間違いだったと気付いたのは彼女の境遇を知った時だった。
シーグランド公国に遊学に訪れた日、城の近くの湖で妖精を見た。
馬で、駆けていた私は、水を飲まそうと湖の畔で休息を取った。
湖畔の先にはパシャンと水音が何度も聞こえ、気のせいではないのだと音の聞こえる先を見た。
美しい栗色の髪を波打たせた姫が、泳いでいた。
楽しそうに歌いながら、水浴びをしている姿にギョッと目を見開く。
11歳の私だったが、まじまじと女性の裸を見たことなどなかったので心臓があまりに早鐘を打ち、どうしていいのか分からなかった。
白い肢体に、大きな胸・・。
水を含んだ輝く髪。瞳はアヴァと同じ・・緑色だった。
女神のような神々しい美しさに私は時を忘れて見とれていた。
彼女が気が付き、私の方へと向かって来た。
頭がらバッシャーンと水を浴びせられ、茫然としていた私に彼女は頬を真っ赤にしながら怒鳴った。
「人のっ、水浴びを黙って見ているなんて!!恥を知ってください・・!!
紳士とは思えぬ、恥ずべき行為ですよ!」
瞳は怒りで赤く変化していた・・。
「アレキサンドライト・・だ。」
「えっ?・・な、何ですか?」
私は、自分が羽織っていたマントを彼女に纏わせて手を掴んだ。
「失礼しました。あまりの美しさに見とれてしまって。貴方の瞳は美しいアレキサンドライトですね。・・まるで神話のアヴァのようだ。」
私の紅い瞳を驚いた顔で見つめたセレーネはポカンとした顔で見上げていた。
クスッと笑った彼女は大声で笑い出した。
「なんだか、裸を見られたのに怒る気も失せてしまいました!
貴方は、不思議な方ですね。旅人かしら?」
「いえ、私は隣国マグダリアの第2皇子、アリストラドと申します。
こう見えて、身長はすでに170センチはあるのですが・・。まだ11歳の王子です・・。貴方は?」
大きく目を見開いた彼女は、「11歳?!私の4つ下だわ・・。見えない!!」と思い切り驚いていたのだった。
「・・私は、この国の公女、セレーネと申します。お見知りおき下さい。」
マントを羽織ったまま、ペコリと礼を取った。
私は、彼女をすぐにでも自国を攫ってしまいたい程の初めての気持ちの高ぶりを感じていた。
この姫が貴族以上の地位を持っている事を望んでいたがそれは叶えられた。
「セレーネ姫。急な申し出になりますが、私と結婚してくれませぬか?」
「はぁ?!・・なん、責任など見ただけで要求しませんよ?何故そうなるの?!」
驚いた瞳で見上げた彼女に、膝をつき優しく手を取る。
「一目惚れなのです。私は第2皇子故、結婚もさほど厳しくないので望んだ姫を娶って良いと言われております。
どうか、私の国マグダリアに・・。私の妻になってくれませんか?」
呆然とした表情で見上げた彼女の冷たい指先にそっと口づけた。
真っ赤に頬を染めた彼女は、私を見上げて呟いた。
「私を・・私をこの檻から出して下さるなら、何処までもご一緒致します。」
「必ず、貴方を閉じ込めている物から出して差し上げます・・。
どうか、私の唯一の姫になってください。」
緑の瞳を揺らし、私を見つめて深く頷いた。
指先から伝わる、アヴァに似ている姫の魔力は私よりも強い力だった。
この国はその力を以て他の2国を牽制し、彼女を閉じ込めておく
檻のような不自由な小さな世界だった。
私は、神巫女の力を持って生まれてきたセレーネを深く愛した。
生まれてからはその瞳の色と強力な魔力を持つが故、魔女と蔑まれ、アヴァと同じ崩壊の姫。だと、幼い頃から言われて育ったセレーネにとって、初めての胸の高鳴りを感じた相手だった。
一人ぼっちで育ったセレーネにとって、
アリストラドとの出会いは初めての光になったのだった。
その後、迫害を受け続けたこの国から、私の婚約者と言う立場でマグダリアへの留学を許されたセレーネは、学術都市「クロニクル」で学ぶ事となる。
学友だった、私の兄、兄の妻となる王女、カルドリアの王子エセル、侯爵家令息マノロ、
そして私とセレーネは学問を究め、日夜研究や討論を重ねた。
美しいセレーネは、「クロニクル」では聖女のように崇め奉られていた。
エセルとは、セレーネを巡り激しくぶつかる事になる。
そんな折・・。あの事件が起こった。
父の急逝により王太子から、王へと戴冠する事になった兄は魔術を禁じ、科学の享受に依存した国造りへと変革していくとの発言があったのだった。
私は、魔術を全て廃するのではなく・・。
擁護しながらも、科学の恩恵と、魔術の恩恵を両方受ける国家にすべきだと進言した。
魔術師や、魔術での生計を立て生きる物の排除が急激に行われてしまう事を危惧したからだ。
