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元凶
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~~☆☆~~
高名な医者を何人か当たり、ソフィーの侍従を診てもらえるようにお願いした。
本日中には来てくださると快諾してくれたため、とりあえず彼女の家へ戻る。
――俺の神聖術がどうして効かないのだ?
神聖術は完璧な秘術では無い。だがそれでも全く効果が無いというのは初めてだった。それほどまでに厄介な呪いなのか、それとも――。
その時、持っているペンダントが震えた。それは彼女の危険を知らせる聖遺物の反応だ。
すぐさま首に掛けているペンダントを取り出すと光り輝いている。
それをソフィーの家の方向へ向けると光が弱まった。
「家にいないだと……!?」
順番に方角を変えていくと東で反応が強くなる。光が弱いため、おそらくは距離が離れている。
どうしてそちらへ行ったのか分からないが、俺はペンダントが共鳴する方向へと走った。
するとどんどん距離が近くなっていくのに気付く。
もしかするとソフィーがこっちに近づいているのかと思ったが、ペンダントが指し示したのは走る馬車だった。
そこにはリオネス王太子の満足げな横顔が見えた。
ペンダントの光もリオネスが進む道で強く輝くので、ソフィーのペンダントをあの男が持っているのだ。
「まさか……」
迂闊だった。どうしてソフィーを一人にしてしまったのだ。
もうすぐ異端審問があるのだから片時も離れない方が良かったのだ。
しかし今は後悔している場合では無い。馬車を追いかけ、王城に先回りした。
そしてリオネスが降りたタイミングで詰め寄った。
「リオネス王太子殿下、ソフィーはどこにいますか!」
俺が話しかけてくることをに驚くがすぐに笑いだす。
「ずいぶん鼻が利くな。だがもう遅かったな。ソフィアは魔女としてすでに正教会に引き渡している」
「なんだと……」
血の気が引いていくのが分かる。彼女を守るとあれほど言ったのに全く守れていない。最後の手段は彼女と供に国を脱出するしかない。
「殿下、ここはわたくしめにお任せください」
後ろから声を掛けたのは俺と同じ司祭のヒューゴだった。するとリオネスは「あとは身内でどうにかしてくれ」と俺の横を過ぎていく。
すかさず追いかけようとしたが、ヒューゴが俺の進路を防ぐ。
「余計なことをこれ以上するな。お前はソフィア・ベアグルントの魔法で洗脳されていたと、本人の口から証言があった。下手に騒げばお前まで罪人になるぞ」
「ソフィーがそう言ったのか……?」
「ああ。健気な娘だ。あの娘に免じて良い物をやろう」
ヒューゴは粉の入った透明の瓶を差し出した。
「病気になった侍従はこれで治るであろう。聖水に浸した薬草を煎じたものだ」
受け取った瓶を見つめた。
都合良くこんな薬を持っているわけがない。すかさず問いただす。
「どうしてこんな物を持ち歩いている?」
ヒューゴは鼻で笑った。
「この薬でしか効かない呪いを植え付けたのだ。大事な人を助けたい心は魔女でも同じだと安心したぞ」
「貴様!」
怒りからヒューゴの胸ぐらを掴んだ。あろうことか曲がりなりにも司祭であるのに、人を苦しめる呪いを使ったのだ。
だがこの男も退くことはない。
「文句があるのならお前の後見人である大司教へと言うのだな。元々この呪いも大司教からこの作戦のために譲り受けたのだからな」
「セラフィン大司教が……まさか、あの方がそんなことをするはずが……」
実の親のように面倒を見てくれたセラフィン大司教は俺の目標だった。俺よりも多くの知恵と経験を持っているため、そんな男に憧れた。
だからこそ信頼していた人に裏切られたという思いに駆られる。
「そうしなければならないほど魔女は危険なのだ。私は魔女を殺すためならなんでもする。それと勘違いするな、クリストフ司祭。お前が告発しないから第三者が苦しんだのだぞ」
俺の緩んだ手を振り払った。二重のショックのせいで頭がぐちゃぐちゃになっていく。改めて自分は親のようである大司教を裏切ろうとしていることを実感した。
「しばらくお前は大聖堂への立ち入りを禁止する。異端審問まではあの女も監禁せねばならんからな」
いくら魔女の証があろうとも聖女が触らなければそれは確実な証拠にはならない。
異端審問があるまでは、彼女の無事はある意味保証されている。
残る日は二日のみ。だがすぐにでも無事な姿を見たかった。
「安心しろ。運命の日まではあの娘は綺麗なままにしてやる。異端審問の日に腫れた顔で出られては、無理矢理に自白させたと捉えられてしまうからな」
その言葉を聞いて一つの不安が解決した。するとヒューゴは「ではまた異端審問の日に会おう」と王城へと入っていく。
