半月後に死ぬと告げられたので、今まで苦しんだ分残りの人生は幸せになります!

八代奏多

文字の大きさ
58 / 74

58. 余命3日①

「嘘だろ……。もうここまで広がっているのか……」

 テラスに出てすぐ、そんなことを呟く殿下。
 フレアが言ってたことが本当なら、殿下も瘴気を払えるということになるのだけど……。

「殿下……?」
「すまない、なんでもない」

 私が声をかけると、殿下は何もなかったかのように笑顔を浮かべていた。

「私にも見えてますわよ」
「見えてる?」
「この黒い霧のことですわ」

 きっと、殿下はこの霧について話すために私を呼んだのよね。

「そうか、レティシアにも見えてたのか。ということは、払い方も知っているのか?」
「払い方というよりも消し方ですけど、一応知っていますわ」
「そうか、それなら話は早い。この霧を払うのを手伝って欲しいんだ」

 やっぱりそうなるわよね……。

 そんなことを思いながら、言葉に詰まる私。
 本音を言えば、運命の日が迫っているから手伝いたくはなかった。

 でも、王都の人たちのためにも、瘴気を放っておくわけにはいかない。
 だから……ゆっくりと首を縦に振った。

「分かりましたわ」
「ありがとう。霧──瘴気と言うらしいが、これの払い方は知っているか?」
「光の魔力で相殺するということなら……」
「それは打ち消し方だな。払うだけなら、光の魔術で閃光を作れば出来る」

 そう口にしながら、手に光の球を生み出す殿下。
 すると、王宮の目の前まで迫っていた瘴気が少しだけ後ろに下がっていった。

「……こんな風に」
「分かりましたわ」

 試しに、光のを使ってみる私。
 でも、瘴気は全く下がっていかなかった。

 光の強さを倍にしても同じ。もっと強くしても、全く動かなかった。

「全く動きませんわ……」
「まさか……」

 もしかして、でないと効果がないのかしら……?

 そう思ったから、今度は魔術を使ってみた。

「やっぱり無理みたいですわ……」
「そんな馬鹿な……」

 そう呟きながら、再び光の魔術を使う殿下。
 すると、瘴気が後ろに下がり始めた。

「どういうことですの……?」
「原因は分からないが、レティシアの方が効果が小さいみたいだ……」
「え……?」

 私の方は効果が小さいどころか、全くないのだけど……?

「よく見れば分かるが、レティシアでも少しずつ動いている」
「そうですのね……」

 じっと見てみても、変化は感じられないのだけど……。

「距離が離れると効果が出なくなるから、見ていても分からないはずだ」

 殿下はそう説明してくれたけど、きっと私に瘴気を払う力は無い。一瞬そう思えてしまった。

「瘴気が近付いて来ないのが証拠だな」

 でも、殿下のこの言葉で私にも瘴気を払えるかもしれない。そう思えたのに……。
 再び瘴気が少しずつ近付き始めてしまった。

「なんでだ……」

 困惑しながら、再び光の魔術を使う殿下。
 再び瘴気は王宮から離れていった。

「やっぱり、私に瘴気を払う力は無いみたいですわ」
「……だが、打ち消すことは出来るはずだ。明日、王都に出て元凶を探るから、その時に試して欲しい」
「分かりましたわ」
「瘴気を見ていると気分が悪くなる。そろそろ中に戻ろう」

 そんな言葉と共に手を引かれて、大人しくそれに従う私。
 殿下はそのまま廊下を進んでいって、途中にある部屋に入っていった。

 私もそれに続いて部屋に入ると、テーブルの上にお菓子が置いてあるのが目に入った。
 でも、それよりも気になることがあった。

「殿下、一つ質問してもよろしいですか?」
「ああ」

 間を置かずに頷く殿下。

「前回までにも瘴気は出ていましたの?」
「ああ。とは言っても、ここまで酷いものではなかった」
「そうでしたのね……」

 つまり、殿下が経験した前回の人生から、運命は変わっているのね……。
 何が原因かは分からないけれど。

「話したかったことはこれで終わりなんだが、少し雑談でもしないか?」
「ええ」

 殿下からのお誘いを断る訳にはいかないから頷いたのだけど……今の状況で楽しく雑談が出来るとは思えなかった。

「まだ言ってなかったけど、そのお菓子は食べて大丈夫だから」
「では、いただきますわ」

 そう返しながら、早速ひとつ口に運ぶ私。
 突然知らない人の声が響いたのは、その時だった。

「フレア、いい加減に出てきなさいよ」

 声の主は殿下の真後ろに突然あらわれた金髪の女性で、私の方をじっと見つめてきている。

 えっと、これはどういう状況なのかしら……?

 
感想 35

あなたにおすすめの小説

『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい

歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、 裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会 ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った 全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。 辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?

神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。 (私って一体何なの) 朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。 そして―― 「ここにいたのか」 目の前には記憶より若い伴侶の姿。 (……もしかして巻き戻った?) 今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!! だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。 学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。 そして居るはずのない人物がもう一人。 ……帝国の第二王子殿下? 彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。 一体何が起こっているの!?

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

大人しい令嬢は怒りません。ただ二年間、準備していただけです。――婚約解消の申請が受理されましたので、失礼いたします

柴田はつみ
恋愛
婚約者に、誕生日を忘れられた。 正確には、忘れられたわけではない。 エドワード・ヴァルト公爵はちゃんと覚えていた。 記念のディナーも、予約していた。 薔薇だって、一輪、用意していた。 ただ――幼馴染のクロエ・アンセル伯爵令嬢から使いが来た瞬間、全部置いて行ってしまっただけだ。 「すぐ戻る」 彼が戻ったのは、三時間後だった。 蝋燭は溶け切り、料理は冷え、ワインは乾いていた。 それでもリーゼロッテ・フォン・アルテンベルクは、笑顔で座って待っていた。 「ええ、大丈夫でございます。お気遣いなく」 完璧な微笑みで、完璧にそう言った。

【完結】あなたに従う必要がないのに、命令なんて聞くわけないでしょう。当然でしょう?

チカフジ ユキ
恋愛
伯爵令嬢のアメルは、公爵令嬢である従姉のリディアに使用人のように扱われていた。 そんなアメルは、様々な理由から十五の頃に海を挟んだ大国アーバント帝国へ留学する。 約一年後、リディアから離れ友人にも恵まれ日々を暮らしていたそこに、従姉が留学してくると知る。 しかし、アメルは以前とは違いリディアに対して毅然と立ち向かう。 もう、リディアに従う必要がどこにもなかったから。 リディアは知らなかった。 自分の立場が自国でどうなっているのかを。