4 / 10
4. 逆行しました
飛び起きて、慌てて身体を確認するソフィア。
(うん、ナイフは刺さってないわね。傷口は……治癒魔法を使うと完全に塞がるから、確認しても無駄ね。
もしかして、助かったのかしら?)
希望を抱きながら、服をめくって刺されたはずの腹部を見てみたり、血痕を探して部屋を見回してみたり。
そんな時、隣から声がかけられた。
「おはようございます、お嬢様」
「ええ、おはよう。今日は悲しまないのね……?」
昨日は散々涙を流していたはずのフィオナを見ながら、そんな言葉を返すソフィア。
すると、フィオナは不思議そうな表情を浮かべていた。
「何故悲しむのですか? 今日はお嬢様と殿下が婚約の話し合いをされる日ですよ?」
「婚約……? そうだったわね。早く準備しないと」
慌てて取り繕うソフィア。そんな様子に、五年間は専属の侍女をしているフィオナが違和感を感じないはずが無かった。
「お嬢様、様子がおかしいですけど……何かあったんですか?」
「ううん、何でもないわ。少し寝ぼけていただけよ」
慌てて取り繕うソフィア。この時点で、彼女は確信していた。
どういうわけか、自分が三年前に逆行してしまったということを。
今日が殺された日のちょうど三年前というわけではない。
しかし、婚約という言葉を聞いて、具体的な日付は思い出していた。この日から妹シエルによる嫌がらせが始まるという記憶と共に。
「話し合いは何時からだったかしら?」
「昼食後の予定です」
「分かったわ、ありがとう」
お礼を言いながらベッドを出ると、そのまま衣装部屋へと向かう。
フィオナは無言で後を追い、ソフィアがドレスを選ぶのを邪魔にならな場所で待っていた。
「今日はこれにするわ」
「分かりました」
選んだドレスを分かりやすい場所に置くソフィア。同時にフィオナがドレスに合いそうな装飾品を探し始める。
この流れは、二人が一緒に過ごし始めた時から変わらない。
(シエルのあの行動、やっぱり理解できないわ)
フィオナが装飾品を探す中、ソフィアは頭を抱えていた。
シエルの嫉妬や動機については本人の口から説明があったから、なんとか理解できている。
しかし、姉である自分を殺めるという選択をしたことは、理解できていなかった。
それ以上に、もっと理解に苦しむものがある。それが呪術の存在だ。
公爵令嬢という立場上、呪術について教えられる機会はあってはならない。だが、現実としてシエルは呪術を使えていた。
公には呪術は存在しないものとされているのにも関わらず。
この点については、妃教育を通して呪術が犯罪組織に残っていることを知らされていたから、なんとか納得することが出来た。
だから……
(……絶対、裏で何かが動いているわ)
……そう結論を出した。
これが分かったところで行動を起こせるわけでもない。だから、ソフィアは頭を抱え続けた。
そんなとき、装飾品を漁る音が止んで声がかけられた。
「お嬢様、どちらがお好みでしょうか?」
「こっちの方が良いわね」
「分かりました。では、そろそろお着替えの方を始めましょう」
「ええ、お願いするわ」
そう返事をしながら、フィオナの手を借りつつ着替えを始めるソフィア。
(……今は考えても無駄ね。それよりも、ソフィアに嵌められないようにしないといけないわ)
でも、どうやって?
――答えは分かっている。
断罪された時のように、人を騙せばいい。そこまで行かなくても、表情を作って悪巧みに周囲の心を動かせばいい。
(今までの私は真面目にって、それをしなかったのよね……。
でも、今度は失敗しないわ)
嘘つきには嘘つきで。悪意には悪意で。
追い出そうとする者は追い出すことで。
殺すことだけは避けたいけれど……。
……絶対に生き延びる。
(まるで悪役ね……。でもいいわ。
シエルに負けないためなら、なんだってする)
――それが今までの理想とは真逆の『悪役令嬢』を目指すことであっても。
身をフィオナに任せながら、決意を固めるソフィアだった。
(うん、ナイフは刺さってないわね。傷口は……治癒魔法を使うと完全に塞がるから、確認しても無駄ね。
もしかして、助かったのかしら?)