俺も腹を括らなければならない。今、ヒューゴがここにいるのなら大聖堂は手薄なはずだ。
その時、大聖堂の方から大きな爆発音が聞こえてきた。
不安がよぎる。あの爆発がソフィーが起こしたのではないかと。
~~☆☆~~
目を覚ますと知らない個室に入っていた。魔女であると正教会にバレてしまったため、おそらくは大聖堂に幽閉されているのだろう。
リオネスから蹴られたところに痛みがないので、おそらくはヒューゴが治してくれたのだろう。
一応は脱出できないか部屋を調べたが、窓は鉄格子になっており、ドアも外に鍵があるようで、こちらからは開くことはできない。
改めて部屋を見渡した。
「一応は待遇を考慮してくれるみたいね」
部屋は必要最低限の物しかないが、それでも果物やパンなどはあるため、聖女から魔女であると証明されるまでは私の安全は保証されているようだ。
一度ベッドまで戻り腰を下ろすと、クリストフの顔が思い浮かんだ。
「怒っているだろうな……」
勝手に行動したあげく魔女であるとバレてしまった。だけど彼の事だから、心配して暴れていないか心配もある。
最後に一回くらい会えないものだろうか。
一人でいるせいでどんどん不安が募っていく。誰でもいいから話し相手でもいれば、死への恐怖を紛らせることでもできるのに。
すると突然、ドアが開く音が聞こえた。
下がってしまっていた顔を上げると、まず長い金髪が目に入った。
「大司教……様?」
私のつぶやきにセラフィン大司教は優しい顔で微笑む。
「はい。お久しぶりですね。ソフィアさん」
この方はクリストフの育ての親みたいなものらしいので、もしかすると彼を誑かしたことを叱りに来たのだろうか。
優しそうな笑顔に急に鳥肌が立つ。
「少しだけお話をしましょう。貴女と――」
「へっ……」
まばたきの間にもうすでに目の前にセラフィン大司教が現れた。まるで瞬間移動でもしたかのように。
彼の手が私の頬を撫でる。その手が異様に気持ち悪く鳥肌が立った。
「私の将来についてお話をしましょうか。魔女のソフィアよ」
普段の優しい声とは違う、心胆寒からしめる低い声が上から振ってくる。
その声には聞き覚えがある。
「もしかして……貴方は……」
組織の中でずっと謎とされていた存在。正教会もずっと追い続けて一切の情報を見つけられなかった怪物。
そして私を組織へと入れた張本人。
「あの時以来ですね。前はクリスに邪魔されましたが、今回はそうならないでしょう」
この国の裏側を操る組織のボスだった。
高名な医者を何人か当たり、ソフィーの侍従を診てもらえるようにお願いした。
本日中には来てくださると快諾してくれたため、とりあえず彼女の家へ戻る。
――俺の神聖術がどうして効かないのだ?
神聖術は完璧な秘術では無い。だがそれでも全く効果が無いというのは初めてだった。それほどまでに厄介な呪いなのか、それとも――。
その時、持っているペンダントが震えた。それは彼女の危険を知らせる聖遺物の反応だ。
すぐさま首に掛けているペンダントを取り出すと光り輝いている。
それをソフィーの家の方向へ向けると光が弱まった。
「家にいないだと……!?」
順番に方角を変えていくと東で反応が強くなる。光が弱いため、おそらくは距離が離れている。
どうしてそちらへ行ったのか分からないが、俺はペンダントが共鳴する方向へと走った。
するとどんどん距離が近くなっていくのに気付く。
もしかするとソフィーがこっちに近づいているのかと思ったが、ペンダントが指し示したのは走る馬車だった。
そこにはリオネス王太子の満足げな横顔が見えた。
ペンダントの光もリオネスが進む道で強く輝くので、ソフィーのペンダントをあの男が持っているのだ。
「まさか……」
迂闊だった。どうしてソフィーを一人にしてしまったのだ。
もうすぐ異端審問があるのだから片時も離れない方が良かったのだ。
しかし今は後悔している場合では無い。馬車を追いかけ、王城に先回りした。
そしてリオネスが降りたタイミングで詰め寄った。
「リオネス王太子殿下、ソフィーはどこにいますか!」
俺が話しかけてくることをに驚くがすぐに笑いだす。
「ずいぶん鼻が利くな。だがもう遅かったな。ソフィアは魔女としてすでに正教会に引き渡している」
「なんだと……」
血の気が引いていくのが分かる。彼女を守るとあれほど言ったのに全く守れていない。最後の手段は彼女と供に国を脱出するしかない。
「殿下、ここはわたくしめにお任せください」
後ろから声を掛けたのは俺と同じ司祭のヒューゴだった。するとリオネスは「あとは身内でどうにかしてくれ」と俺の横を過ぎていく。
すかさず追いかけようとしたが、ヒューゴが俺の進路を防ぐ。
