半月後に死ぬと告げられたので、今まで苦しんだ分残りの人生は幸せになります!

八代奏多

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10. 余命12日①

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「解答をやめてください」

 そんな声がかけられ、一斉にペンを置く音が響く。
 そして試験官の教授が手早く答案を回収していき、こう口にした。

「お疲れ様でした。今学期の筆記試験は以上になります。
 皆さん、お気をつけてお帰りください」

 この言葉が終わった瞬間、教室は一気に騒がしくなった。
 そして、私は隣の席のシエル様に声をかけられた。

「レティシアさん、今日の試験の答え合わせしませんか?」
「ええ」

 鞄から今日の試験問題を取り出しながら、快く返事をする私。

 シエル様はサウルスタ公爵家の長女で、第二王子殿下との婚約が決まっている。
 そんな立場にいながらも、他人を見下すことはしていなくて、周囲からの人気も高い。

 そんな友人を持てているから、まだ私は恵まれているのかもしれないわね……。

「時間割の順番通りに進めましょう」
「分かりましたわ」

 そう提案され、頷く私。
 既にシエル様も問題を取り出していて、手早く問題を並べた。

 お互いに答えをメモすることは怠っていなくて、答え合わせは滞りなく進んだ。

「レティシアさんと同じで安心しましたわ」
「私もですわ。筆記試験は毎回満点のシエル様と同じで安心しましたわ」

 そう言って、軽くシエル様を持ち上げようとしたのだけど……

「あら、貴女も毎回満点だったと記憶しているのですけど?」

 ……それは出来なかった。
 でも、私達の答え合わせが成立しているのは、私もシエル様も筆記試験は毎回満点だから。

 ちなみに、私達はお互いに必死に努力をしていることを知っているから、妬んだりすることはない。
 でも、周囲からの反感を買うことは多々ある。

「あの2人はまた不正をしたのでしょうか……?」
「私には分かりませんわ……」

 だから、こんな風に根も葉もない噂も流れていた。



 それから1時間、私達はようやく答え合わせを終えた。

「お疲れ様でした」
「レティシアさんこそ、お疲れ様ですわ」

 そんな会話をしながら帰り支度をする私達。
 時計はちょうど夜の7時を過ぎていて、教室に残っているのも私達を含めて数人になっていた。

 準備を終え、揃って廊下に出るとシエル様がこんなことを口にした。

「レティシアさん、良かったらうちに来ませんか?」
「はい……?」

 突然のことに意味が分からず聞き返す私。

「レティシアさんが家でどんな扱いを受けているのか、知ってしまいましたの。
 だから、居ても立っても居られなくなってしまって……。お父様の許可は取ってありますわ」
「少し考えさせてください。今、この場で」

 そう断りを入れ、少しだけ悩んだ。
 そして、決めた。

 酷い性格のお母様がいる屋敷には戻らないと。
 少し考えれば、私が幸せになれない原因がお母様でもあると気付けたのに……なんで気付けなかったのかしら?

「今日からお邪魔してもよろしいでしょうか?」
「ええ、もちろんですわ!」

 そう口にするシエル様。
 それからの私の足取りは軽くて、玄関に着くのはあっという間だった。

 そして、下駄箱を開けた時だった。

 大量の写真が溢れ出してきた。

「なんですの……」
「きっと誰かの悪戯ですわ」

 悪戯だと言いながら、写真を拾い上げるシエル様。
 すると、こんなことを口にした。

「アドルフさん、浮気してましたのね……」
「はい?」

 不思議に思いながら写真を見てみると、全てがアドルフの浮気の証拠写真で、私はしばらくの間固まった。

「手紙が入ってますわよ」

 不意に、そんなことを口にするシエル様。
 私はそれをみるのが恐ろしくて、こうお願いしてみた。

「怖いので読んでいただけませんか?」
「恋文だったらどうしますの?」
「まさか、そんなことあり得ませんわ……」

 私は婚約者がいる身。だから私を狙っている殿方なんていないと思っていた。

「これ、王太子殿下からですわ。ご自身で読むべきですわ」
「え、ええ」

 上質な紙を開いてみると、簡単な文がそこには書かれていた。

『浮気男の証拠写真だ。断罪したいなら、明日のパーティーで母上にこの手紙を渡して欲しい。
 不貞を疑われないよう、俺には話かけないように』

 どうして不貞を疑われると考えたのかしら……?
 主催者の家族と参加者が言葉を交わすことなんて、珍しくないのに……。

「怪しまれる前に回収しますわよ!」

 不思議に思っているとそう言われて、慌てて写真を集める私だった。
 
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