悪役令嬢に嵌められてしまったので、破滅に追い込んで平穏に過ごそうと思います!

八代奏多

文字の大きさ
2 / 24

2. 届けられた脅迫状

しおりを挟む
 社交界デビューを迎えてから1週間、何かをされるかもしれない恐怖と戦いながらもいつも通りの日常を送っていた。

 パーティーの時に私を物凄い形相で睨んできたアーシャ様から毎日のようにお茶会の招待状が届いているけれど、やんわりとお断りしている。
 行けば何か良くないことをされるのは分かり切っているから。


「お嬢様、ルヴィクさんが探していましたよ」

 暇な時間に屋敷の掃除を手伝っていると、洗濯物を抱えて通りかかった侍女さんに声をかけられた。

「急ぎかしら? ごめんなさい、ちょっと探してくるわ」

 一緒に掃除をしている侍女さんに断りを入れてから、執事長のルヴィクさんを探しに向かった。

 ルヴィクさんは普段執務室にいるので、今もそこにいると信じて私は廊下を進む。
 するとすぐに、ルヴィクさんの姿を廊下の向こうに見つけたので、慌てて声をかけた。

「ルヴィクさん! 私を探していると聞いたのだけど」
「お嬢様、ちょうど良かったです。
 お手紙が届いております。こちらは早急に返事が欲しいとの事でした」

 封筒を私に差し出しながらそう口にするルヴィクさん。

「分かったわ。ありがとう」

 自分の部屋に戻って中身を確かめると、1つはアイセアから、もう1つはアーシャ様からだと分かった。
 アイセアからはお茶会の誘いだったから、予定を確認してから返事を書こうと思う。

 アーシャ様からの手紙を見てみると、私は絶望のあまり固まってしまった。

「なにこれ……」
「お嬢様! 大丈夫ですか⁉︎」
「ええ、大丈夫よ……」

 私の顔が青くなったのか、私付き侍女のサラさんが駆け寄って来た。

 アーシャ様からの手紙はそれほどまでに酷かった。
 それは脅迫状でしかなかったから。

 内容は……

『先日の王宮パーティーでのこと、覚えていますわよね?
 初めて社交界に参加した分際でわたくしのエルワード様を奪おうとした事は許せませんわ。

 明日、私のお茶会がありますの。そこで罪を認めて謝罪しなさい。
 もしも明日のお茶会に来なければ社交界に二度と出られない体にしますわよ!
 分かったら今日中に返事を出しなさい!』

 ……という酷いものだった。

 アイセアから聞いた話によると、この類の脅迫状が届いてから謝罪しに行くと何かしらの理不尽な約束をさせられるのだという。
 だから行きたくないのだけれど、相手は公爵令嬢たから断るわけにはいかない。

「お嬢様、そんなに酷いお手紙なのですか?」
「ええ。読んでみる?」
「では……」
 
 リサさんが脅迫状を読んでいる間にささっと返事を書く私。

 今みたいに困った時はお母様に相談するように言われているのだけれど、昨日からお父様と領地に行っているから相談は出来ない。
 それなら家族に迷惑がかからないように立ち回りたいから、危険を覚悟の上でアーシャ様のお茶会に参加することにした。

「これをアーシャ様のところに今日中に届くように頼んでもらえるかしら?」
「畏まりました。行かれるのですね……」
「ええ、皆に迷惑はかけられないもの。少し気晴らしに中庭に出てくるわ」

 私はそれだけを言って庭に向かった。
 他のことを考える余裕なんて今は全くないから……。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。 他小説サイトにも投稿しています。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。

パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

処理中です...