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4. お茶会の正体

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※シリアス要素強めです。苦手な方はご注意ください。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 張られた頬を抑える間もなく、今度は蹴飛ばされた。

「痛っ……」

 背中が床に打ち付けられ、思わずそんな声を漏らしてしまった。

「無礼者には罰が必要よね? 本当なら不敬罪で極刑にするところをわたくしが直々に罰を与えて軽くしてあげているのだから、感謝しなさい!」

 私を見下ろすアーシャ様がそう言っている時、口元を抑えられて意識が遠のいていった。

 ……。

 手首と足首を締め付けるような痛みで目を覚ました私は起き上がろうとして、失敗した。
 手足を拘束されていたから。

 背中から伝わる冷たく硬い感触は、ここが床の上だと教えてくれる。

「ようやく目を覚ましたわね。痛い目に遭いたくなかったら、今から言うことをすると約束しなさい」
「それは……内容によります」
「簡単なことよ。私の目の前でエル様に失礼なことをして嫌われなさい! 二度と彼に関わるんじゃないわよ!」

 ちょっと……いや、全く言っている意味が分からないわ。
 なんで私がエルワード様に無礼を働かなくてはならないのかしら?

「分かったわね⁉︎」
「具体的にはどうすればいいのでしょうか?」
「ああもう、なんでみんなこうなのよ⁉︎ エル様にわざとお茶をかければいいでしょう!」

 そんなこと、出来るわけがない。
 故意にお茶をかけるなんて、最悪首が飛びかねないから。

 法が貴族であっても人の命を奪う事は許されていない。だから、アーシャ様が私を殺す事は出来ないと考えた私は断ることに決めた。

「そんなことできません」
「はあ? わたくしの言うことが聞けないわけ?」

 そんな言葉と共に、アーシャ様の足が私の腕に、足に、そしてお腹にも振り下ろされた。

「うぐっ……」

 痛みに呻き声を上げる私を容赦なく硬いヒールで踏みつけるアーシャ様。
 いきなり暴力を振るうなんて、貴族のすることじゃないと思っていた。でも、それは間違いだったみたい。

「これ以上痛い思いをしたくなかったら約束しなさい!」

 今度は脇腹を蹴られた。
 力のないお嬢様の蹴りはあまり痛くないけれど、踏まれたお腹がものすごく痛い……。
 でも、ここで折れるわけにはいかないわ。

「いい加減にっ、約束しないっ!」
「無理なものは無理なんです!」

 私が強く言うと、アーシャ様の蹴りが止まった。
 肩を上下させているアーシャ様は取り巻きと小声で相談を始めた。

 ……蹴るのに疲れたのかしら?

「レシア様、そろそろ折れた方がいいですよ。アーシャ様のする事はレシア様が想像していることよりも遥かに辛いですから」
「警告ありがとう。でも、限界まで耐えるわ」

 今のは私に諦めさせるための作戦だと思った。だから、折れる気は無いと伝えてみた。

 直後、アーシャ様が私のお腹に足を振り下ろしてきた。それも何回も。
 これ以上耐えられなくなった私は覚悟を決めた。

「分かりました、約束します……」

 私がそう口にするとアーシャ様は笑みを浮かべ、

「聞いていまして? レシア様はエル様に故意に粗相をするそうよ」

 満足そうにそう口にした。
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