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3. 絶体絶命
もうこれ以上は後ろに下がれない。
そんな絶望的状況でも、ナイフを持ったシエルは近付いてくる。
「だから……殿下にお姉様のことを忘れてもらって、私を見てもらうためにも死んでもらうわ」
誰か、助けて……!
そう叫ぼうとしたが、声が出ない。
抵抗しようとしても、恐怖で身体が言うことを聞かない。
そんな状況に、ソフィアの表情は絶望に染まっていった。
「声を上げようとしても無駄よ? 呪いで大声は出せないようにしたから」
(そんな恐ろしいことが出来るの!?)
大声限定で喋れなくする。そんな意味不明な力に、彼女は驚くことしかできなかった。
「私を殺したら絶対にばれるわよ?」
「心配しなくても大丈夫よ。正直になったお姉様の遺書があれば、誰も疑わないもの」
そんな言葉と共に一枚の紙が差し出される。
そこには、ソフィアの筆跡に似せた字で文章が書かれていて……
「そういうことだから、諦めて?」
……天使のような笑みを浮かべて、シエルが微笑んだ。
ソフィアには悪魔の笑みにしか見えないが、本当に可愛らしい笑みだった。それが余計に恐ろしく見えてしまう。
(早く逃げないと殺される……!)
そう思ってシエルを突飛ばそうとしとするソフィアだったが、突然ドサリと床に崩れ落ちた。
身体に力が入らなくなってしまったのだ。
「何を……したの……?」
「呪いの力ってすごいのね」
床に倒れるソフィアにそんな声がかけられる。
「呪い……?」
呪い――呪術と言えば、数百年前に法で禁止されてからは衰退したというのは有名な話だ。使える人間もこの世にはいないとされている。
だから、何故シエルが呪術を使えているのかソフィアには分からなかった。
「その絶望した顔が見たかったのよね。所作が綺麗で、容姿も綺麗。完璧令嬢だなんて言われてたお姉様にこの嬉しさが分かるかしら?」
「嫉妬してたのね……」
「確かに嫉妬していたわ。お姉様のもの、全部ほしかったわ。
大体私のものになったけど、殿下だけは私のものになってないのよね」
どうして怒りを向けられているのか。どうしたら私を殺すという選択になるのか。
今のシエルの行動は全く理解できなかった。理解したくなかった。
だからと言って、説得を諦める訳にはいかない。
「私を殺す以外にも方法はあるわ」
「言ってみて?」
「ちゃんと殿下と向き合って、心を掴めばいいのよ」
普通なら、関係を築いていこうとするはず。だから、ソフィアはそういう提案をした。
しかし……
「面倒だから嫌よ」
……帰ってきたのは、そんな言葉だった。
「……お姉様が死ねば簡単に全部私のものになるの。だから死んで頂戴」
ついにナイフが振り下ろされる。
そして……
ドスッ!
……そんな鈍い音と共に、ソフィアの腹部にナイフが突き刺さってしまった。
「うっ……」
「意外と簡単に刺さるのね。力、入れすぎたかしら?」
そんなことを言いながら返り血を拭うシエル。
ソフィアの手をとるとナイフの柄を掴ませて、遺言として書いた紙を机の上に置いた。
もちろん、ソフィアは抵抗しようとした。
しかし、身体に全く力が入らない今の状況では何もできなかった。
「さようなら、お姉様」
パタンと音を立てて、扉が閉められる。
(……まだ生きてる。
だったら、手はあるわ)
治癒魔法。これを使えば、出血を抑えられる。ソフィアはすぐに魔法を発動しようとしたが……。
どういうわけか、何も起こらなかった。
「こんな死に方は嫌よ……誰か助けて……」
かすれた声で助けを求めたけど、誰も来ることは無くて。
ソフィア・ハーグレイの十八年の生涯は幕を閉じてしまった。
◇
――はずだった。
しかし……次に目を開けると、見慣れた天井が視界に入った。
そんな絶望的状況でも、ナイフを持ったシエルは近付いてくる。
「だから……殿下にお姉様のことを忘れてもらって、私を見てもらうためにも死んでもらうわ」
誰か、助けて……!
