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劇の助っ人
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「早く行こう! 祭りがはじまっちゃうよ!」
彼の腕を引っ張った。今日は大きな祭りが開催される。今年も豊作になることを祈願するための祭りだ。
「祭りは逃げないから落ち着きなさい」
「だって、美味しそうな匂いがたくさん立ち上っていますもの、あっち行きましょう!」
屋台でトウモロコシを買った。
ベンチに座ってまずはがっつりと食べる。甘くて美味しい……。
私が食べている間に、彼は店の人に今年の農業事情を聞いていた。
「ときにご主人、今年の収穫の見通しはいかがかな」
クリストフはもうすでに私の領地でも顔は知れ渡っている。
精力的に不作への対策を訴え続けてきた賜物だろう。店主も快く答えてくれた。
「正直なところ分からないですね。日照りが続きすぎているからなんとも……まあ、クリストフ様が言っていた他の代替野菜があれば今年は大丈夫ですよ」
「そうか。其方らにも苦労を掛ける。それと近くの教会にもいくつか送ってもらえないだろうか?」
「かしこまりました!」
祭りの日まで仕事熱心だ。だけど他の人を気に掛けるのが彼らしい。
私が座っているベンチまで彼がやってきた。
「待たせたな」
「全然ですよ。何か食べたい物はありませんか?」
少し悩むそぶりをしたのち、私が食べているトウモロコシを指差した。
「なら買ってきますね」
立ち上がろうとしたら、彼が肩を押さえた。
「そなたの手に持っている物がいい」
「ですが食べかけですよ?」
「片側だけであろう? なら構わん。それにそれをまるごと食べたらすぐにお腹が膨れてしまう。ゆっくり回ろう」
どうやら気遣ってくれているようだ。私も色々な物を食べたいのでお言葉に甘えよう。
持ち手を彼に渡そうとしたら「食べさせてくれ」と彼から甘えてきた。
遠くから「猊下も奥様には甘えるのね」や「噂では仮面夫婦って聞いたけど絶対違うわよ」と聞こえてくる。
「あーんしてください」
多く口を開けて、はむっと食べる姿も可愛い。だけども格好良さが崩れない。食べる姿も凜々しいとは……。彼の事だから心配はないだろうが、やはり社交に出れば、自分より綺麗な人たちに言い寄られるだろうなと漠然とした不安があった。
「うーん……」
「どうかしたのか?」
おっと、つい考え事をしてしまった。
「いいえ。クリスってどこでも人気者だから、私ももっと頑張らないと愛想を尽かされるかなって思いまして」
「そのような考えは無駄だ。ほら、次の店に行こう」
彼は立ち上がって手を差し伸べた。手を取ろうとした時に急に大声が聞こえた。
「あー! あんた!」
一体何事かと思って振り向いたら、ベレー帽を被った少年がこちらを指差していた。
どうやらその指はクリストフへ向いているようだった。
「お知り合いですか?」
「知らぬ」
どうやら赤の他人らしい。だが少年はそんなことは気にせず、クリストフの袖を引っ張った。
「なあなあ! 今大変なんだよ! 助けてくれ! あんたじゃないとダメなんだ!」
必死な顔で訴えるため無視もし辛い。
彼もそれを感じたのに加え、お人よりもあってか「分かった。誰か怪我でもしたのか?」と聞くと、少年も「そうなんだよ! 急いでくれ!」と急かせる。
私達は少年の後ろを付いていくと、少し町から離れて開けた場所に出る。
すると長蛇の列が見えた。
「すごく混んでますね」
「ああ。しかしこれだけ人が多いのなら、なぜ俺に助けを求めたのだ?」
全く思惑が分からないまま付いていくと、長蛇の列の先には大きなテントがあった。
テントの上の看板にでかでかと書かれている文字を読んだ。
「えっと……最終幕、来たれ、伝説の剣聖と愛しの姫君?」
何かの劇をしている一団だろうか。しかしみんな困った顔で雰囲気が暗い。そのまま進むと、団長らしき人に少年が駆け寄った。
「みんな、代役を連れてきたぞ!」
……代役?
