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6. 大怪我でした

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 あの後、無事に解放された私はふらつきながら馬車へと戻っていた。
 お腹や腕から血が滲んでいるけれど、一応は無事だ。

「お嬢様! 大丈夫ですか⁉︎」
「一応大丈夫よ……」
「お嬢様、それは大丈夫とは言いませんよ。とにかく急いで戻りますよ」

 ものすごく焦った様子の御者さんに馬車に押し込まれ、そのまま家に向かった。

 その途中、少しずつ血の気が引いているのに気がついた。
 そして、馬車が家に着いた頃には自分で歩くのもやっとな状態になっていた。

 大して血も出ていないのに、私は不思議でしょうがない。
 ふらつきながらも玄関に入ると、視界が傾いた。

「お嬢様!」
「レシア! しっかりして!」

 倒れかけていたところを階段から文字通り魔法を使って飛んできたお姉様に支えられて倒れずに済んだ。

「お医者様を呼んで!」
「はいっ!」

 お姉様の指示で侍女さんが廊下を駆けていく。
 ちなみに、お医者様は屋敷に住んでいるから呼べばすぐに来てくれる。

 それから少ししてお兄様が階段から降りてきた。
 そして私の方を見て緊張した面持ちになった。

「レシア、歩けるか?」
「一応歩けるわ……」
「何言ってるの! 今倒れそうになったのに!」

 私達の家族は普段堅苦しい会話はしないから、お兄様が相手でも敬語は使わない。お父様でも然り。
 他所の家だと家族でも敬語を使ったりするみたいだけど。

「部屋まで運ぶよ。レシア、少し失礼するね」

 そんな言葉の後、あっという間にお姫様抱っこをされてしまった。
 恥ずかしいけれど、まともに歩けないのは事実だから成り行きに身を任せることにした。

「お兄様、今の私どんな感じ?」
「真っ青だから驚いたよ。一体何をされたんだ?」

 お兄様ーーハイト・アレオスは心配そうに私の顔を覗き込んできた。
 これが恋する相手にされたものならドキドキしたと思うけど、実の兄に何か思うことは特にない。

「アーシャ様にお腹とか踏まれて……」
「それはまずいな……」

 この時の私は何がまずかったのか、理解できていなかった。

   ☆ ☆ ☆

「これで大丈夫でしょう。今日いっぱいは安静にしていてください。では、失礼いたします」

 私の治療をしてくれたお医者様は恭しく頭を下げると、部屋を後にした。

 お医者様の話だと、私の傷は思ってた以上に酷かったらしい。
 お腹の中で大出血が起きていたと聞いた時は寒気がしたわ。

 ちなみに、そんな傷でも魔法で1分もすれば治る。
 私も治癒魔法は使えるけど、お医者様みたいに上手くはないから自分で治せないのよね。跡が残っちゃうから。

「あ、アイセア様にお返事を書かないと……」
「「今は寝てなさい!」」
 
 書きそびれていた手紙を書くために起き上がろうとしたらお姉様とお兄様に全力で止められた。
 アイセア様、事情を話せば許してくれるよね……?
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