希望を抱きながら、服をめくって刺されたはずの腹部を見てみたり、血痕を探して部屋を見回してみたり。
そんな時、隣から声がかけられた。
「おはようございます、お嬢様」
「ええ、おはよう。今日は悲しまないのね……?」
昨日は散々涙を流していたはずのフィオナを見ながら、そんな言葉を返すソフィア。
すると、フィオナは不思議そうな表情を浮かべていた。
「何故悲しむのですか? 今日はお嬢様と殿下が婚約の話し合いをされる日ですよ?」
「婚約……? そうだったわね。早く準備しないと」
慌てて取り繕うソフィア。そんな様子に、五年間は専属の侍女をしているフィオナが違和感を感じないはずが無かった。
「お嬢様、様子がおかしいですけど……何かあったんですか?」
「ううん、何でもないわ。少し寝ぼけていただけよ」
慌てて取り繕うソフィア。この時点で、彼女は確信していた。
どういうわけか、自分が三年前に逆行してしまったということを。
今日が殺された日のちょうど三年前というわけではない。
しかし、婚約という言葉を聞いて、具体的な日付は思い出していた。この日から妹シエルによる嫌がらせが始まるという記憶と共に。
「話し合いは何時からだったかしら?」
「昼食後の予定です」
「分かったわ、ありがとう」
お礼を言いながらベッドを出ると、そのまま衣装部屋へと向かう。
フィオナは無言で後を追い、ソフィアがドレスを選ぶのを邪魔にならな場所で待っていた。
「今日はこれにするわ」
「分かりました」
選んだドレスを分かりやすい場所に置くソフィア。同時にフィオナがドレスに合いそうな装飾品を探し始める。
この流れは、二人が一緒に過ごし始めた時から変わらない。
(シエルのあの行動、やっぱり理解できないわ)
フィオナが装飾品を探す中、ソフィアは頭を抱えていた。
シエルの嫉妬や動機については本人の口から説明があったから、なんとか理解できている。
しかし、姉である自分を殺めるという選択をしたことは、理解できていなかった。
それ以上に、もっと理解に苦しむものがある。それが呪術の存在だ。
公爵令嬢という立場上、呪術について教えられる機会はあってはならない。だが、現実としてシエルは呪術を使えていた。
公には呪術は存在しないものとされているのにも関わらず。
この点については、妃教育を通して呪術が犯罪組織に残っていることを知らされていたから、なんとか納得することが出来た。
だから……
(……絶対、裏で何かが動いているわ)
……そう結論を出した。
これが分かったところで行動を起こせるわけでもない。だから、ソフィアは頭を抱え続けた。
そんなとき、装飾品を漁る音が止んで声がかけられた。
「お嬢様、どちらがお好みでしょうか?」
「こっちの方が良いわね」
「分かりました。では、そろそろお着替えの方を始めましょう」
「ええ、お願いするわ」
そう返事をしながら、フィオナの手を借りつつ着替えを始めるソフィア。
(……今は考えても無駄ね。それよりも、ソフィアに嵌められないようにしないといけないわ)
でも、どうやって?
――答えは分かっている。
断罪された時のように、人を騙せばいい。そこまで行かなくても、表情を作って悪巧みに周囲の心を動かせばいい。
(今までの私は真面目にって、それをしなかったのよね……。
でも、今度は失敗しないわ)
嘘つきには嘘つきで。悪意には悪意で。
追い出そうとする者は追い出すことで。
殺すことだけは避けたいけれど……。
……絶対に生き延びる。
(まるで悪役ね……。でもいいわ。
シエルに負けないためなら、なんだってする)
――それが今までの理想とは真逆の『悪役令嬢』を目指すことであっても。
身をフィオナに任せながら、決意を固めるソフィアだった。
あなたにおすすめの小説
義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜
阿里
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。
「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」
本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。
けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。
おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。
貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。
「ふふ、気づいた時には遅いのよ」
優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。
ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇!
勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。
婚約破棄された令嬢、気づけば王族総出で奪い合われています
ゆっこ
恋愛
「――よって、リリアーナ・セレスト嬢との婚約は破棄する!」
王城の大広間に王太子アレクシスの声が響いた瞬間、私は静かにスカートをつまみ上げて一礼した。
「かしこまりました、殿下。どうか末永くお幸せに」
本心ではない。けれど、こう言うしかなかった。
王太子は私を見下ろし、勝ち誇ったように笑った。
「お前のような地味で役に立たない女より、フローラの方が相応しい。彼女は聖女として覚醒したのだ!」
婚約破棄されたけど、どうして王子が泣きながら戻ってくるんですか?
ほーみ
恋愛
「――よって、リリアーヌ・アルフェン嬢との婚約は、ここに破棄とする!」
華やかな夜会の真っ最中。
王子の口から堂々と告げられたその言葉に、場は静まり返った。
「……あ、そうなんですね」
私はにこやかにワイングラスを口元に運ぶ。周囲の貴族たちがどよめく中、口をぽかんと開けたままの王子に、私は笑顔でさらに一言添えた。
「で? 次のご予定は?」
「……は?」
【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない
堀 和三盆
恋愛
一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。
信じられなかった。
母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。
そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。
日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。