悪役令嬢への未来を阻止〜〜人は彼女を女神と呼ぶ〜〜

まさかの

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第一章 魔法祭で負けてたまるものですか

謎の祭壇現る

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 馬車に乗って、一つの鐘分の時間をかけて目的の場所へ辿り着いた。
 アビ・パラストカーティも結果を見届けたいとのことで付いてきている。
 そこは何もなく、本当に草木のない荒野となっている。
 わたしは間違いがないかルージュくんに確認する。

「ここで間違い無いのですか?」
「はい、ここが伝承の地です。祖父母の代までは多少は自然が残っていたらしいのですが、今ではこのようになっています」


 魔力不足なため、人が住む地にばかり魔力は優先される。
 伝承の湖はとうの昔に無くなっているため、この地の優先度も落ちた結果だ。
 少し歩くと湖があったと言われる大きな窪みを発見した。


「ここがそうですね」


 ホーキンス先生が断定する。
 一度来たが何も収穫がなかった場所。

「さて、マリアさま。一度魔法をこの地へ捧げてもらってもいいでしょうか? 挿絵のように手を広げてもらって」
「わかりました」


 わたしは神への祈りを捧げて、魔力を土地へと送る。
 光が地面に吸い込まれてしばらく様子を見る。
 だが何も起こらなかった。
 わたしは落胆して目をつぶる。
 このままではヴェルダンディの命が助からない。
 やはり伝承は嘘なのだろうか。

「え?」

 わたしは次の手はないか確認するため、ホーキンス先生に尋ねようとしたがそこには誰もいなかった。
 場所もいつの間にか見知らぬ祭壇に来ている。
 岩を四方で囲まれて入り口のない場所で、誰が火を付けたのか松明が明るく燃えている。

「ここはどこですの? みんなは!」


 わたしは大声をあげて呼ぶが誰も答えてくれない。
 不安が襲ってくるがどうしようもない。
 今一度ここがどこなのかあたりを見渡す。


 祭壇には大きな石板が置いてある。
 そして自身が立っているそこはステージとなっていた。


「あれは水の神の像?」


 祭壇の奥には大きな水の神の像があった。
 なぜこんな隠された場所にあるのか全くわからないが、そこに呼ばれている気がした。
 わたしは恐る恐る歩き、その神像へと手を伸ばした。
 その瞬間一気に魔力を吸われた。
 ガクッと膝を地面に落としてしまう。
 それほどの脱力感がくるほどの魔力の消費。

 そして神像の目が光ると空へと青い光が像から昇る。
 光の昇る場所だけ天井に穴が開いており、空が見えることから現実の場所にいることがわかった。
 しばらく光は立ち上り、完全に岩で囲まれていたこの場所から一斉に岩が消えて、この場所が露出したのだ。


「マリアさま!」


 聞き覚えのある声が聞こえた。
 セルランがあの光を見つけて、すぐに駆けつけてくれたようだ。
 わたしもその声に返事を返す。


「セルラン!」


 わたしが膝を突いているので、何かあったのではないかとかなり焦っているのがわかる。
 すぐに水竜でこちらまで来て、私の体を抱きかかえた


「よくぞ、無事でいてくれました」
「たぶん、水の神のお導きね。セルラン、せっかくで悪いのですけど魔力を回復する薬を渡しなさい」


 わたしはまだリタイアする気はない。
 せっかく伝承のヒントがあるのにこんなところで休んでいる場合ではない。
 セルランはすこし躊躇ったが、わたしの有無を言わせない視線を受けて小瓶を渡すことを承諾した。
 わたしを地面に下ろすわけにはいかないとのことで、全員が到着するのを条件に出された。
 そして全員がこの場所に辿り着いて驚きの声をあげた。
 特に一番興奮していたのはーー。

「おお、まさかこんなところにこのような場所があるなんて! さすがはマリアさま! 」


 ホーキンス先生は子供のようにはしゃいで、この場所を走り回る。
 わたしは苦笑しながら、レイナから回復薬を飲ませてもらい、体に力が入るようになった。


「ありがとう、セルラン。もう下ろしても大丈夫です」


 セルランにお礼を言って、自分の足で立ち上がる。
 初めて回復薬を飲んだが、脱力感が完全になくなったので前の時にも飲ませてくれればよかったのにと思ったが、セルランが補足した。


「本来、緊急時の薬ですから簡単に飲んでいいものではありません。一日に一本と決められていますし、自然回復とは違いますので体への負担もあります。今回はマリアさまの気持ちを考えてお渡ししましたが、今後は与えるつもりはありません」


 セルランの意地悪と言いたいが、わたしのことを思ってのことなので特に何も言うまい。
 ラケシスも少し頬を紅潮させている。
 うっとり手を頬に当てて、わたしへと近づいてくる。


「さすがは姫さま。やはり姫さまこそが水の神の化身。女神のしもべとなれた自身の幸運にこれほど感謝したことはありません」
「大げさですよラケシス。ただいつのまにかこの場所に連れてこられただけですから」
「でもまさかこのような立派な祭壇があるなんて……。マリアさまの髪に対する伝承は本当だと信じるには十分な現物ですよ。マリアさまがいなければ手ぶらで帰るしかありませんからね」


 レイナも賛辞する。
 わたしは少しばかり恥ずかしい思いになりながら、ホーキンス先生に尋ねた。

「ホーキンス先生、何かわかりそうですか?」


 ホーキンス先生は興味深く石板を読んでおり、一段落したのかこちらへと向かってきて報告してくれる。


「どうやらここで神々への舞が必要なようです」
「舞ですか? わたしが踊れるのは、王国院で習う神々への祈りという踊りだけですが、それでいいのかしら?」


 王国院の季節祭ではこの神々への祈りを全員が踊らなければならない。
 特に意味があるわけではないが、昔からやっているので今もやっている。


「やはり、ここはやってみるしかないでしょう。一度踊っていただけるますか?」


 わたしは承諾して、わざわざ持ってきてもらった踊りの衣装に着替えてステージの上へと昇った。
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