平凡魔法で素敵な勇者パーティー生活

相楽 快

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一章 クビになりました。

勇者パーティ結成

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王都の広い会議室に、大量の机が並んでいる。
机には、1班、2班と番号が振られている。

僕が一番乗りだ。

どこに座れ、というのは書いていない。
とりあえず、数字が一番大きい班の席に座る。

39班
テーブルの周りに、席が4つ。
典型的な4人パーティだ。
他の班のテーブルをみると、10人班もあれば2人班もある。

会議室の正面にはボードがあり、世界地図が広げられている。

王都が中心にある地図だ。
きっと、方角を分割して進路を決めるのだろう。
運命を分ける死の選択だ。

ボサっとしていると、目の前にドワーフが座っていた。

「やはりパーティは4人パーティに限るな。わしはタンク寄りの戦士、旅に役立つ魔法も少し使える器用なドワーフじゃ。ベック•サラマンダー。136歳、男。冒険者をしておった。お主は?」

ベックは、編み込んだ髭を撫でながら値踏みするように僕を見てくる。
苗字がある。人間とドワーフでは文化が違うかもしれないが、もしかすると貴族だ。

「自己紹介の前に、もう少しベックさんのこと知りたいな」

「いいとも、何が知りたい?」
ベックは少し驚いた顔をしたが、すぐに落ち着きを取り戻し、快く返事を返してきた。
今の反応で、柔軟性のあるドワーフだと僕は思った。この人となら組んでもいいかもしれない。

「旅に役立つ魔法って、どんな魔法かな」
僕は目的を達成したので、深く考えず質問する。

「お主、わしの魔法レパートリーを聞くってことの意味をわかっちょるんか?手の内聞いといて、はい組みません、っちゅうのは、ちと汚いぞ」

「そうだね。僕はベックさんと組む気満々になったよ。ベックさんが僕に聞きたいことは?」

ベックは、ほうと驚いた顔をして、そうじゃの、、、と少し考えてから質問した。

「返す刀ですまんが、お主のポジションは?魔法使いなら、使える魔法を知りたい」

「お察しの通り魔法使いだよ。使える魔法は睡眠と土魔法だけ。旅に便利な火や水、そして回復も使えない。魔法使いって言ったけど、あんまり魔法使いっぽい運用はできないんだ。悲しいけどね。先に言っておくけど、コストは3で魔術師の恥みたいなもんだよ。勇者パーティだって、勇者支援課長のピリストさんに、やらなきゃ前線に送るって脅されてやってるだけなんだ。」

ベックは、ふふんと笑う。

「コストか。そんなもの幼少のころの目安でしかない。IQと一緒じゃ。大人になったら意味ないわい。そんなこと言ったら、わしのコストは179じゃ。神童と言われておったが、この歳になると器用なドワーフ止まりじゃわい」

「179?そんな数字聞いたことない。ベックさん、もしかしてとんでもない実力者なんじゃないの?」

僕は目の前のベックが、急に勇者のように見えてきた。179…リーダーが15だったから、リーダーが10人束になっても勝てない数字だ。

「もう一度言おうか?コストは目安でしかない。コストが低くても恐ろしく戦闘能力が高いものもおるし、知恵に長けていたり、政治が得意なものもおる。わしの知っとる王のコストは46じゃが、やり手よ。わしじゃ敵わん」