そう叫ぼうとしたが、声が出ない。
抵抗しようとしても、恐怖で身体が言うことを聞かない。
そんな状況に、ソフィアの表情は絶望に染まっていった。
「声を上げようとしても無駄よ? 呪いで大声は出せないようにしたから」
(そんな恐ろしいことが出来るの!?)
大声限定で喋れなくする。そんな意味不明な力に、彼女は驚くことしかできなかった。
「私を殺したら絶対にばれるわよ?」
「心配しなくても大丈夫よ。正直になったお姉様の遺書があれば、誰も疑わないもの」
そんな言葉と共に一枚の紙が差し出される。
そこには、ソフィアの筆跡に似せた字で文章が書かれていて……
「そういうことだから、諦めて?」
……天使のような笑みを浮かべて、シエルが微笑んだ。
ソフィアには悪魔の笑みにしか見えないが、本当に可愛らしい笑みだった。それが余計に恐ろしく見えてしまう。
(早く逃げないと殺される……!)
そう思ってシエルを突飛ばそうとしとするソフィアだったが、突然ドサリと床に崩れ落ちた。
身体に力が入らなくなってしまったのだ。
「何を……したの……?」
「呪いの力ってすごいのね」
床に倒れるソフィアにそんな声がかけられる。
「呪い……?」
呪い――呪術と言えば、数百年前に法で禁止されてからは衰退したというのは有名な話だ。使える人間もこの世にはいないとされている。
だから、何故シエルが呪術を使えているのかソフィアには分からなかった。
「その絶望した顔が見たかったのよね。所作が綺麗で、容姿も綺麗。完璧令嬢だなんて言われてたお姉様にこの嬉しさが分かるかしら?」
「嫉妬してたのね……」
「確かに嫉妬していたわ。お姉様のもの、全部ほしかったわ。
大体私のものになったけど、殿下だけは私のものになってないのよね」
どうして怒りを向けられているのか。どうしたら私を殺すという選択になるのか。
今のシエルの行動は全く理解できなかった。理解したくなかった。
だからと言って、説得を諦める訳にはいかない。
「私を殺す以外にも方法はあるわ」
「言ってみて?」
「ちゃんと殿下と向き合って、心を掴めばいいのよ」
普通なら、関係を築いていこうとするはず。だから、ソフィアはそういう提案をした。
しかし……
「面倒だから嫌よ」
……帰ってきたのは、そんな言葉だった。
「……お姉様が死ねば簡単に全部私のものになるの。だから死んで頂戴」
ついにナイフが振り下ろされる。
そして……
ドスッ!
……そんな鈍い音と共に、ソフィアの腹部にナイフが突き刺さってしまった。
「うっ……」
「意外と簡単に刺さるのね。力、入れすぎたかしら?」
そんなことを言いながら返り血を拭うシエル。
ソフィアの手をとるとナイフの柄を掴ませて、遺言として書いた紙を机の上に置いた。
もちろん、ソフィアは抵抗しようとした。
しかし、身体に全く力が入らない今の状況では何もできなかった。
「さようなら、お姉様」
パタンと音を立てて、扉が閉められる。
(……まだ生きてる。
だったら、手はあるわ)
治癒魔法。これを使えば、出血を抑えられる。ソフィアはすぐに魔法を発動しようとしたが……。
どういうわけか、何も起こらなかった。
「こんな死に方は嫌よ……誰か助けて……」
かすれた声で助けを求めたけど、誰も来ることは無くて。
ソフィア・ハーグレイの十八年の生涯は幕を閉じてしまった。
◇
――はずだった。
しかし……次に目を開けると、見慣れた天井が視界に入った。
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