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47. 余命6日⑤
「今の何……?」
得体の知れない感覚。それに続けて恐怖心が襲ってきて、反射的にフレアに縋るような格好になってしまった。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫よ。ちょっと寒気がしただけだから」
さっきの不思議な感覚は気にしないことにして、朝の準備を始める私。
それからすぐに準備を終えて、フレアと朝食のためにレストランに向かった。
◇ ◇ ◇
同じ頃、ルードリッヒ邸ではちょっとした騒ぎが起きていた。
「5日後にレティシアを殺すだと!?」
手紙に目を通すなり、そんな言葉を口にするルードリッヒ侯爵。
その声には怒りと少しばかりの恐怖が滲んでいる。
「この手紙はどこから届いた?」
「まだ分かっておりません」
「そうか……。
私が自由に動けない以上、この件は王家にも協力を要請するしかない。手紙を書く準備を」
そう口にする侯爵は側から見れば娘を心配する父親だった。
だが、内心ではこんなことを思っていた。
(レティシアを利用させるわけにはいかない。なんとしてでも人質にされることは防がねば……)
領主として、家族を人質に取られることはあってはならない。
だから、こんな考えが表に出てきていた。
しかし次第にこんなことを思うようにもなっていた。
(そろそろレティシアに会いたいものだな……。心配だ)
数日前からどこか寂しくなった侯爵邸のことを思い浮かべていたら、忌み子と呼びながらも一応は愛しているはずの娘の顔が浮かんできたのだ。
今更ながら、侯爵は後悔していた。
レティシアが屋敷から姿を消しても、領地の財政は良くならない。
むしろ、屋敷の空気が悪くなる一方。妻の機嫌は悪いまま。
今になって、ようやくレティシアの重要性に気付いた。
もう一つ、娘に会えないことの辛さも思い知った。
それが娘を他者に利用されたくない思いからなのかは、本人のみが知ることだが……。
「旦那様、お待たせしました」
少しして、侍女がペンなどを手にして部屋に戻ってきた。
侯爵はそれを受け取ると、早速ペンを走らせた。
書くことはもう決まっている。
犯人の特定についての協力依頼、レティシアに会わせて欲しいということ、そして何よりもレティシアを護るための相談をしたいという内容だった。
そしてその全てが強気の姿勢でのものだった。
「これを王宮まで頼む」
「畏まりました」
孤児院の事が王家に知られていると知っていれば、行動は違うものになっていただろう。
だから、王家から手紙が届いた時の侯爵はひどく慌てた。
「何故見つかったんだ……」
「旦那様、どうされましたか?」
「いや、なんでもない」
手紙の内容が孤児院の援助に関する確認のものだったから、言い訳が不可能ではない。
そう考えた侯爵は、どうにかして言い逃れ出来るようにと対策を考え始めていた。
◇ ◇ ◇
「今日もお疲れ様でした」
「「お疲れ様でした」」
メリアさんに続けて頭を下げる私。
視察が無くなったことで女官の仕事をしていたのだけど、今日も暇な時間の方が多かった。
だから、いつも通り午後の5時には仕事を終えて部屋に戻る事が出来そうだったのだけど……。
「レティシア嬢、話したい事がある。少し時間をもらってもいいだろうか?」
……殿下に呼び止められてしまった。
「ええ、大丈夫ですわ」
「ありがとう。実はこういう手紙が届いたんだ」
そんな言葉と共に差し出されたのは、お父様の筆跡で書かれた手紙だった。
「こういう事だから、しばらく君の部屋の周りに警備をつけることになった」
「分かりましたわ。ありがとうございます」
殺害予告されるだなんて……。
今までにも何回かされたことはあるけど、何回されても恐怖を感じずにはいられなかった。
得体の知れない感覚。それに続けて恐怖心が襲ってきて、反射的にフレアに縋るような格好になってしまった。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫よ。ちょっと寒気がしただけだから」
さっきの不思議な感覚は気にしないことにして、朝の準備を始める私。
それからすぐに準備を終えて、フレアと朝食のためにレストランに向かった。
◇ ◇ ◇
同じ頃、ルードリッヒ邸ではちょっとした騒ぎが起きていた。
「5日後にレティシアを殺すだと!?」
手紙に目を通すなり、そんな言葉を口にするルードリッヒ侯爵。
その声には怒りと少しばかりの恐怖が滲んでいる。
「この手紙はどこから届いた?」
「まだ分かっておりません」
「そうか……。
私が自由に動けない以上、この件は王家にも協力を要請するしかない。手紙を書く準備を」
そう口にする侯爵は側から見れば娘を心配する父親だった。
だが、内心ではこんなことを思っていた。
(レティシアを利用させるわけにはいかない。なんとしてでも人質にされることは防がねば……)
領主として、家族を人質に取られることはあってはならない。
だから、こんな考えが表に出てきていた。
しかし次第にこんなことを思うようにもなっていた。
(そろそろレティシアに会いたいものだな……。心配だ)
数日前からどこか寂しくなった侯爵邸のことを思い浮かべていたら、忌み子と呼びながらも一応は愛しているはずの娘の顔が浮かんできたのだ。
今更ながら、侯爵は後悔していた。
レティシアが屋敷から姿を消しても、領地の財政は良くならない。
むしろ、屋敷の空気が悪くなる一方。妻の機嫌は悪いまま。
今になって、ようやくレティシアの重要性に気付いた。
もう一つ、娘に会えないことの辛さも思い知った。
それが娘を他者に利用されたくない思いからなのかは、本人のみが知ることだが……。
「旦那様、お待たせしました」
少しして、侍女がペンなどを手にして部屋に戻ってきた。
侯爵はそれを受け取ると、早速ペンを走らせた。
書くことはもう決まっている。
犯人の特定についての協力依頼、レティシアに会わせて欲しいということ、そして何よりもレティシアを護るための相談をしたいという内容だった。
そしてその全てが強気の姿勢でのものだった。
「これを王宮まで頼む」
「畏まりました」
孤児院の事が王家に知られていると知っていれば、行動は違うものになっていただろう。
だから、王家から手紙が届いた時の侯爵はひどく慌てた。
「何故見つかったんだ……」
「旦那様、どうされましたか?」
「いや、なんでもない」
手紙の内容が孤児院の援助に関する確認のものだったから、言い訳が不可能ではない。
そう考えた侯爵は、どうにかして言い逃れ出来るようにと対策を考え始めていた。
◇ ◇ ◇
「今日もお疲れ様でした」
「「お疲れ様でした」」
メリアさんに続けて頭を下げる私。
視察が無くなったことで女官の仕事をしていたのだけど、今日も暇な時間の方が多かった。
だから、いつも通り午後の5時には仕事を終えて部屋に戻る事が出来そうだったのだけど……。
「レティシア嬢、話したい事がある。少し時間をもらってもいいだろうか?」
……殿下に呼び止められてしまった。
「ええ、大丈夫ですわ」
「ありがとう。実はこういう手紙が届いたんだ」
そんな言葉と共に差し出されたのは、お父様の筆跡で書かれた手紙だった。
「こういう事だから、しばらく君の部屋の周りに警備をつけることになった」
「分かりましたわ。ありがとうございます」
殺害予告されるだなんて……。
今までにも何回かされたことはあるけど、何回されても恐怖を感じずにはいられなかった。
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