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9. 妹の計画
「力入れすぎよ。絨毯に穴が開いてしまうわ」
見事に絨毯に突き刺さってしまった無傷の髪飾りを引き抜きながら、そんなことを口にするソフィア。
その言葉に、フィオナは申し訳なさそうに頭を下げた。
「ごめんなさい。でも、髪飾りの頑丈さの証明にはなりましたよ!」
「そうね。……というわけだから、落として割れることはないと思うのよね?」
流石にこの状況を想定した嘘は用意できておらず、シエルは黙り込んでしまった。
それを見て、ソフィアはとある予想をしてしまった。
整理整頓されている公爵邸では紛失の可能性は低い。となると、残されている可能性はひとつだけだった。
「まさか……売ったの?」
「っ……!」
どうやら図星だったらしく、ピクリと動くシエル。
それを見て、ソフィアは呆れてしまった。
「正直に言ってくれれば、怒らないわ」
「はい、売ってしまいましたわ」
「分かったわ。そういうことなら、もう二度と貴女に物は貸さないから。分かったら部屋に戻りなさい」
シエルを真っ直ぐ見ながら、いつもより強い口調でソフィアは口にする。
それに対して、シエルは意外にも冷静だった。
「分かりましたわ……」
ソフィアを睨みながら踵を返し、そのまま来た廊下を戻っていく。
その姿はどう見ても不機嫌そのものだった。
◇
「お嬢様、上手くいかなかったんですね」
不機嫌そうに戻ってくるシエルを見て、そう声をかける侍女。
「ええ。だからもう売る計画は無理そうよ。売ったこともバレてしまったわ」
「そうですか。では、お父さんに報告しておきますね」
シエルが考えていた計画。それは、姉の装飾品を奪って売ることで、自分が好きな装飾品を買うというものだ。
幸いなことに、専属侍女の家が商家だったために売ることのハードルは低い。
何故このような考えになったのか。それは少し前に遡る。
(お姉様ばかりアクセサリーを買ってもらえるなんて、ずるいわ……)
そう思って両親に装飾品をねだったのだ。しかし、それが受け入れられることはなかった。
「最低限のものは与えているだろう。まだデビュタントもしていないんだから、必要ないだろう」
実際にソフィアが装飾品を大量に持つようになったのも、数ヶ月前のデビュタントの準備をし始めてからだった。
しかし、着飾る美しい姉を見て、シエルは羨ましく感じていた。「私も着飾りたい」と、思わないはずがなかった。
そこで、この計画を思いついたのだった。
失敗してしまったが。
「なんでお姉様ばかり……」
そう独りごちるシエルは姉を妬ましく思っていた。
マナーやダンスのレッスンでいつも褒められ、学院での成績もいつも上位。整っている容姿も相まって、皆が絶賛している。
そんな姉の姿に羨ましく思うのはいつものこと。でも、今日は少し違った。
(どうすれば奪えるのかしら?)
そんな風に思うようになっていた。
◇
翌朝。
ソフィアはシエルと共に馬車に揺られていた。これから学院に向かうためだ。
そこに会話が交わされることはないが、ソフィアは何も不思議には感じていなかった。
昨日から空気が悪くなっているのは確かなのだが、それ以前に逆行前から関係は最悪だったのだ。
そんな二人だが、今は色違いの服を身に纏っている。学院の制服だからだ。
ソフィアはのものは明るい若草色のラインがあしらわれたシンプルなドレス、シエルは濃い緑色のラインがあしらわれている。
あまり目立たない差ではあるが、それだけでソフィアのものの方が少しだけ華やかに見える。
シエルはそんな姉の制服を少しだけ羨んでいた。
年が変われば、学年が変わるに合わせて色も変わるのだが……。
「到着いたしました」
そう声がかけられ、扉が開けられる。
二人は護衛の手を借りて馬車を降り、お礼を言ってから学院の建物に入った。
そして階段を登り始めた時だった。
シエルの身体が後ろに傾き始めてしまった。
慌ててソフィアが手を伸ばすが間に合わない。シエルはそのまま音を立てて倒れてしまった。
そんな事が起これば周囲の注目を受けるのは当然で、何人かが駆け寄ってきた。
そして……
「大丈夫ですか!?」
「お姉様、突き飛ばすなんてひどいですわ……」
侯爵令息の手を借り立ち上がったシエルは、涙を浮かべながらそんなことを口にした。