しかし、その発言が何故か国家反逆の罪で追い出される事になるとは思わなかった・・。
私は国家転覆を企んだとされたのだ。
セレーネは、国から追い出された私に付き添い、命を狙われながらも共に旅をした。
私は愛するセレーネさえいれば何も怖くなかったのだ。
兄に裏切られ、居場所はセレーネだけだった私と、国から廃絶されようと弾圧を受けた、魔術使いを連れて私はカルドニアへと逃げ延びただった。
しかし、カルドニアの王子エセルは、セレーネを攫い我が物にしようとしたのだった。
マグダリアは我関せずとし、兄は私からの嘆願書を無視した。
セレーネは強く抵抗し、私の元へ戻ろうと拒んだ。
あまりに拒むセレーネに飽きれ、私を消せば我が物にできると考えたエセルから決闘を申し渡され、セレーネの前で銃を構えた。
撃ち殺したエセルの体が倒れ、無事に私が勝利したのだった。
いつものようにその夜、彼女の温もりを感じ何度も何度も抱き合い、お互いの存在を確かめていた。
やっと自分の手の中に戻ったセレーネを腕の中に感じ、強い幸福感を感じていた。
「セレーネ、愛している。この世の・・何よりも。」
「私もです・・。貴方が私を見つけ、命をくれたのですから。」
私の手に、幸せそうに頬を寄せ嬉しそうに笑う。
セレーネの碧の瞳は美しく輝き、神々しい笑みだった。
その翌日、彼女は私の前から姿を消した。
そして、二度と生きた彼女とは・・・会えなかった。
大国と化したマグダリア王国に生まれ育ち、魔力が強かった私は兄よりも優秀であった。
勉学でも、魔術でも、馬術や剣術でも・・。
しかし、兄が王位を継ぐ事に何の疑問を持っていなかった。
背が高く、長く伸びた漆黒の髪に、紅い瞳の美貌の王子。
隣国カルドリアとマグダリアは王族の血の縁が濃く、特にマグダリアでは紅い瞳の王が多く輩出された国であった。
兄は、芸術や、詩の朗読、科学の研究など専門的な技術への偏りがあったが成長するにつれて頭角を現すようになって行く。
母はどちらも、同じように可愛がってくれた。
優しく、おっとりとした兄も、私を可愛がってくれていたのだった。
子供の頃から、眠る前に読んでもらう本には「クレアルス神話」からアヴァの話が好きだった私は、何度も乳母にその話を強請ったのだった。
アヴァは、銀色の髪に、不思議な碧色の瞳の姫。
古代神殿都市「エストラルド」の悲劇は、姫を含め3人の人間の命を奪い世界が大きな揺らぎと、落雷、強風、豪雨が続き。
地獄図のような崩壊へと向かった。
3つに割れた地は、それぞれが国として神が降臨しその神の子孫がそれぞれの王族だと伝えられた。
特にアヴァの生まれ育った国が原型となったシーグランド公国は甚大な被害と、アヴァが信じた一人の男が魔術使いであった事から魔術を忌み嫌い、そのような力を禁忌としたのだった。
いつしか、私はアヴァに、そして彼女が生まれ育ったシーグランド公国に憧れを抱いていた。
それが全く、間違いだったと気付いたのは彼女の境遇を知った時だった。
シーグランド公国に遊学に訪れた日、城の近くの湖で妖精を見た。
馬で、駆けていた私は、水を飲まそうと湖の畔で休息を取った。
湖畔の先にはパシャンと水音が何度も聞こえ、気のせいではないのだと音の聞こえる先を見た。
美しい栗色の髪を波打たせた姫が、泳いでいた。
楽しそうに歌いながら、水浴びをしている姿にギョッと目を見開く。
11歳の私だったが、まじまじと女性の裸を見たことなどなかったので心臓があまりに早鐘を打ち、どうしていいのか分からなかった。
白い肢体に、大きな胸・・。
水を含んだ輝く髪。瞳はアヴァと同じ・・緑色だった。
女神のような神々しい美しさに私は時を忘れて見とれていた。
彼女が気が付き、私の方へと向かって来た。
頭がらバッシャーンと水を浴びせられ、茫然としていた私に彼女は頬を真っ赤にしながら怒鳴った。
「人のっ、水浴びを黙って見ているなんて!!恥を知ってください・・!!
紳士とは思えぬ、恥ずべき行為ですよ!」
瞳は怒りで赤く変化していた・・。
「アレキサンドライト・・だ。」
「えっ?・・な、何ですか?」
私は、自分が羽織っていたマントを彼女に纏わせて手を掴んだ。
「失礼しました。あまりの美しさに見とれてしまって。貴方の瞳は美しいアレキサンドライトですね。・・まるで神話のアヴァのようだ。」
私の紅い瞳を驚いた顔で見つめたセレーネはポカンとした顔で見上げていた。
クスッと笑った彼女は大声で笑い出した。
「なんだか、裸を見られたのに怒る気も失せてしまいました!
