悪役令嬢への未来を阻止〜〜人は彼女を女神と呼ぶ〜〜

まさかの

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最終章 希望を託されし女神

下僕視点7

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 もうすぐマリアさまの結婚式が行われる。
 それを阻止するためには仲間が必要で、マリアさまのライバルであらせられるアクィエルが全面的に協力してくれることになった。
 しかし敵の勢力は大きく、ゼヌニムが動き出して、フォアデルヘと共にこちらに牽制を仕掛けていた。

「どうします、アクィエルさま?」



 アビ・ビルネンクルベは心配そうに尋ねた。
 早くも数日が過ぎてしまい、通告も二回目が来た。
 おそらく三回目を無視すれば、本格的にこちらへの侵攻を始めるつもりだろう。
 こちらも何もしなかったわけではない。
 ビルネンクルベの伝承は解いたことによって領土の魔力不足が解消されたのだ。
 アクィエルの支持者は少しずつ増えている。
 だがそれでも戦力が大きく足りない。

「何か策はありますか?」

 アクィエルはクロートに尋ねた。
 だが彼も難しい顔をする。

「ゼヌニムとフォアデルヘが同時に攻めてくればひとたまりもありません。まずはフォアデルヘだけでも落とすことができれば、数日持ち堪えることができると思います」
「そうですよね」

 ビルネンクルベにも防衛の魔道具がある。
 アクィエルとアリアがいればかなりの魔力を注ぎ込むことができるので、簡単には城まで攻め入ることはできない。
 だが援軍が期待出来ないのに籠城していてはいつか負けてしまう。

「それならばやはりフォアデルヘを落としましょう。貴方の魔力ならそう難しくないのでしょう?」

 クロートは蒼の髪を持っているのでそれ相応の魔力を持っている。
 一撃で城を破壊するくらいわけがない。


「ですが、わたしの魔力で全てを解決することはできません。アリアさまをお連れして伝承を解き、アクィエルさまが正しいことを領民たちに知らさねばなりません」

 この領土のシルヴィはおそらくこの国を乗っ取った神に操られている。
 そのため話し合いなど意味がない。
 アクィエルは紅茶を飲んでからひと息つく。

「ではそうしなさい。あと二日くらいならどうにかなるでしょう。貴方たちもそろそろ準備が出来たのでしょう?」
「もちろんです。本日の夜中には動きます。フォアデルヘの領主を討ち取ります」

 アクィエルは満足したようでぼくたちに退出するよう言った。
 ぼくたちは夜まで英気を養うことになった。

「本当にこの人数で攻め入るのか?」

 ヴェルダンディが珍しく心配そうに聞いてくる。
 攻めるのは、クロート、ぼく、ヴェルダンディだ。
 アリアも付いてくるが、彼女には重大な仕事がある。

「もちろんです。アリアさまの御力があれば民の心は動く。光の神デアハウザーたちの失敗は我々に不満を募らせたことです。とうとう彼らにも天罰が下るでしょう」
「神様に天罰って……まあ、どうにかなるならいいや。おれはアリアさまと伝承を解けばいいんだろ?」
「はい、お願いします。それと同時にわたしがアビを討ちます。そしてすぐさまスインゼルも抑えに行きましょう」
「魔力が持つのか?」

 ヴェルダンディは当然の質問をする。
 一つの領土を攻め入るのすら大変なのに、二つの領土を落とそうするのだ。
 たとえマリアさま並みの魔力を持っていても一人では不可能だ。
 しかしーー。

「大丈夫だよ、ヴェルダンディ。考えがあるんだ」

 ぼくが自信満々に答えた。
 それを見てヴェルダンディは何かに気付いたようだ。

「あまり無茶するなよ。俺たちのやらなくちゃいけないことは、マリアさまをお救いすることだ」
「もちろんだよ」

 その時、遠くから声が聞こえてくる。
 リムミントが慌てた様子でやってきた。

「良かった、まだ出発はしていませんね」
「どうかしましたか?」

 クロートの質問になかなか答えない。
 息を切らすほど慌ててぼくたちを探していたようだ。
 彼女は息を整えてから喋りだす。

「聖典から新しい情報が入りました。ホーキンス先生からお話もあるので付いてきてください」

 ぼくたちはすぐに図書の部屋へと向かい、ホーキンスから話を聞く。

「よく来たね。なかなか読み応えがあったよ。過去の偉人たちはーー」
「先生、今は結果だけ教えてください」

 話が長くなりそうだったので話を遮って用件だけ聞く。

「うむ、そうだね。結論だけ言うと、伝承を解くだけでは神は目覚めていない」
「神が目覚めないといけないのか?」
「当たり前だ、馬鹿者」

 ホーキンスは机を叩いて、ヴェルダンディを叱った。
 普段自分のことしか頭にない彼でも、事が重要だと先生のようになる。

「元々の神がいなければ追い出すこともできない、まずは五神を復活させて未だ姿を隠している闇の神を引きずり出すしかない。そのためには魔力がいる。それも生半可な量ではなく、五人の伝承の髪を持つほどの魔力がいる。これが最低条件だ」
「おいおい、そんなの無理だろ?」

 ヴェルダンディは呆れた様子でいた。
 ぼくもその気持ちは分かる。

「ああ、無理だろう。今現在居る人物でそれに該当するのは、マリアさま、アリアさま、そしてクロートの三人だ。正直、三人も居るだけで奇跡の世代なのに、それでも全く足りない。ガイアノスさまも入れれば四人かね」

 ホーキンス先生はおまけとしてガイアノスを入れたが、あの男が協力してくれるとは思えない。
 デアハウザーに従っているので、彼は明らかな敵だろう。

「もう一人お忘れですよ」

 クロートが付け加える。
 そこでホーキンスも手をポンと合わせた。

「ああ、彼女がいたか」
「誰だ?」
「ヴェルダンディも知っているよ。ほらっ、仮面を付けた女性だよ」

 それでやっと思い至ったらしい。
 ぼくたちにドルヴィの正体を教えてくれた仮面の女性だ。
 彼女の正体は分からないが裏でぼくたちを助けてくれている。
 そんな彼女が伝承を解いていることから、同じく伝承の髪を持っているに違いない。

「先生はずっとあの人たちと一緒だったんですよね?」
「うん」

 研究所を襲撃される前にあの仮面の女性が危険を知らせてくれたので対処できたらしい。
 それからはずっと一緒に行動をして、途中でパラストカーティの聖典を調べるために別れた。

「結局あいつらは何なんだ?」
「それは言えないな。彼女たち三人と約束しているんでね」
「三人ですか? おかしいですね、まだ二人しか見ていないですが?」

 クロートが尋ねるとホーキンスはしまったと口を手で塞いだ。
 あの仮面の女性とクロートを吹き飛ばした戦士の他にも仲間がいるようだ。
 だがクロートを倒す人物に心当たりがある。


「あの常人離れした身体能力に相手を威圧するほどの雰囲気、覚えがあります。まさかとは思いますがーー」

 クロートが言葉を言うごとにホーキンスは誤魔化そうと口笛を吹き始めた。
 クロートは溜息を吐いた。

「まあ、いいでしょう。それよりももう一人の件はわたしがどうにかします」

 クロートは誰にも気付かれることなく、ちらりとぼくを見た。
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