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2. 家出①
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王太子に婚約破棄されれば、悪い噂が流れないはずがない。
去年婚約破棄された伯爵令嬢ですら、悪い噂が流れて心を病んでしまい、最終的には家名に傷を入れたということで勘当された。
私の場合は、優しいお父様とお母様のことだから勘当されることはないと思う。
でも……私のせいで嫌な思いをさせてしまうに違いない。
だから、今すぐにでも勘当してもらって家を出ようと思う。
勘当はその人が元々いなかったことにも出来るから、迷惑をかけないようにするためには丁度いいから。
「今すぐ屋敷に向かって」
「お、お嬢様⁉︎ 一体何があっ……」
会場を飛び出して家の馬車にった私は御者に命令した。
御者さんは涙を流している私を見て動揺しているみたい。
だからもう一言付け加えた。
「命令が聞こえなかったの? 早くしなさい!」
「か、畏まりました」
御者さんが慌てて手綱を引いて、馬車が動き出す。
でも、いつも通りのゆったりとした速さだった。
このままだと、殿下に追いつかれるかもしれない。
そう思ったから、もっと速くするように頼んだ。
「ですが……乗り心地を損ねてしまいます。最悪の場合、段差などでお怪我をされる可能性もあります」
「そんなの気にしなくていいわよ」
「かしこまりました」
御者さんがそう返事をすると、馬車の揺れが酷くなった。
そのおかげで、屋敷に着いて周りを見回しても王太子が追っている気配はなかった。
玄関を駆け抜け階段を駆け上がる。
使用人さんが驚いた表情を向けてくるけど、そんなの関係ない。
私はお父様の部屋に飛び込むなりこう口にした。
「お父様、私を勘当してください」
「急に何を言い出すんだ? 何があったんだ?」
「殿下に婚約破棄されてしまいましたの。私がここにいても迷惑になるだけなので家を出ます。今までありがとうございました」
そう言い、馬車の中で書いた手紙を机の上に置いて急いで部屋を出た。
家族想いのお父様が私を引き止めようとすることは想像がついたから。
お父様に話をした後は自分の部屋に向かった。
家を出てから仕事を見つけるまでの間に生活出来るようにお金になりそうなものを取りに行くために。
「お嬢様、一体何がありましたの?」
「家を出なきゃいけないの。手伝ってもらえる?」
「かしこまりました。私は食べ物を用意して参りますね」
私の専属侍女のアンナは意図を察してくれたようで、すぐに動いてくれた。
その間に私は特に高価な装飾品を持ち運び用の宝石箱に入れていく。
ちなみに、この宝石箱は特殊な魔法が施されていて、私以外が開けることも壊すことも出来ないようになっている。
盗まれてしまったらその時点で終わりだもの。用心するに越したことはないわ。
それからものの数分で準備を終え、アンナ に今までのお礼と別れを告げてから屋敷を出ようとした。
その時、玄関からこんな声が聞こえてきた。
「フィーナ様はいらっしゃいますか?」
「はい。当主の部屋にいると思います」
階段からこっそり覗くと、声の主は王宮からの使いだった。
このままだと連れ戻されてしまう……。
直感的にそう思った私は一旦部屋に戻って鍵をかけ、どうにかしてここを脱出する方法をアンナに相談するのだった。
去年婚約破棄された伯爵令嬢ですら、悪い噂が流れて心を病んでしまい、最終的には家名に傷を入れたということで勘当された。
私の場合は、優しいお父様とお母様のことだから勘当されることはないと思う。
でも……私のせいで嫌な思いをさせてしまうに違いない。
だから、今すぐにでも勘当してもらって家を出ようと思う。
勘当はその人が元々いなかったことにも出来るから、迷惑をかけないようにするためには丁度いいから。
「今すぐ屋敷に向かって」
「お、お嬢様⁉︎ 一体何があっ……」
会場を飛び出して家の馬車にった私は御者に命令した。
御者さんは涙を流している私を見て動揺しているみたい。
だからもう一言付け加えた。
「命令が聞こえなかったの? 早くしなさい!」
「か、畏まりました」
御者さんが慌てて手綱を引いて、馬車が動き出す。
でも、いつも通りのゆったりとした速さだった。
このままだと、殿下に追いつかれるかもしれない。
そう思ったから、もっと速くするように頼んだ。
「ですが……乗り心地を損ねてしまいます。最悪の場合、段差などでお怪我をされる可能性もあります」
「そんなの気にしなくていいわよ」
「かしこまりました」
御者さんがそう返事をすると、馬車の揺れが酷くなった。
そのおかげで、屋敷に着いて周りを見回しても王太子が追っている気配はなかった。
玄関を駆け抜け階段を駆け上がる。
使用人さんが驚いた表情を向けてくるけど、そんなの関係ない。
私はお父様の部屋に飛び込むなりこう口にした。
「お父様、私を勘当してください」
「急に何を言い出すんだ? 何があったんだ?」
「殿下に婚約破棄されてしまいましたの。私がここにいても迷惑になるだけなので家を出ます。今までありがとうございました」
そう言い、馬車の中で書いた手紙を机の上に置いて急いで部屋を出た。
家族想いのお父様が私を引き止めようとすることは想像がついたから。
お父様に話をした後は自分の部屋に向かった。
家を出てから仕事を見つけるまでの間に生活出来るようにお金になりそうなものを取りに行くために。
「お嬢様、一体何がありましたの?」
「家を出なきゃいけないの。手伝ってもらえる?」
「かしこまりました。私は食べ物を用意して参りますね」
私の専属侍女のアンナは意図を察してくれたようで、すぐに動いてくれた。
その間に私は特に高価な装飾品を持ち運び用の宝石箱に入れていく。
ちなみに、この宝石箱は特殊な魔法が施されていて、私以外が開けることも壊すことも出来ないようになっている。
盗まれてしまったらその時点で終わりだもの。用心するに越したことはないわ。
それからものの数分で準備を終え、アンナ に今までのお礼と別れを告げてから屋敷を出ようとした。
その時、玄関からこんな声が聞こえてきた。
「フィーナ様はいらっしゃいますか?」
「はい。当主の部屋にいると思います」
階段からこっそり覗くと、声の主は王宮からの使いだった。
このままだと連れ戻されてしまう……。
直感的にそう思った私は一旦部屋に戻って鍵をかけ、どうにかしてここを脱出する方法をアンナに相談するのだった。
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