僕はベックにますます興味をもった。

「お主、土魔法が使えると言ったな。見せてもらえんか?」

もちろん。そう言って僕は魔法で、手のひらに球体の石を作り出す。
目を瞑り、内なるノームに語りかけ、力を借りる。

目を開けると、球体は鏡のように磨かれていた。

「お主、ノームの祝福を受けておるのか。ドワーフでも極めて稀じゃというのに、、、」

ベックはひどく驚き、恐る恐る球体を手に取る。質感に触れ、隠す気もなく息を呑む。確かに綺麗だが、そんなに驚くものか?
いろんな角度から見て、丁寧に僕の手に戻した。

「わしはお主と組む。火も水もわしが使えるから問題ない。ノームの嗅覚を、わしらが信じないわけにはいかんからの」

ベックは右手を差し出した。
僕も右手を出し、グッと握る。

すると、どこからか三つめの手が降りてきて、僕らの手を包む。

「私も同行させていただきたい」
顔を上げると、整った顔の青年がいる。
服装からして僧侶だ。
落ち着いている。
袖から見える前腕はひどく発達しており、拳は鉄のようだ。
本当に僧侶か?

「お主は、僧侶かの?」
ベックは驚きもせずに聞いた。

「ええ。私はシュタイン。僧侶です。」
シュタインは姿勢を正して自己紹介する。めちゃくちゃ背が高い。そして顔が小さい。

「シュタインさん、なぜ僕らと組もうと思うんですか?」

「コスト179の天才ドワーフであるベックさん。魔王の攻撃を受けたにも関わらず生き残り、土の精霊に祝福を受けているボルサリーノさん。これだけとんがっていれば、私のようなものも受け入れて頂けるのではないかと思いましてね」

シュタインは上着のボタンを幾つか外す。胸にタトゥーが見える。
悪魔だ。悪魔のタトゥーだ。
角が三つに翼が八つ。
かつて人類を破滅に追い込んだ大魔王ベルゼブブに違いない。

「悪魔崇拝か?」
ベックは少し嫌そうな顔をして聞く。

「親が。私は神を信奉していますがね。親の悪魔崇拝は凄まじく、私や兄弟の身体にはたくさんの呪いがかけられています」

シュタインは袖を捲ると、そこにもタトゥーがびっしりはいっている。

「顔にはタトゥーがないんですね」
僕が聞くと、シュタインは深くため息をつき、椅子に深く座る。

「ボルサリーノさん、地雷を踏むのが早いですね。」

シュタインは自分の顔をなぞる。

「私、親を殺していましてね。顔にタトゥーを入れるというので、我慢できずに殺してしまいました。ほら、私の顔って美しいじゃないですか。私のこの世の中で一番好きなものは、私の顔ですから。好きなものを守るために、二番目に好きだった親を殺めたのです。」

「更生施設として教会に?」

「ええ。そこで鍛えて僧侶になりました。まあ、ここまで話しましたが、パーティを組むのは、今から話すことを聞いてからにしてください」

「なんじゃ?」
ベックが聞く。

「私、僧侶なのに回復魔法が使えません!!!どうもすいません!!!」

おお、これは、なんとも。
魔法がほとんど使えない僕が言うのもなんだが、回復魔法が使えない僧侶とはさぞ生きるのが難儀だろう。

「ちなみに、できることを聞いても良いですか?」

「よくぞ聞いてくれました!物理も魔法も防御特化です。防御力向上のアストロも使えます」

アストロを使えるのはすごい。
動けなくなるかわりに、火竜の咆哮にも耐えられると聞く。

「そして、聖属性物理攻撃ができます」

「戦士よりの僧侶、じゃな。どれ、一発貰おうか」
ベックはシュタインの前に立つ。
シュタインは、遠慮せずベックの腹を撃ち抜いた。
「ウッッッ」
ベックは蹲り、動けない。
コスト179のベックを、一撃でダウンさせるとは、凄まじい力だ。
「ベックさん、ありがとうございます。あなただから遠慮せず打ち抜けた。腹にアダマンタイトの鎧を着ていますね。それがなければ穴を開けてしまう。あなたが受けてくれてよかった」

ベックはまだ悶絶している。

「そしたら、魔法防御をみせてもらおうかな」
はたして、僕のスリープは彼に聞くだろうか。
「良いですよ、攻撃魔法でも状態異常でも、好きなものをかけてください」

※スリープ

シュタインは寝た。
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