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16. 余命12日⑦
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あれから数時間後、パーティーはお昼前には予定通りお開きとなった。
私達は特に呼び止められることもなく、すぐに公爵邸へと戻ることが出来そうだった。
「レティシアさん、色々言われてましたけど……気分は大丈夫でして?」
「ええ、大丈夫ですわ。もっと酷い暴言を言われると思っていたので、拍子抜けしたくらいですわ」
何を隠そう。アドルフは連行される間、ひたすら私への暴言を吐き続けていた。
ボロボロと涙を流しながら、それはもうみっともなく。
彼とは完全に他人になった後だから、これによって私が批判されることは無いはずなのだけど……こんなのと婚約していただなんて知りたくはなかった。
嫌だったのはそれくらいで、暴言については何も思わなかった。
「……強いて言えば、あんなのが婚約者だったことが悲しかったくらいですわ」
「あれは衝撃でしたわ……」
気まずい空気が馬車の中に流れているけれど、すぐに別の話題が浮かんできて、残りの移動時間は楽しくお話をすることが出来た。
それから10分。無事に公爵邸に到着すると、使用人さん達が揃って出迎えに来てくれた。
「「お帰りなさいませ!」」
「まもなく昼食が出来上がりますので、お着替えが終わりましたら食堂までお願いします」
出迎えの言葉に続けて、執事長さんがそう口にする。
私はそれに頷いて、部屋に向かって急いで着替えた。
でも、流石に急ぎすぎたみたいで、食堂に入った時には誰もいなかった。
「お嬢様、だからあんなに急がなくてもいいと……」
「遅れるよりはいいでしょう?」
「それはそうですが、急かされる私の身にもなってください」
反論は出来なかった。マリーを急かしてしまったのは事実だから。
「ごめんなさい……。今度から気をつけるわ」
余計な負担をかけていたと知って謝る私。
こういう風にマリーが問題点を指摘してくれなければ気付けなかった。そう思うと、今までの侯爵邸で誰も指摘してくれなかったことが恐ろしかった。
自分に問題があると気付くことが出来ないのだから。
もっとも、そうなってしまったのは意見してくれる侍女をお母様が全員クビにしてしまったからなのだけど……。
そんなことがあったのにマリーが指摘してくれたのは、ここ公爵家の方々が意見を聞き入れるからなのかしら?
それとも、意見する必要が無いほど完璧なのかしら? もしそうなら、少し恐ろしい。
そんなことを考えている時だった。
「あら、まだ出来ていないのね」
「ええ、あと5分ほどで出来上がるそうです」
「分かったわ」
そう返事をし、優雅に腰掛ける公爵夫人。
その仕草は完璧という言葉以外では言い表せなかった。
でも……
「奥様、先にメイクを落としてきてください。崩れてしまっていますので」
……マリーは細かい崩れを指摘した。鏡を見せながら。
「あら、本当ですわ」
そう言って、公爵夫人は食堂を後にした。
一応、私は客人のはずなのだけど……こんな風に指摘して大丈夫なのかしら?
気になって問いかけてみると、こんな答えが返ってきた。
「お嬢様は、もう家族みたいに思われているので問題ありません。もし他のお客様がいらっしゃったら、気付かれないように伝えています」
「そうだったのね……」
家族のように思われている。このことはすごく嬉しいのだけど、それはつまり公爵家に相応しいだけの礼儀作法が出来ていないといけないということ。
だから……今まで殆ど褒められたことがない分、ここで完璧になろうと思えた。
もちろん緊張もしているけれど、公爵夫妻もシエル様も優しいから、深刻には思わなかった。
シエル様のお兄様は一切口を聞いてくれないけれど……。
そんな会話をしている内に全員が揃って、賑やかな昼食が始まった。
パーティー中にも食事は出されているけれど、少しだけ食べるのがマナー。
だから、普段通りの量でちょうど良かった。
私達は特に呼び止められることもなく、すぐに公爵邸へと戻ることが出来そうだった。
「レティシアさん、色々言われてましたけど……気分は大丈夫でして?」
「ええ、大丈夫ですわ。もっと酷い暴言を言われると思っていたので、拍子抜けしたくらいですわ」
何を隠そう。アドルフは連行される間、ひたすら私への暴言を吐き続けていた。
ボロボロと涙を流しながら、それはもうみっともなく。
彼とは完全に他人になった後だから、これによって私が批判されることは無いはずなのだけど……こんなのと婚約していただなんて知りたくはなかった。
嫌だったのはそれくらいで、暴言については何も思わなかった。
「……強いて言えば、あんなのが婚約者だったことが悲しかったくらいですわ」
「あれは衝撃でしたわ……」
気まずい空気が馬車の中に流れているけれど、すぐに別の話題が浮かんできて、残りの移動時間は楽しくお話をすることが出来た。
それから10分。無事に公爵邸に到着すると、使用人さん達が揃って出迎えに来てくれた。
「「お帰りなさいませ!」」
「まもなく昼食が出来上がりますので、お着替えが終わりましたら食堂までお願いします」
出迎えの言葉に続けて、執事長さんがそう口にする。
私はそれに頷いて、部屋に向かって急いで着替えた。
でも、流石に急ぎすぎたみたいで、食堂に入った時には誰もいなかった。
「お嬢様、だからあんなに急がなくてもいいと……」
「遅れるよりはいいでしょう?」
「それはそうですが、急かされる私の身にもなってください」
反論は出来なかった。マリーを急かしてしまったのは事実だから。
「ごめんなさい……。今度から気をつけるわ」
余計な負担をかけていたと知って謝る私。
こういう風にマリーが問題点を指摘してくれなければ気付けなかった。そう思うと、今までの侯爵邸で誰も指摘してくれなかったことが恐ろしかった。
自分に問題があると気付くことが出来ないのだから。
もっとも、そうなってしまったのは意見してくれる侍女をお母様が全員クビにしてしまったからなのだけど……。
そんなことがあったのにマリーが指摘してくれたのは、ここ公爵家の方々が意見を聞き入れるからなのかしら?
それとも、意見する必要が無いほど完璧なのかしら? もしそうなら、少し恐ろしい。
そんなことを考えている時だった。
「あら、まだ出来ていないのね」
「ええ、あと5分ほどで出来上がるそうです」
「分かったわ」
そう返事をし、優雅に腰掛ける公爵夫人。
その仕草は完璧という言葉以外では言い表せなかった。
でも……
「奥様、先にメイクを落としてきてください。崩れてしまっていますので」
……マリーは細かい崩れを指摘した。鏡を見せながら。
「あら、本当ですわ」
そう言って、公爵夫人は食堂を後にした。
一応、私は客人のはずなのだけど……こんな風に指摘して大丈夫なのかしら?
気になって問いかけてみると、こんな答えが返ってきた。
「お嬢様は、もう家族みたいに思われているので問題ありません。もし他のお客様がいらっしゃったら、気付かれないように伝えています」
「そうだったのね……」
家族のように思われている。このことはすごく嬉しいのだけど、それはつまり公爵家に相応しいだけの礼儀作法が出来ていないといけないということ。
だから……今まで殆ど褒められたことがない分、ここで完璧になろうと思えた。
もちろん緊張もしているけれど、公爵夫妻もシエル様も優しいから、深刻には思わなかった。
シエル様のお兄様は一切口を聞いてくれないけれど……。
そんな会話をしている内に全員が揃って、賑やかな昼食が始まった。
パーティー中にも食事は出されているけれど、少しだけ食べるのがマナー。
だから、普段通りの量でちょうど良かった。
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