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8. 意外と頑丈
その日の夕方、ソフィアはとある本を読んでいた。そのタイトルは『悪役令嬢の日記』で、悪役を目指す上で何か参考になるかもしれないと、ソフィアが書庫から引っ張り出してきたものだ。
ちなみに、これは公爵夫人が読んでいたものとは違う。
「お嬢様、そんな本一体どこから……」
しばらく放置していた装飾品の整理を終えて戻ってきたところ、見覚えのある本を目にしたフィオナが問いかける。
「書庫にあったから持ってきたのよ」
「それ、庶民向けの本ですよ?」
「そうだったの? でも、それにしては良く出来てるのよね……」
読むのを中断し、驚いたといった様子で口にするソフィア。
公爵令嬢として社交界で三年以上過ごしてきた彼女の目で見ても、この物語で描かれている社交界は良く出来ていた。
高位の貴族が書いたかのではないかと思えるほどに。
「お嬢様がそう言うのなら、間違いありませんね!」
「一応言っておくけど、私はそこまで完璧ではないのよ?」
フィオナの言葉にそう突っ込むソフィア。
そんな時だった。
「ソフィアお嬢様、お話ししたいことがあります」
「分かったわ。少し待ってて頂戴」
聞き覚えのある男性の声に、急いで本を隠すソフィア。
そして自ら扉の方へと向かい、会話ができるように開いた。
「話したいことって何かしら?」
「明日の予定が変更になりましたので、お伝えしに参りました」
そう口にする執事。彼はサリアスといい、前回ではソフィアのことを信用してくれていた数少ない味方だった人物だ。
だから、ソフィアは彼のことをかなり信頼している。
「分かったわ。何が変わったのかしら?」
「明日の夜会ですが、主催の侯爵様が風邪を召されたために中止になりました。以上になります」
「分かったわ。ありがとう」
「では、失礼いたします」
恭しく頭を下げ、この場を後にする執事を見送ってから部屋の扉を閉めようとするソフィア。
しかし、その扉が閉まり切ることはなかった。
「お姉様、待ってください!」
「何か用かしら?」
「このドレスに合う装飾品がなくて……お姉様のもので試させていただきたいのです」
懲りずに装飾品を漁りに来たシエルにどう返せばいいのか、ソフィアは逡巡した。
というのも、前回の人生ではシエルの来訪は起きていなかったのだ。
「ここで付けてみるだけなら良いわよ、と言いたいところなのだけれど……先に貸しているものを返しなさい」
シエルは無かったことにしようとしたのかもしれないが、彼女がソフィアから借りている装飾品の返却期限は今日なのだ。
ちなみに、この期限はシエルがでっち上げたものだから、本来は数日早いり
「そ、そのことなのですけど……」
口籠るシエル。それを見て、ソフィアだけでなくフィオナも訝しげな表情を浮かべた。
「まさか返せないの?」
「はい……。ごめんなさい、落としたら割れてしまって」
「貴女、また嘘をついているわね?」
先週ソフィアが貸したという装飾品はそれほど重くなく、宝石だって簡単に割れてしまうほど脆くはない。
これはフィオナに確認済みだから、間違いないとソフィアは確信していた。
「ソフィアお嬢様、発言してもよろしいでしょうか?」
「ええ、大丈夫よ」
フィオナの申し出を快諾するソフィア。
するとフィオナは、鍵付きの宝石箱を持ってきて、先週貸したものとは色違いの髪飾りを取り出した。
そしてこんなことを耳打ちする。
「壊れてしまっても大丈夫ですか?」
「問題ないけれど……」
そう返しながら、フィオナの行動を見守るソフィア。
シエルもまた、何をするのかと不思議そうに見ていた。
そして……フィオナは大きく振りかぶって、ありったけの力で髪飾りを床に叩きつけた。
少々……いや、かなり雑に扱っても壊れない安物の装飾品の頑丈さに感謝しているからの行動だった。
「なっ……」