「余計なことをこれ以上するな。お前はソフィア・ベアグルントの魔法で洗脳されていたと、本人の口から証言があった。下手に騒げばお前まで罪人になるぞ」
「ソフィーがそう言ったのか……?」
「ああ。健気な娘だ。あの娘に免じて良い物をやろう」
ヒューゴは粉の入った透明の瓶を差し出した。
「病気になった侍従はこれで治るであろう。聖水に浸した薬草を煎じたものだ」
受け取った瓶を見つめた。
都合良くこんな薬を持っているわけがない。すかさず問いただす。
「どうしてこんな物を持ち歩いている?」
ヒューゴは鼻で笑った。
「この薬でしか効かない呪いを植え付けたのだ。大事な人を助けたい心は魔女でも同じだと安心したぞ」
「貴様!」
怒りからヒューゴの胸ぐらを掴んだ。あろうことか曲がりなりにも司祭であるのに、人を苦しめる呪いを使ったのだ。
だがこの男も退くことはない。
「文句があるのならお前の後見人である大司教へと言うのだな。元々この呪いも大司教からこの作戦のために譲り受けたのだからな」
「セラフィン大司教が……まさか、あの方がそんなことをするはずが……」
実の親のように面倒を見てくれたセラフィン大司教は俺の目標だった。俺よりも多くの知恵と経験を持っているため、そんな男に憧れた。
だからこそ信頼していた人に裏切られたという思いに駆られる。
「そうしなければならないほど魔女は危険なのだ。私は魔女を殺すためならなんでもする。それと勘違いするな、クリストフ司祭。お前が告発しないから第三者が苦しんだのだぞ」
俺の緩んだ手を振り払った。二重のショックのせいで頭がぐちゃぐちゃになっていく。改めて自分は親のようである大司教を裏切ろうとしていることを実感した。
「しばらくお前は大聖堂への立ち入りを禁止する。異端審問まではあの女も監禁せねばならんからな」
いくら魔女の証があろうとも聖女が触らなければそれは確実な証拠にはならない。
異端審問があるまでは、彼女の無事はある意味保証されている。
残る日は二日のみ。だがすぐにでも無事な姿を見たかった。
「安心しろ。運命の日まではあの娘は綺麗なままにしてやる。異端審問の日に腫れた顔で出られては、無理矢理に自白させたと捉えられてしまうからな」
その言葉を聞いて一つの不安が解決した。するとヒューゴは「ではまた異端審問の日に会おう」と王城へと入っていく。
俺も腹を括らなければならない。今、ヒューゴがここにいるのなら大聖堂は手薄なはずだ。
その時、大聖堂の方から大きな爆発音が聞こえてきた。
不安がよぎる。あの爆発がソフィーが起こしたのではないかと。
~~☆☆~~
目を覚ますと知らない個室に入っていた。魔女であると正教会にバレてしまったため、おそらくは大聖堂に幽閉されているのだろう。
リオネスから蹴られたところに痛みがないので、おそらくはヒューゴが治してくれたのだろう。
一応は脱出できないか部屋を調べたが、窓は鉄格子になっており、ドアも外に鍵があるようで、こちらからは開くことはできない。
改めて部屋を見渡した。
「一応は待遇を考慮してくれるみたいね」
部屋は必要最低限の物しかないが、それでも果物やパンなどはあるため、聖女から魔女であると証明されるまでは私の安全は保証されているようだ。
一度ベッドまで戻り腰を下ろすと、クリストフの顔が思い浮かんだ。
「怒っているだろうな……」
勝手に行動したあげく魔女であるとバレてしまった。だけど彼の事だから、心配して暴れていないか心配もある。
最後に一回くらい会えないものだろうか。
一人でいるせいでどんどん不安が募っていく。誰でもいいから話し相手でもいれば、死への恐怖を紛らせることでもできるのに。
すると突然、ドアが開く音が聞こえた。
下がってしまっていた顔を上げると、まず長い金髪が目に入った。
「大司教……様?」
私のつぶやきにセラフィン大司教は優しい顔で微笑む。
「はい。お久しぶりですね。ソフィアさん」
この方はクリストフの育ての親みたいなものらしいので、もしかすると彼を誑かしたことを叱りに来たのだろうか。
優しそうな笑顔に急に鳥肌が立つ。
「少しだけお話をしましょう。貴女と――」
「へっ……」
まばたきの間にもうすでに目の前にセラフィン大司教が現れた。まるで瞬間移動でもしたかのように。
彼の手が私の頬を撫でる。その手が異様に気持ち悪く鳥肌が立った。
「私の将来についてお話をしましょうか。魔女のソフィアよ」
普段の優しい声とは違う、心胆寒からしめる低い声が上から振ってくる。
その声には聞き覚えがある。
「もしかして……貴方は……」
組織の中でずっと謎とされていた存在。正教会もずっと追い続けて一切の情報を見つけられなかった怪物。
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