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53. 竜の国の社交界①
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王宮パーティー当日のお昼過ぎ、私は使用人さん達に甲斐甲斐しくお世話されていた。
今日は夕方からで時間があるということで、いい匂いのする香油をつけられてマッサージまでされたおかげで、いつもよりもお肌がスベスベになった気がする。
侍女さんが言うには、血行が良くなったお陰で色気が出ているらしい。
そんなものいらないのに……。
マッサージの後は社交用のドレスに着替えて、髪を整えられたりお化粧をされたりした。
「フィーナ様は素がよろしいですから、お化粧は控えめでいきましょう」
ドレッサーの前でそう言われてされるがまままにしていたら、少しして別人の顔が鏡に映っていた。
私の顔なんだけど、まるで別人みたい……。これのどこが控えめなのかしら?
お化粧が終わって部屋を出ると、すぐにジーク様がやって来てこう口にした。
「今日のフィーナはいつにも増して可愛いね。他の男に見せるのが惜しいよ」
そう言って私に抱きつこうとするものだから、私は両手で彼を制した。
「ドレスがシワになるのでやめてください」
「じゃあ、キス……」
「それもダメです!」
なにさらっととんでもないこと言ってるの?
項垂れてるけど、ダメなものはダメなのです!
キスは単純に私の心の準備が出来ていないからダメって言っただけだけど……。
「フィーナに嫌われた……」
「嫌ってませんから」
「ジーク様、馬鹿なこと言ってないでフィーナ様をエスコートしてください。もう出発ですよ」
項垂れるジーク様に冷たく言い放つティアナさん。
「分かった……。フィーナ、腰抱いてもいいかな? 普通はそうやってエスコートするんだけど」
「エスコートならいいですよ」
ジーク様の問いかけに、私はそう答えた。
社交界で腰を抱かれるのはもう慣れているから、今更恥ずかしく思ったりはしない。
この後はお屋敷の中なのにジーク様にエスコートされて玄関に向かって、ソフィア様とキーファス様にこんなことを言われた。
「ジーク、彼女を離したくないのは分かるが、やり過ぎて嫌われるなよ?」
「フィーナ……これ、やり過ぎかな?」
「エスコートの練習になるので良いと思いますよ?」
このエスコート、密着しているから足を引っ掛けやすいのよね……。
だから、私は歩調を合わせるためにも出発前からエスコートするのは問題ないと思っている。
「良かった。じゃあ、馬車まで行こう」
ジーク様にそう言われてエントランスに向けて歩き出すと、彼は私に歩調を合わせてくれた。
どこかの国の王太子殿下はそんなこと気にかけてくれなかったのに。
思い出したら腹が立ってきたから、もう忘れないといけないわね……。
「フィーナ、何かあった?」
「少し腹の立つことを思い出してしまって……」
「もしかして俺が何かした?」
「ジーク様に怒るわけないじゃないですか。元婚約者のことです」
「もう忘れてもいいと思うけど、簡単にはいかないよな」
「はい……」
そんなことを話しているうちにエントランスに着き、私はジーク様の手を借りて馬車に乗るのだった。
今日は夕方からで時間があるということで、いい匂いのする香油をつけられてマッサージまでされたおかげで、いつもよりもお肌がスベスベになった気がする。
侍女さんが言うには、血行が良くなったお陰で色気が出ているらしい。
そんなものいらないのに……。
マッサージの後は社交用のドレスに着替えて、髪を整えられたりお化粧をされたりした。
「フィーナ様は素がよろしいですから、お化粧は控えめでいきましょう」
ドレッサーの前でそう言われてされるがまままにしていたら、少しして別人の顔が鏡に映っていた。
私の顔なんだけど、まるで別人みたい……。これのどこが控えめなのかしら?
お化粧が終わって部屋を出ると、すぐにジーク様がやって来てこう口にした。
「今日のフィーナはいつにも増して可愛いね。他の男に見せるのが惜しいよ」
そう言って私に抱きつこうとするものだから、私は両手で彼を制した。
「ドレスがシワになるのでやめてください」
「じゃあ、キス……」
「それもダメです!」
なにさらっととんでもないこと言ってるの?
項垂れてるけど、ダメなものはダメなのです!
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「フィーナに嫌われた……」
「嫌ってませんから」
「ジーク様、馬鹿なこと言ってないでフィーナ様をエスコートしてください。もう出発ですよ」
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「分かった……。フィーナ、腰抱いてもいいかな? 普通はそうやってエスコートするんだけど」
「エスコートならいいですよ」
ジーク様の問いかけに、私はそう答えた。
社交界で腰を抱かれるのはもう慣れているから、今更恥ずかしく思ったりはしない。
この後はお屋敷の中なのにジーク様にエスコートされて玄関に向かって、ソフィア様とキーファス様にこんなことを言われた。
「ジーク、彼女を離したくないのは分かるが、やり過ぎて嫌われるなよ?」
「フィーナ……これ、やり過ぎかな?」
「エスコートの練習になるので良いと思いますよ?」
このエスコート、密着しているから足を引っ掛けやすいのよね……。
だから、私は歩調を合わせるためにも出発前からエスコートするのは問題ないと思っている。
「良かった。じゃあ、馬車まで行こう」
ジーク様にそう言われてエントランスに向けて歩き出すと、彼は私に歩調を合わせてくれた。
どこかの国の王太子殿下はそんなこと気にかけてくれなかったのに。
思い出したら腹が立ってきたから、もう忘れないといけないわね……。
「フィーナ、何かあった?」
「少し腹の立つことを思い出してしまって……」
「もしかして俺が何かした?」
「ジーク様に怒るわけないじゃないですか。元婚約者のことです」
「もう忘れてもいいと思うけど、簡単にはいかないよな」
「はい……」
そんなことを話しているうちにエントランスに着き、私はジーク様の手を借りて馬車に乗るのだった。
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