見事に絨毯に突き刺さってしまった無傷の髪飾りを引き抜きながら、そんなことを口にするソフィア。
その言葉に、フィオナは申し訳なさそうに頭を下げた。
「ごめんなさい。でも、髪飾りの頑丈さの証明にはなりましたよ!」
「そうね。……というわけだから、落として割れることはないと思うのよね?」
流石にこの状況を想定した嘘は用意できておらず、シエルは黙り込んでしまった。
それを見て、ソフィアはとある予想をしてしまった。
整理整頓されている公爵邸では紛失の可能性は低い。となると、残されている可能性はひとつだけだった。
「まさか……売ったの?」
「っ……!」
どうやら図星だったらしく、ピクリと動くシエル。
それを見て、ソフィアは呆れてしまった。
「正直に言ってくれれば、怒らないわ」
「はい、売ってしまいましたわ」
「分かったわ。そういうことなら、もう二度と貴女に物は貸さないから。分かったら部屋に戻りなさい」
シエルを真っ直ぐ見ながら、いつもより強い口調でソフィアは口にする。
それに対して、シエルは意外にも冷静だった。
「分かりましたわ……」
ソフィアを睨みながら踵を返し、そのまま来た廊下を戻っていく。
その姿はどう見ても不機嫌そのものだった。
◇
「お嬢様、上手くいかなかったんですね」
不機嫌そうに戻ってくるシエルを見て、そう声をかける侍女。
「ええ。だからもう売る計画は無理そうよ。売ったこともバレてしまったわ」
「そうですか。では、お父さんに報告しておきますね」
シエルが考えていた計画。それは、姉の装飾品を奪って売ることで、自分が好きな装飾品を買うというものだ。
幸いなことに、専属侍女の家が商家だったために売ることのハードルは低い。
何故このような考えになったのか。それは少し前に遡る。
(お姉様ばかりアクセサリーを買ってもらえるなんて、ずるいわ……)
そう思って両親に装飾品をねだったのだ。しかし、それが受け入れられることはなかった。
「最低限のものは与えているだろう。まだデビュタントもしていないんだから、必要ないだろう」
実際にソフィアが装飾品を大量に持つようになったのも、数ヶ月前のデビュタントの準備をし始めてからだった。
しかし、着飾る美しい姉を見て、シエルは羨ましく感じていた。「私も着飾りたい」と、思わないはずがなかった。
そこで、この計画を思いついたのだった。
失敗してしまったが。
「なんでお姉様ばかり……」
そう独りごちるシエルは姉を妬ましく思っていた。
マナーやダンスのレッスンでいつも褒められ、学院での成績もいつも上位。整っている容姿も相まって、皆が絶賛している。
そんな姉の姿に羨ましく思うのはいつものこと。でも、今日は少し違った。
(どうすれば奪えるのかしら?)
そんな風に思うようになっていた。
◇
翌朝。
ソフィアはシエルと共に馬車に揺られていた。これから学院に向かうためだ。
そこに会話が交わされることはないが、ソフィアは何も不思議には感じていなかった。
昨日から空気が悪くなっているのは確かなのだが、それ以前に逆行前から関係は最悪だったのだ。
そんな二人だが、今は色違いの服を身に纏っている。学院の制服だからだ。
ソフィアはのものは明るい若草色のラインがあしらわれたシンプルなドレス、シエルは濃い緑色のラインがあしらわれている。
あまり目立たない差ではあるが、それだけでソフィアのものの方が少しだけ華やかに見える。
シエルはそんな姉の制服を少しだけ羨んでいた。
年が変われば、学年が変わるに合わせて色も変わるのだが……。
「到着いたしました」
そう声がかけられ、扉が開けられる。
二人は護衛の手を借りて馬車を降り、お礼を言ってから学院の建物に入った。
そして階段を登り始めた時だった。
シエルの身体が後ろに傾き始めてしまった。
慌ててソフィアが手を伸ばすが間に合わない。シエルはそのまま音を立てて倒れてしまった。
そんな事が起これば周囲の注目を受けるのは当然で、何人かが駆け寄ってきた。
そして……
「大丈夫ですか!?」
「お姉様、突き飛ばすなんてひどいですわ……」
侯爵令息の手を借り立ち上がったシエルは、涙を浮かべながらそんなことを口にした。
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