悪役令嬢への未来を阻止〜〜人は彼女を女神と呼ぶ〜〜

まさかの

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第五章 王のいない側近

伝承の調査

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 決闘で勝利したわたしたちはその日はスヴァルトアルフの城で滞在する。
 明日からはシュトラレーセに赴いて、伝承について調べることになっている。

「イタタ」
「すぐに治しますね」

 私は転けた時に少し擦り傷が残ってしまったので、ラケシスに治してもらう。
 治癒の魔法で簡単に治った。

「ありがとう、ラケシス」
「いいえ、姫さまのためなら何でもやります。ずっと姫さまが戻る日をお待ちしておりました。城が落とされた日からどれほど心配したか……。レイナの分までわたくしがお側をお守りします」

 ラケシスの目は少し赤くなっている。
 セルランとレイナのことは聞いたが、こちらには来ていないらしい。
 まだ二人の命を感じるので死んではいないとは思うが、一体何をしているのか分からない。
 これ以上わたしの大事な側近に無茶なことはさせたくない。

「心配掛けましたわね。許してください、どうしてもシルヴィと舌戦をするには武器が必要だったの」
「とんでもございません。聞けば今日の対談はかなり大変だったと聞きます。どうか今日くらいはゆっくりお休みください」
「わかったわ。明日は早いからみんなも早く眠るように伝えてください」
「畏まりました」


 わたしはすぐに眠りについて夢すら見ずに朝へとなった。
 朝食も終えてすぐに馬車に乗ってシュトラレーセへと向かう。
 わたしとレティアはラナとアリアと同じ馬車に乗った。
 わたしはコソッとラナに尋ねた。

「馬車の従者は大丈夫?」
「はい、わたしの手の者なので何を聞かれても大丈夫です」

 ラナはこちらの味方になってくれているので、彼女が裏切っていなければ何も問題ないだろう。

「そう、ならいいわ。二人とも協力ありがとうね」
「いいえ、わたしはただ見て見ぬ振りをしただけですから。おそらくシルヴィには勘付かれていたでしょうが」
「そうね」

 各領土の伝承についてはラナから情報を貰った順に解放していったに過ぎない。
 協力者がいなければどこに祭壇があるのかが分からないのだ。
 ホーキンスがいないため、わたしの仲間で詳しいのは下僕かクロートだが、伝承についてはそこまで造詣が深くない。
 彼女たちの協力無くしてはわたしたちはお手上げだ。

「この土地の眷族たちももしかしたら目覚めているかもしれないわね」
「マリアさまには眷族の御姿がお見えになるのですか?」


 そういえばわたしは自分の側近たち以外には伝えていないことに気付く。
 隠しているわけでもないので頷いた。

「流石はマリア姉さまです。昨日のシルヴィに臆することのない胆力に、女性でありながらアビにも決闘で勝ってしまわれますし、本当に素敵です」

 アリアから称賛を受けて気持ちが昂ぶる。
 少しは良いところを見せられただろう。

「アリアさん、あまりお姉さまを調子に乗らせないでください」


 少しばかり冷たい態度のレティアに心が傷付く。

「そんな……カッコ良くなかったですか?」

 わたしは声が震えながらどこが悪かった一生懸命考える。
 もしかしたら転んでしまったところだろうか?
 あれは油断を誘うためにどうしても必要だったのだ。
 少しでも弁解しようとしたがそれは勘違いだった。

「もちろんカッコ良かったです。ただあまり危ないことはやめて欲しいだけです」

 わたしはホッとした。
 特に失望されていないようだ。

「もうしませんよ。あとはシルヴィに守ってもらう間にいろいろ調べましょう」

 レティアの髪を撫でて、シュトラレーセにたどり着くのを楽しみにした。
 シュトラレーセは春になると桜が咲き、その光景はこの国随一と言っても過言ではない。
 貢献度が二位ということもあり、街自体の発展度も高く、経済の面でも安定している。
 平民たちもお金があるから、武芸や踊りを嗜む者も多く、演劇なども王都より質がいい。
 お城の形も変わっており、縦ではなく横に広がる風変わりな姿だ。
 一階しかないお城はこのシュトラレーセくらいだろう。

「着きましたね」

 ラナの言葉と同時に馬車が止まった。
 全員が馬車から降りて、わたしはアビ・シュトラレーセにお礼を言う。

「本日から妹と側近共々よろしくお願いします」
「いえいえ、マリアさまのために何かできるのでしたらこちらとしても嬉しい限りです。どうか我が家のようにおくつろぎください」

 アビとの挨拶も終わって早速わたしたちはこの城の図書館へと赴く。
 流石は大領地だ、数々の写本が並べられており、必要な情報がここで大方手に入れられるだろう。


「伝承についてもありますか?」
「もちろんです!」

 ラナに聞いたつもりだが元気よくアリアが答えた。
 不思議にもラナが笑っている。

「シスターズで情報のやり取りをしていたそうですよ。王国院の図書館の本は写本は済んでおりますし、スヴァルトアルフの城にある黒い髪の騎士についての本も写本済みでず」

 そういえば、前にお茶会でも収集してくれると言っていた気がする。
 ラナが命令すると、侍従たちが伝承関連の本を大量に机に乗せた。
 これなら王国院で本を盗んでくる必要も無さそうだ。
 わたしはアリアの頭を撫でてお礼を伝えた。

「では少しずつ調べましょうか」

 わたしたちは数日間、伝承についての調査だけで終わったのだった。
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