貴方は、不思議な方ですね。旅人かしら?」
「いえ、私は隣国マグダリアの第2皇子、アリストラドと申します。
こう見えて、身長はすでに170センチはあるのですが・・。まだ11歳の王子です・・。貴方は?」
大きく目を見開いた彼女は、「11歳?!私の4つ下だわ・・。見えない!!」と思い切り驚いていたのだった。
「・・私は、この国の公女、セレーネと申します。お見知りおき下さい。」
マントを羽織ったまま、ペコリと礼を取った。
私は、彼女をすぐにでも自国を攫ってしまいたい程の初めての気持ちの高ぶりを感じていた。
この姫が貴族以上の地位を持っている事を望んでいたがそれは叶えられた。
「セレーネ姫。急な申し出になりますが、私と結婚してくれませぬか?」
「はぁ?!・・なん、責任など見ただけで要求しませんよ?何故そうなるの?!」
驚いた瞳で見上げた彼女に、膝をつき優しく手を取る。
「一目惚れなのです。私は第2皇子故、結婚もさほど厳しくないので望んだ姫を娶って良いと言われております。
どうか、私の国マグダリアに・・。私の妻になってくれませんか?」
呆然とした表情で見上げた彼女の冷たい指先にそっと口づけた。
真っ赤に頬を染めた彼女は、私を見上げて呟いた。
「私を・・私をこの檻から出して下さるなら、何処までもご一緒致します。」
「必ず、貴方を閉じ込めている物から出して差し上げます・・。
どうか、私の唯一の姫になってください。」
緑の瞳を揺らし、私を見つめて深く頷いた。
指先から伝わる、アヴァに似ている姫の魔力は私よりも強い力だった。
この国はその力を以て他の2国を牽制し、彼女を閉じ込めておく
檻のような不自由な小さな世界だった。
私は、神巫女の力を持って生まれてきたセレーネを深く愛した。
生まれてからはその瞳の色と強力な魔力を持つが故、魔女と蔑まれ、アヴァと同じ崩壊の姫。だと、幼い頃から言われて育ったセレーネにとって、初めての胸の高鳴りを感じた相手だった。
一人ぼっちで育ったセレーネにとって、
アリストラドとの出会いは初めての光になったのだった。
その後、迫害を受け続けたこの国から、私の婚約者と言う立場でマグダリアへの留学を許されたセレーネは、学術都市「クロニクル」で学ぶ事となる。
学友だった、私の兄、兄の妻となる王女、カルドリアの王子エセル、侯爵家令息マノロ、
そして私とセレーネは学問を究め、日夜研究や討論を重ねた。
美しいセレーネは、「クロニクル」では聖女のように崇め奉られていた。
エセルとは、セレーネを巡り激しくぶつかる事になる。
そんな折・・。あの事件が起こった。
父の急逝により王太子から、王へと戴冠する事になった兄は魔術を禁じ、科学の享受に依存した国造りへと変革していくとの発言があったのだった。
私は、魔術を全て廃するのではなく・・。
擁護しながらも、科学の恩恵と、魔術の恩恵を両方受ける国家にすべきだと進言した。
魔術師や、魔術での生計を立て生きる物の排除が急激に行われてしまう事を危惧したからだ。
しかし、その発言が何故か国家反逆の罪で追い出される事になるとは思わなかった・・。
私は国家転覆を企んだとされたのだ。
セレーネは、国から追い出された私に付き添い、命を狙われながらも共に旅をした。
私は愛するセレーネさえいれば何も怖くなかったのだ。
兄に裏切られ、居場所はセレーネだけだった私と、国から廃絶されようと弾圧を受けた、魔術使いを連れて私はカルドニアへと逃げ延びただった。
しかし、カルドニアの王子エセルは、セレーネを攫い我が物にしようとしたのだった。
マグダリアは我関せずとし、兄は私からの嘆願書を無視した。
セレーネは強く抵抗し、私の元へ戻ろうと拒んだ。
あまりに拒むセレーネに飽きれ、私を消せば我が物にできると考えたエセルから決闘を申し渡され、セレーネの前で銃を構えた。
撃ち殺したエセルの体が倒れ、無事に私が勝利したのだった。
いつものようにその夜、彼女の温もりを感じ何度も何度も抱き合い、お互いの存在を確かめていた。
やっと自分の手の中に戻ったセレーネを腕の中に感じ、強い幸福感を感じていた。
「セレーネ、愛している。この世の・・何よりも。」
「私もです・・。貴方が私を見つけ、命をくれたのですから。」
私の手に、幸せそうに頬を寄せ嬉しそうに笑う。
セレーネの碧の瞳は美しく輝き、神々しい笑みだった。
その翌日、彼女は私の前から姿を消した。
そして、二度と生きた彼女とは・・・会えなかった。
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