今度は悪役目指します! 〜逆行した真面目令嬢は、今度の人生は悪役になって自由に生きる〜

八代奏多

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4. 逆行しました

 飛び起きて、慌てて身体を確認するソフィア。

(うん、ナイフは刺さってないわね。傷口は……治癒魔法を使うと完全に塞がるから、確認しても無駄ね。
 もしかして、助かったのかしら?)

 希望を抱きながら、服をめくって刺されたはずの腹部を見てみたり、血痕を探して部屋を見回してみたり。
 そんな時、隣から声がかけられた。

「おはようございます、お嬢様」
「ええ、おはよう。今日は悲しまないのね……?」

 昨日は散々涙を流していたはずのフィオナを見ながら、そんな言葉を返すソフィア。
 すると、フィオナは不思議そうな表情を浮かべていた。

「何故悲しむのですか? 今日はお嬢様と殿下が婚約の話し合いをされる日ですよ?」
「婚約……? そうだったわね。早く準備しないと」

 慌てて取り繕うソフィア。そんな様子に、間は専属の侍女をしているフィオナが違和感を感じないはずが無かった。

「お嬢様、様子がおかしいですけど……何かあったんですか?」
「ううん、何でもないわ。少し寝ぼけていただけよ」

 慌てて取り繕うソフィア。この時点で、彼女は確信していた。
 どういうわけか、自分が三年前に逆行してしまったということを。

 今日が殺された日のちょうど三年前というわけではない。
 しかし、婚約という言葉を聞いて、具体的な日付は思い出していた。この日から妹シエルによる嫌がらせが始まるという記憶と共に。

「話し合いは何時からだったかしら?」
「昼食後の予定です」
「分かったわ、ありがとう」

 お礼を言いながらベッドを出ると、そのまま衣装部屋へと向かう。
 フィオナは無言で後を追い、ソフィアがドレスを選ぶのを邪魔にならな場所で待っていた。

「今日はこれにするわ」
「分かりました」

 選んだドレスを分かりやすい場所に置くソフィア。同時にフィオナがドレスに合いそうな装飾品を探し始める。
 この流れは、二人が一緒に過ごし始めた時から変わらない。

(シエルのあの行動、やっぱり理解できないわ)

 フィオナが装飾品を探す中、ソフィアは頭を抱えていた。

 シエルの嫉妬や動機については本人の口から説明があったから、なんとか理解できている。
 しかし、姉である自分を殺めるという選択をしたことは、理解できていなかった。

 それ以上に、もっと理解に苦しむものがある。それが呪術の存在だ。
 公爵令嬢という立場上、呪術について教えられる機会はあってはならない。だが、現実としてシエルは呪術を使えていた。
 公には呪術は存在しないものとされているのにも関わらず。

 この点については、妃教育を通して呪術が犯罪組織に残っていることを知らされていたから、なんとか納得することが出来た。

 だから……

(……絶対、裏で何かが動いているわ)

 ……そう結論を出した。

 これが分かったところで行動を起こせるわけでもない。だから、ソフィアは頭を抱え続けた。

 そんなとき、装飾品を漁る音が止んで声がかけられた。
 
「お嬢様、どちらがお好みでしょうか?」
「こっちの方が良いわね」
「分かりました。では、そろそろお着替えの方を始めましょう」
「ええ、お願いするわ」

 そう返事をしながら、フィオナの手を借りつつ着替えを始めるソフィア。

(……今は考えても無駄ね。それよりも、ソフィアに嵌められないようにしないといけないわ)

 でも、どうやって?
 ――答えは分かっている。

 断罪された時のように、人を騙せばいい。そこまで行かなくても、表情を作って悪巧みに周囲の心を動かせばいい。

(今までの私は真面目にって、それをしなかったのよね……。
 でも、今度は失敗しないわ)

 嘘つきには嘘つきで。悪意には悪意で。
 追い出そうとする者は追い出すことで。

 殺すことだけは避けたいけれど……。

 ……絶対に生き延びる。

(まるで悪役ね……。でもいいわ。
 シエルに負けないためなら、なんだってする)

 ――それが今までの理想とは真逆の『悪役令嬢』を目指すことであっても。

 身をフィオナに任せながら、決意を固めるソフィアだった。
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