クリストフと顔を見せ合わせなりゆきに任せることになった。
「本当か! どこにいる!」
「あそこの大きな人だよ!」
少年がクリストフを指差すと、団員達の顔が喜びから一気に驚愕に変わった。
「ば、馬鹿! 猊下じゃねえか! こんなお偉い方ができるわけねえだろ!」
「だって顔が良い黒髪の男なんてこの人以外に見つからないじゃんかよ!」
もしかして、先ほどの怪我をしているというのは、怪我をして役者が出られなくなっという意味だろうか。
しかしこんな劇をしているとは知らなかった。
少しだけ興味が湧いた。
「ねえねえ、どんな劇なのですか?」
すると団長らしき人は、またもや狼狽する。
「こ、これはソフィア様! これはですね――」
話を聞くと、異国の逸話らしく、剣聖と言われるほど強かった女性が国を乱す邪竜を倒して、平和になった世界で愛する人と結ばれる話らしい。
お互いに身分差があったが、ようやく結ばれる展開なのに、その役者が突然、大けがを負って出演ができなくなったようだ。
やはり最後は恋愛もあるので、顔が良い役者でないと締まらないので、みんな悲観していたようだった。
「大変申し訳ないが、私はあまりそのような芸は得意ではない。それに今日は妻と一緒に祭りを楽しんでいる最中でな……他の者を頼ってくれ」
彼はその気はないようで断るが、先ほどここまで連れてきた少年は諦め悪く、クリストフの服を引っ張ってお願いする。
「お願いだ! 人助けだと思って助けてくれよ!」
「こらっ、ギル! 猊下に失礼だろ!」
団員がギルを引き離そうとするが、それでも往生際悪く、手を離そうとしない。
今日を楽しみにしている人がたくさんいるんだよ! 団長が一生懸命考えて、やっと少しずつ客も増えてきたんだ!」
ここまで必死に頼まれるとなんとも断りづらい。
だがここでギルは幸運にも、彼を引き留める言葉を引き当ててしまった。
「そうだ! 隣に居るのは奥様なんだろ! その剣聖の役もしてもらえばいい!」
「わ、わたし!?」
それこそ無茶だ。主役となればたくさんやることが増えてしまう。素人の私でどうにかなるものではない。
「クリストフ猊下も見たいだろ! 今日は特別に用意した白いウェディングドレスもある! 最後だけでも出てくれたらみんな満足するって!」
ギルの必死な言葉に、クリストフの目が急に変わった。
「ふむ……どんな衣装があるのだ」
「ちょっとクリス!?」
途端に興味を出した彼に驚く。
それを逃さないギル。
「……! こっちに来てくれ!」
私が止めるよりも早く、ギルがクリストフを連れて行く。
すると団長らしき人が尋ねてくる。
「ソフィア様はよろしいのですか?」
「えっと……彼がいいと言えば……」
まだ彼がするとは決まっていない。もしかしたら衣装を見てやめるかもしれない。
私もテントに入ると、彼とギルが手を握り合っていた。
「あとで写真を現像するように」
「任せてくれ!」
クリス……!
彼の腕を引っ張った。今日は大きな祭りが開催される。今年も豊作になることを祈願するための祭りだ。
「祭りは逃げないから落ち着きなさい」
「だって、美味しそうな匂いがたくさん立ち上っていますもの、あっち行きましょう!」
屋台でトウモロコシを買った。
ベンチに座ってまずはがっつりと食べる。甘くて美味しい……。
私が食べている間に、彼は店の人に今年の農業事情を聞いていた。
「ときにご主人、今年の収穫の見通しはいかがかな」
クリストフはもうすでに私の領地でも顔は知れ渡っている。
精力的に不作への対策を訴え続けてきた賜物だろう。店主も快く答えてくれた。
「正直なところ分からないですね。日照りが続きすぎているからなんとも……まあ、クリストフ様が言っていた他の代替野菜があれば今年は大丈夫ですよ」
「そうか。其方らにも苦労を掛ける。それと近くの教会にもいくつか送ってもらえないだろうか?」
「かしこまりました!」
祭りの日まで仕事熱心だ。だけど他の人を気に掛けるのが彼らしい。
私が座っているベンチまで彼がやってきた。
「待たせたな」
「全然ですよ。何か食べたい物はありませんか?」
少し悩むそぶりをしたのち、私が食べているトウモロコシを指差した。
「なら買ってきますね」
立ち上がろうとしたら、彼が肩を押さえた。
「そなたの手に持っている物がいい」
「ですが食べかけですよ?」
「片側だけであろう? なら構わん。それにそれをまるごと食べたらすぐにお腹が膨れてしまう。ゆっくり回ろう」
どうやら気遣ってくれているようだ。私も色々な物を食べたいのでお言葉に甘えよう。
持ち手を彼に渡そうとしたら「食べさせてくれ」と彼から甘えてきた。
遠くから「猊下も奥様には甘えるのね」や「噂では仮面夫婦って聞いたけど絶対違うわよ」と聞こえてくる。
「あーんしてください」
多く口を開けて、はむっと食べる姿も可愛い。だけども格好良さが崩れない。食べる姿も凜々しいとは……。彼の事だから心配はないだろうが、やはり社交に出れば、自分より綺麗な人たちに言い寄られるだろうなと漠然とした不安があった。
