転生したらストーカーも転生したようなので、魔術師団に入ります。

館花陽月

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シーグラルド公国編

託された願い。

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翌日の夕刻、クレードが第2師団を連れ、慌てて何処かへと向かったのだった。

アリストラドは、未だに床についたままだった。

心配そうに、側で見守るセレーナを気遣いランドルは彼女を励ましていた。

「交代するぞ・・。少し休んだほうが良い。」

私は、彼がいてくれて心強く感じたのだった。

水桶を新しい物に変え、ランドルが私を気遣い美味しい紅茶と、お菓子を用意し運び入れた。

「有難う。少し休みます!!あ、遠慮なく、お菓子も頂きます。」

ティーポットに注がれた熱い紅茶にほっと一息つきながら、パウンドケーキに手を伸ばし頬張る。

「うん。・・美味しい!!
シーグラルドのお菓子も美味しいんですね。」

私は、お菓子1つで幸せそうな笑顔になったので、ランドルはプッと噴き出した。

ムッと頬を膨らまし拗ねていると、ランドルがこちらへ寄って来てそっと耳打ちした。

「セレーナ、素直すぎて可愛いのはいいが看病してられなくなるぞ。
押し倒してしまいそうになるのでな・・。
頼む、普通にしてくれ。」

「はぁ?・・普通にしてます!!
今は偽らず、素直に生きてるんですけど。」

「危険だな。。じゃあ、存在自体が罪だな・・。」

ランドルが、私の腰を抱きかかえようとした所で

・・・バーーン!!!

と部屋の扉が開け放たれ、どかどかと、リンダとアスコットが入って来た。

固まる私たちに構わぬ様子で、2人は眠っているアリストラドに配慮もなしに大きな声で話し始めたのだった。

「セレーナ、ちょっといい?!
メイデル殿下が呼んでいるよ!!」

「メイデル殿下は、神殿都市の「エストラルド」についての話をするみたいなんだ。
「クレアルス神話」の原書が、昨夜のカルドリアの図書館の火災で燃えてしまっただろうから・・って「クロニクル」から、殿下の書いた論文持って来させたみたいだよ。」

「私も神話は知ってましたが、詳しい解釈や、隠し文字までは知らないので!
そんな深い意味が在るなんて、今まで知りませんでした。
それを聞いてから古代神殿都市へ行った方が良いから皆で、共通理解しようって話です!」

私は、「論文」と言う言葉に瞳を輝かせ。

「聞きたい!!」と、声を張り上げ、ランドルを突き飛ばし立ち上がる。

「今からメイデル殿下のご講義が始まるのね。
ジェイデンもエミリアも聞いてるのかな?
ランドル様、アリストラド様をどうぞ宜しくお願いします。
終わったらまた、代わりますので。」

意気揚々と立ち上がり「セレーナ、急いで。」
アスコットと、リンダに背中を押されて退出する。

ドアの前でペコリとお辞儀をしてダッシュで去って行った。

「ははは・・。最初に会った時みたいだな・・。
色んな事があったのに、変わらないなセレーナは・・。」

ランドルは、美しい瞳を細めてドアを見ながら呟く。

「・・・そうだな。あの時は笑った。
今まで知っていたセレーナとも全く違ったんだ。
バルコニーから落ちたと聞いた時、すぐさま見舞った瞬間から、もう別の人間の意識が入っていた・・。
魔力も信じられぬ位漲り、瞳の碧も別物のようなアレキサンドライトの輝きに変わっていたのだ・・・。」

ハッとベッドを見ると、アリストラドは目を覚まし、ランドルの方を向いて薄く微笑んでいたのだった。

「ランドル、ケイレブはもう駄目だ・・。
あいつも生きていた・・。
あの2人がセレーネを殺し、セレーナも殺めようとしたのだ・・。
どうか、私のセレーナを守ってくれぬか。
私も全力で守るが、私の体にも魔を飼っている故、いつ暴走を始めるか分からぬのだ。」

ランドルは、アリストラドの言葉の意味が分からず、眉根を寄せて見つめていた。

こんな不安そうなアリストラドを見たことが無かったのだった。

ランドルには、彼に1つだけ言える言葉があった。

「大丈夫です・・。
貴方に頼まれなくてもセレーナは必ず守ります。
この命に代えても・・。
そもそも、彼女がいなくなれば死んだも同じですから。
しかし、彼女が素直に私に守らせてくれるかは分かりませんよ。」

色っぽい目元の泣き黒子が更に、美しさを際立たせていた。

アリストラドは、フッと笑んだ。

同じような愛を知っている、この男になら大切なセレーナを任せられる。

狂おしい想いが疼く心を閉じ込めて、ランドルを見上げた。

「私も、セレーネに同じような思いを抱いた。
そして、居なくなった時に現実に心が死んだも同じ思いをしたのだ。
誰も変わりにはならぬ、尊い1人に出会ったら2度と離してはならぬのだ・・。
・・・ランドル、気をつけろ。
神具・・を無効化する術を身に着けた上で奴らと戦うのだ!」


「分かりました。
但し、我らは神具についても知識不足なのです。
総長、どうか我らを再び導いて下さい。
貴方が魔を飼っているとしたら・・。
それをどうしたらいいのかを、どうか私に教えて下さい。」

「ランドル・・。
もしも、私の中の魂が君達に危害を加えるような
事があったら、どうか・・私を躊躇わずに・・。」

ランドルは耳を疑い、言葉を聞き取ることが出来ずに困惑していた。

決意に満ちた、紅い瞳が目の前で揺れた。

唖然とした表情で固まるランドルの手を握り、アリストラドは強い瞳で見つめた。

「頼む。お前にしか頼めぬのだ。
私がお前たちやセレーナを傷つける事は、私が死ぬよりも辛い事なのだ。
大切な者を、今度は守らせてくれ・・。
どうか、躊躇わずに未来を選ぶのだ。
執着と偏愛の連鎖を・・恐るべき者の転生を阻止するのだ。」

ランドルは苦しそうに身体を強張らせる。

葛藤を続けるランドルの手に重なり、握りしめた手は力強かった。

アリストラドの心からの願いが込められていた。

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