悪役令嬢への未来を阻止〜〜人は彼女を女神と呼ぶ〜〜

まさかの

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第一章 魔法祭で負けてたまるものですか

祭壇の謎

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 奏者は、レイナとラケシスが竪琴で弾いてくれる。
 わたしは自身が着ている少し露出の多い服を見る。
 ロングスカートで足だけは隠れているが、上は胸の部分だけしか隠されておらず、お腹や二の腕は完全に丸見えだ。
 少し恥ずかしさはあるが、ヴェルダンディのためならこれくらいは我慢する。
 二人とも音の調律も終わり、わたしの方を見るので頷く。
 そして曲を弾き始めた。
 ゆっくりとした前奏が流れ始めたのでわたしもその音に合わせて踊りを始める。

 最初は曲調と同じくらいゆっくりステップを踏む。
 王国院で習った踊りを記憶にある通り再現する。
 少しずつ体から力が抜ける。
 何事かと思ったが、自然と魔力が湖があった場所へと吸い込まれていく。
 しかし、あまりたくさん吸われるわけではない。
 この曲で一番激しい踊りのところでもそれは変わらず、結局最後まで踊りきった。


 全員から拍手され、なんとか踊りを終えれてホッとする。
 だが、湖があった場所には変化がほとんどない。


「次は何も起きませんわね」
「何か足りないのかもしれません。もう少し検証したいと思います」


 その後はわたし以外で男女分けて踊ったり、一緒に踊ったり、わたしを含めて複数で踊ったりもした。
 それでわかったことは、わたしだけが勝手に魔力が流れるようになっている。
 他の者は魔力が特別吸われるわけではないのだ。
 ホーキンス先生は石板を凝視して、ほかにできることがないかを考えている。


「ホーキンス先生、その石板にはなにが書かれているのですか?」
「かなり昔の言葉で書かれていますね。神への賛辞や修飾の多い言葉を無くして訳するとこうなります」


 蒼き髪を持つ命を司る者よ。
 魔を討つのがあなたの役目に有らず。
 命を次へと送り出す者なり。
 あなたは送る者なり。
 生命を束ねなさい。
 始まりを奏でなさい。
 あなたは神への舞を捧げ、続く者たちのしるべとなれ。
 神の眷属はいつでも我々とともに在る。

「一体なんなのかしら?」

 わたしにはさっぱりわからない。
 ホーキンス先生もかなり頭を悩ませているので、こちらとしてもどうしようもない。
 その後も色々なことを試してみたが、結局は不発となった。
 太陽も落ちかけているので、一度休むためにルージュの屋敷に滞在することとなった。


「ま、マリアさま? 本当に僕の家でよろしいでしょうか? 」
「そ、そうです! 一度我々の屋敷で戻られたほうがいいと思います」


 ルージュが恐縮して、メルオープも領主の城で休むよう懇願する。
 だが、明日からのことを考えるとこの近くで休息をとったほうが効率が良い。
 それにどうせ不味い料理なら、どこで休もうが変わらないだろう。


「他の者たちも了承したので、これは決定事項です。ルートくんのお屋敷はどんなところなのかしら」

 わたしはあまり田舎への外出が無くなったので、たまには流行が外れたものを見てみたい。
 すぐに村が見えてきたと思ったら、ものすごい臭いが馬車の中まで入ってきた。
 おそらく肥料の臭いだが、久しぶりにこの強烈さを思い出した。


 ……くさぃ


 都市部ではかなり前に衛生を徹底していたので、臭いのない綺麗な町並びになっている。
 だがこういった村では未だ、糞尿の垂れ流しだと聞く。
 どうにか鼻を押さえて、村を通り過ぎていく。
 しばらくすると小さな屋敷へと辿り着いた。


 先に着いていたルージュがちょうど屋敷から出てきて、両親と三人の兄弟が一緒に現れた。
 わたしたちも馬車から降りて挨拶を交わした。


「何もないところですが、料理だけは自信がありますのでぜひともお楽しみいただければと思います」


 ルージュの父親からそう言われ、わたしは微笑んで返した。
 わたしのために急遽パーティの準備をしてくれたみたいで、お屋敷ではなく外で食べることとなった。
 わたしの接待のためにかなり無理をしたのがわかるので快く受け入れた。
 セルランが小声で話しかけてくる。

「本当によろしかったですか?」


 ここで言っているのは、領主の城のほうがまだ落ち着けたのではないか、ということだ。
 たしかにそうだが、今更やっぱりあちらに行きますとは言えない。



「まあ、たしかに貴族のような華やかな食事とは違いますが、たまにはこういうものも悪くはないではないですか?」
「マリアさまが大丈夫であるのならば構いませんが、そろそろまともな食事を摂りたいですね」


 セルランの言葉には納得できる。
 パラストカーティは無理に貴族料理にしようとしているが、調味料の高騰で代替の物を使っているためか、あまり味はよろしくない。
 配膳された料理を見ると初めて見るものばかりだが、あまり綺麗とは言えない料理たちだ。
 おそらく庶民の料理と呼ばれるものだろう。
 食器もいつものように銀製ではなく、木でできており、銀食器が当たり前になってきた今では物珍しい。
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