悪役令嬢への未来を阻止〜〜人は彼女を女神と呼ぶ〜〜

まさかの

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第三章 芸術祭といえば秋、なら実りと収穫でしょ!

ユリナナの恋の話

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 夕食を終えてから一度わたしの部屋でレティアから話を聞くことになった。
 最近はお茶会をやっていないので情報がかなり遅れてしまっている。
 お茶会の大事さを再認識しつつ、レティアにユリナナの話を聞いた。

「ごめんなさいね。もうすぐ就寝の時間なのに」
「いいえ、お姉さまはいつも忙しそうですからこれで少しでも助けになるようなら構いません」

 なんていい子なんだろう、と嬉しく思った。
 レティアは口を開き始めた。

「お姉さまは、もし想いを寄せている人が仲の悪い他領だったらどうしますか?」

 ものすごく難しい内容だ。
 わたしは少し考えて答えた。

「そうね。どうしても結婚は政略的に行われることもあるから、普通は結婚自体無理ね。もし結婚できたとしても、お互いの家がどちらの領土からも責められて、あまり良いことにはならないでしょうね。だから諦める……それがもっとも現実的でしょうね」
「それがもしウィリアノスさまであってもでしょうか?」

 そう、そこが一番難しい。
 他人に言うにはいいが、自分に置き換えたらかなり苦しいことだろう。
 そしてレティアが言いたいことがわかった。


「わたくしでは耐えられませんね。つまりユリナナさんも同じ状況に陥っているのですね」
「はい。ユリナナさまはゼヌニム領の方をお慕いしているそうです」


 それは本当に厳しい。
 特にゼヌニム領だとその後の領地間の仲をさらに悪くする可能性がある。
 ヨハネが嫁いでいるが、彼女は自分からそこへ行きたいと言ったから送り出したに過ぎない。
 ヨハネを心配するのは馬鹿らしいため考えなかったが、それによって今回のように裏から手を回されたのだ。

「なるほど。そうすると、ユリナナさんはどうしてもゴーステフラートをゼヌニムの庇護下に入れたいのですね」

 ユリナナをどうすればこちらにゴーステフラートを残したままでも良いと思わせられるか。
 わたしはレティアの悲しそうな顔に気付いた。

「大丈夫ですか?」
「……はい。ただ考えたのです。もし仮にわたくしが恋する相手がゼヌニム領の方だったら、どのようにこの想いを秘めればいいのかと」


 レティアはいい子だ。
 人の痛みを自分のことのように考えられる。
 わたしがやるしかない。
 そう思ってすぐにレティアの背中をさすった。

「大丈夫です。わたくしがどうにかします。すぐにそんな垣根なんて吹っ飛ばします」

 レティアはわたしの力強く握った拳をみて笑ってくれた。

「最近のお姉さまはまるで殿方のようなお言葉を言われますね」

 レティアは笑った。
 少しは安心してくれたようだ。

「ですが、最近のお姉さまの方が何倍も好きです。また何かお手伝いできることがあったら言ってください。こちらでも出来るだけ情報を集めますので」
「ありがとう、レティア。この件が終わったら、久々にどこかへ遊びに行きましょうか」
「まあ、それはすごく楽しみです。お姉さまならすぐに解決してくれることを信じています。どうか水の加護がお姉さまにあらんことを」


 レティアから情報をもらってすぐわたしはユリナナをお茶に誘った。
 すぐにこちらに返事が来て、誘いに応じてくれた。
 バラ園で少しでも気持ちを落ち着かせながらと思っていると、そこには先客がいた。
 わたしが嫌いな女ランキングを不動の一位で守っているアクィエルだ。


「あら、マリアさんではないですの。奇遇ですね」


 アクィエルも取り巻きたちとお茶会を開いており、バラ園に入ったわたしに気が付いたようだ。

「ええ、まさか時間が被ってしまうなんて。わたくしは少し遠くでお茶会をしますので御機嫌よう」
「あらそうですね。それでどなたとお茶会しますの?」
「ユリナナさんとです」

 隠していてもどうせすぐに来てバレるので教えてあげた。
 するとキョトンとしていた。


「あら珍しい組み合わせね。そうすると、ゴーステフラートの件ですね。よろしい、ならわたくしも混ぜなさい!」


 わたしは耳が悪くなったのかもしれない。
 今アクィエルは何と言った?
 わたくしも混ぜなさい、と言いました?
 今のは幻聴かもしれない。
 だって今自分のお茶会のために取り巻きを集めたのに、自分だけ他のお茶会に行くなんて、たとえアクィエルでも非常識なことはしないだろう。
 そうだ、これは幻聴だ。
 わたしは振り返って、聞き返すことにした。

「大変申し訳ございません。もう一度ーー」
「「アクィエルさま、本日は楽しいお茶会ありがとうございました。マリアさまとのお茶会を楽しんでくださいませ」」

 解散している!?
 全員微笑ましくこちらを見て去っていった。
 少しばかり目眩がしてきた。

「姫さま、お気を確かに」



 ステラが支えてくれてどうにか倒れずに済んだ。
 わたしの気持ちがわかるのかステラもサラスも憐憫な目でわたしを見ている。
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