「うーん……」
「どうかしたのか?」
おっと、つい考え事をしてしまった。
「いいえ。クリスってどこでも人気者だから、私ももっと頑張らないと愛想を尽かされるかなって思いまして」
「そのような考えは無駄だ。ほら、次の店に行こう」
彼は立ち上がって手を差し伸べた。手を取ろうとした時に急に大声が聞こえた。
「あー! あんた!」
一体何事かと思って振り向いたら、ベレー帽を被った少年がこちらを指差していた。
どうやらその指はクリストフへ向いているようだった。
「お知り合いですか?」
「知らぬ」
どうやら赤の他人らしい。だが少年はそんなことは気にせず、クリストフの袖を引っ張った。
「なあなあ! 今大変なんだよ! 助けてくれ! あんたじゃないとダメなんだ!」
必死な顔で訴えるため無視もし辛い。
彼もそれを感じたのに加え、お人よりもあってか「分かった。誰か怪我でもしたのか?」と聞くと、少年も「そうなんだよ! 急いでくれ!」と急かせる。
私達は少年の後ろを付いていくと、少し町から離れて開けた場所に出る。
すると長蛇の列が見えた。
「すごく混んでますね」
「ああ。しかしこれだけ人が多いのなら、なぜ俺に助けを求めたのだ?」
全く思惑が分からないまま付いていくと、長蛇の列の先には大きなテントがあった。
テントの上の看板にでかでかと書かれている文字を読んだ。
「えっと……最終幕、来たれ、伝説の剣聖と愛しの姫君?」
何かの劇をしている一団だろうか。しかしみんな困った顔で雰囲気が暗い。そのまま進むと、団長らしき人に少年が駆け寄った。
「みんな、代役を連れてきたぞ!」
……代役?
クリストフと顔を見せ合わせなりゆきに任せることになった。
「本当か! どこにいる!」
「あそこの大きな人だよ!」
少年がクリストフを指差すと、団員達の顔が喜びから一気に驚愕に変わった。
「ば、馬鹿! 猊下じゃねえか! こんなお偉い方ができるわけねえだろ!」
「だって顔が良い黒髪の男なんてこの人以外に見つからないじゃんかよ!」
もしかして、先ほどの怪我をしているというのは、怪我をして役者が出られなくなっという意味だろうか。
しかしこんな劇をしているとは知らなかった。
少しだけ興味が湧いた。
「ねえねえ、どんな劇なのですか?」
すると団長らしき人は、またもや狼狽する。
「こ、これはソフィア様! これはですね――」
話を聞くと、異国の逸話らしく、剣聖と言われるほど強かった女性が国を乱す邪竜を倒して、平和になった世界で愛する人と結ばれる話らしい。
お互いに身分差があったが、ようやく結ばれる展開なのに、その役者が突然、大けがを負って出演ができなくなったようだ。
やはり最後は恋愛もあるので、顔が良い役者でないと締まらないので、みんな悲観していたようだった。
「大変申し訳ないが、私はあまりそのような芸は得意ではない。それに今日は妻と一緒に祭りを楽しんでいる最中でな……他の者を頼ってくれ」
彼はその気はないようで断るが、先ほどここまで連れてきた少年は諦め悪く、クリストフの服を引っ張ってお願いする。
「お願いだ! 人助けだと思って助けてくれよ!」
「こらっ、ギル! 猊下に失礼だろ!」
団員がギルを引き離そうとするが、それでも往生際悪く、手を離そうとしない。
今日を楽しみにしている人がたくさんいるんだよ! 団長が一生懸命考えて、やっと少しずつ客も増えてきたんだ!」
ここまで必死に頼まれるとなんとも断りづらい。
だがここでギルは幸運にも、彼を引き留める言葉を引き当ててしまった。
「そうだ! 隣に居るのは奥様なんだろ! その剣聖の役もしてもらえばいい!」
「わ、わたし!?」
それこそ無茶だ。主役となればたくさんやることが増えてしまう。素人の私でどうにかなるものではない。
「クリストフ猊下も見たいだろ! 今日は特別に用意した白いウェディングドレスもある! 最後だけでも出てくれたらみんな満足するって!」
ギルの必死な言葉に、クリストフの目が急に変わった。
「ふむ……どんな衣装があるのだ」
「ちょっとクリス!?」
途端に興味を出した彼に驚く。
それを逃さないギル。
「……! こっちに来てくれ!」
私が止めるよりも早く、ギルがクリストフを連れて行く。
すると団長らしき人が尋ねてくる。
「ソフィア様はよろしいのですか?」
「えっと……彼がいいと言えば……」
まだ彼がするとは決まっていない。もしかしたら衣装を見てやめるかもしれない。
私もテントに入ると、彼とギルが手を握り合っていた。
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「任せてくれ!」
クリス……!
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