フィオナの行動は予想していたのに驚いてしまうソフィア。
一方のシエルはというと、ポカンと口を開けて固まっていた。
ちなみに、これは公爵夫人が読んでいたものとは違う。
「お嬢様、そんな本一体どこから……」
しばらく放置していた装飾品の整理を終えて戻ってきたところ、見覚えのある本を目にしたフィオナが問いかける。
「書庫にあったから持ってきたのよ」
「それ、庶民向けの本ですよ?」
「そうだったの? でも、それにしては良く出来てるのよね……」
読むのを中断し、驚いたといった様子で口にするソフィア。
公爵令嬢として社交界で三年以上過ごしてきた彼女の目で見ても、この物語で描かれている社交界は良く出来ていた。
高位の貴族が書いたかのではないかと思えるほどに。
「お嬢様がそう言うのなら、間違いありませんね!」
「一応言っておくけど、私はそこまで完璧ではないのよ?」
フィオナの言葉にそう突っ込むソフィア。
そんな時だった。
「ソフィアお嬢様、お話ししたいことがあります」
「分かったわ。少し待ってて頂戴」
聞き覚えのある男性の声に、急いで本を隠すソフィア。
そして自ら扉の方へと向かい、会話ができるように開いた。
「話したいことって何かしら?」
「明日の予定が変更になりましたので、お伝えしに参りました」
そう口にする執事。彼はサリアスといい、前回ではソフィアのことを信用してくれていた数少ない味方だった人物だ。
だから、ソフィアは彼のことをかなり信頼している。
「分かったわ。何が変わったのかしら?」
「明日の夜会ですが、主催の侯爵様が風邪を召されたために中止になりました。以上になります」
「分かったわ。ありがとう」
「では、失礼いたします」
恭しく頭を下げ、この場を後にする執事を見送ってから部屋の扉を閉めようとするソフィア。
しかし、その扉が閉まり切ることはなかった。
「お姉様、待ってください!」
「何か用かしら?」
「このドレスに合う装飾品がなくて……お姉様のもので試させていただきたいのです」
懲りずに装飾品を漁りに来たシエルにどう返せばいいのか、ソフィアは逡巡した。
というのも、前回の人生ではシエルの来訪は起きていなかったのだ。
「ここで付けてみるだけなら良いわよ、と言いたいところなのだけれど……先に貸しているものを返しなさい」
シエルは無かったことにしようとしたのかもしれないが、彼女がソフィアから借りている装飾品の返却期限は今日なのだ。
ちなみに、この期限はシエルがでっち上げたものだから、本来は数日早いり
「そ、そのことなのですけど……」
口籠るシエル。それを見て、ソフィアだけでなくフィオナも訝しげな表情を浮かべた。
「まさか返せないの?」
「はい……。ごめんなさい、落としたら割れてしまって」
「貴女、また嘘をついているわね?」
先週ソフィアが貸したという装飾品はそれほど重くなく、宝石だって簡単に割れてしまうほど脆くはない。
これはフィオナに確認済みだから、間違いないとソフィアは確信していた。
「ソフィアお嬢様、発言してもよろしいでしょうか?」
「ええ、大丈夫よ」
フィオナの申し出を快諾するソフィア。
するとフィオナは、鍵付きの宝石箱を持ってきて、先週貸したものとは色違いの髪飾りを取り出した。
そしてこんなことを耳打ちする。
「壊れてしまっても大丈夫ですか?」
「問題ないけれど……」
そう返しながら、フィオナの行動を見守るソフィア。
シエルもまた、何をするのかと不思議そうに見ていた。
そして……フィオナは大きく振りかぶって、ありったけの力で髪飾りを床に叩きつけた。
少々……いや、かなり雑に扱っても壊れない安物の装飾品の頑丈さに感謝しているからの行動だった。
「なっ……」
フィオナの行動は予想していたのに驚いてしまうソフィア。
一方のシエルはというと、ポカンと口を開けて固まっていた。
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