死に戻って王太子に婚約破棄をしたら、ドSな司祭に婚約されました〜どうして未来で敵だった彼がこんなに甘やかしてくるのでしょうか〜

まさかの

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魔女と聖女

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 今日はお城に呼ばれたため、準備で大忙しだ。
 屋敷内も大慌てで、みんな忙しなく働いてくれていた。
 化粧などを施し、髪も結い上げて、フォーマルな恰好にしていく。
 あまり派手すぎないようにして、身につける装飾品もなるべく小ぶりなのを選んだ。
 時間も近づいてきたため、クリストフが部屋へ入ってきた。
 何やら分厚い書類も持っていた。

「差し上げた領地からの証明書類ですか?」
「ああ。それもあるがお礼状も入っている。時間があるときに見るといい」

 正教会と協力して備蓄していた食料を配ったため、特に今年の冬が厳しかった領地からは大変喜ばれた。
「正教会の人たちも協力してくださったからですよ。今度お礼をお持ちしようと思います」
「そうだな。こちらからも褒美が出るように申請しておこう。さて、そろそろ時間だが準備はよいかね」
「はい!」

 彼と腕を組むと、「ん?」と急に彼が首を傾げた。


「今日は調子が悪いのか?」
「どうしてですか?」
「いや、なんとくな……何も無いのならいい」

 突然言われたためドキッとしたがそれを表に出さないようにする。
 なるべく表情を取り繕い、バレないように彼と供に王城へと向かうのだった。


 ~~☆☆~~

 王城にたどり着くと、すぐさま玉座の間に通された。本日の流れを先に説明を受け、いったん控え室で待つことになった。


「奇妙だな」

 クリストフはそう言って、そわそわした様子で部屋内を歩き回っていた。

「どうされたのですか?」
「どうもおかしいのだ。やけに正教会の者達が出入りしている」
「たぶん、これが理由でないかしら?」

 渡された書類の中に進行表が入っており、それを彼に見せてみた。
 すると、腑に落ちたようだ。

「まさか聖女様もお越しになるとは……」

 本来聖女様には多くの仕事があるため、こんな些細なイベントには参加しない。
 だからこそクリストフは不可解なのだ。
 だけども、それを確かめる暇はなく、私達は玉座の間へと呼ばれたのだった。


 ~~☆☆~~
 玉座の間には、中央のレッドカーペットを避けるように、右手側にはこの国の宰相を先頭に騎士達が後ろに連なる。
 また左手側には神官達が列を成していた。
 玉座には王族と聖女セリーヌが座っている。


「これよりベアグルント家が行った偉業の表彰を行う!」

 準備をしていた私は、中央のレッドカーペットの上を歩いて、王族の元へ向かう。
 数歩分の距離を離して、私は膝を突いた。
 腕をクロスに組んで、目をつぶってそのまま動かずにいた。
 すると国王が立ち上がり、私の近くまで歩いてくる。

「知っている者も多いだろうが、改めて説明しよう。今年の農作物の不作は誰もが知るところであろう。
 だが此度はベアグルント家がその身を削って、困窮している領地へ食料を提供してくれた。それがなければ民へ被害が広がり、餓死者も今よりも多く出るところだっただろう。よって、その功績を称え、ベアグルント家には名誉を授けよう」


 文官が冠を持って、国王の隣までやってくる。それを受け取った国王が私の頭へと、冠を乗せるのだった。

「ありがたき幸せ。これからもわたくしはこの国の一員として、この身を捧げて王家と国民のために尽くしていきます!」

 立ち上がって体を翻し、他の者達を見た。

 滞りなく式も進むかと思ったが――。

「風!?」
「目が開けられん!」

 突然にも突風が室内で吹き荒れた。
 体が飛びそうなほどの強い風が吹き荒れ、頑張って耐えた。
 ようやく風が収まってくると、周りが騒がしくなってきた。


「ガハリエ!」


 大きな声と供にクリストフが跳躍していた。
 その先には空に浮かぶガハリエの姿があった。

「今日は貴様に用は無い」
「ぐっ!」

 ガハリエに攻撃が当たる前に不可視のシールドに防がれた。
 攻撃は届かずに、クリストフは地面へと落ちていくのだった。
 それを一切見ることなく私を凝視していた。

「久しいな。ソフィア・ベアグルントよ」

 変わらぬ気持ち悪い声。前と違うのは顔をマスクで覆っていることくらいだろう。
 たぶんだが、クリストフによって痛めつけられて歪んでしまった顔を隠しているのだろう。

「控えなさい、ガハリエ・セラフィン!」


 聖女セリーヌの声が響き渡ると同時に、神官達が即座に武器を持つ。
 ガハリエを取り囲むように円を組んだ。

「偽物が私に命令するな。だが今日ばかりは私も機嫌がいい。ようやく逃亡生活も終わるのだからな!」

 ガハリエの姿が消えた。転移か何かを使ったのだ。
 辺りを探ったがどこにも見えない。
 もやが近くまで来ているのに、直前で気付いた。だがすでに遅かった。

「ぐっ!」

 突然にも首を絞められ、ガハリエの体が目の前に現れる。

「良い顔だ。私のモノになるのが待ち遠しい」
「だれ……が……がっ!」

 さらに力が入り、息ができない。
 クリストフの声が響く。

「ソフィーを離せ! 人質を取るとはどこまで卑劣だ!」
「勘違いするな。私はそのようなことはせぬ。だが面白い余興があってな」

 突然にも目の前の光景が変わった。急にふわっとした浮遊感が来たので、空中に投げ出されたのかと思った。

「「きゃっ!」」

 すぐに誰かにぶつかり、衝撃が体を走る。

「ご、ごめんなさい……」


 痛みで呻きながらも、どうにか顔を上げるとそこにいたのは、聖女セリーヌだった。

「い、いいえ。ソフィア様が無事で……」

 すると彼女はどんどん顔を青ざめていく。当たったところが悪かったのか心配になった。

「大丈夫ですか! どこか痛いところでも――」


 そこで私もやっと理解した。彼女の手が私に触れている。
 そしてそれを意味するのは――。
 すると後ろから頭を掴まれ、持ち上げられる。


「うぐっ! 離しな……さい」

 強い力で頭が割れそうだ。見えなくともガハリエの笑っている姿が目に浮かんできた。


「聖女セリーヌよ。偽りの言えないその口で言うがいい。その女が魔女かどうかをな」

 セリーヌは嘘を吐けないらしく、その口が勝手に開こうとするのを手で閉じていた。
 それが答えそのものだが、ガハリエはさらに追求する。

「無駄なことを。ガハリエ・セラフィンが命じる。ソフィア・ベアグルントが魔女であるか否かを答えよ。その手を口から離さなければこの女をこのまま握りつぶす」

 私を振り回して、他の人たちへ顔を向けさせる。
 頭が潰れそうなほど、どんどん締め上げられる。


「あぁあああ!」

 容赦の無い非道な方法でセリーヌの意志をねじ曲げた。
 いつでも殺せるのにそうしないのは、セリーヌからの言葉を待っているからだ。
 だからこそセリーヌも観念した。

「ソフィア様は……魔女です」

 声に悔しさを滲ませ、重々しく私の正体は打ち明けられたのだった。
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