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54. 王太子side 望む再会

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 フィーナに会って抱きたい。強くそう願った僕はすぐに行動した。
 まずはフィーナの両親に手紙を出してフィーナを帰らせるようにお願いをした。

 だが、僕の最大限の温情は気に入らなかったようで完全に無視されてしまった。
 だから直接隣国に赴いてフィーナを連れ帰ろうと考え、今それを実行しようとしている。

 この時期は国境周辺の魔物の動きが活発になるから、護衛はいつも以上の数を付けることにしている。
 グレイヴに手紙は出していないが、友好国だから問題ないだろう。

 ちなみに、今回は魔物から逃げやすいように僕も騎乗する。


「殿下、本当によろしいのですか?」

「ああ。こちらは準備出来たぞ。そちらはまだか?」

「まもなく完了いたします」


 それからすぐに出発の準備が整い、僕は大勢の護衛と共に王都を出た。

 僕も騎乗ということもあって、通常よりもかなり早く移動することができ、日が昇る時には国境近くまで来ることが出来た。
 僕はあらかじめ夕方まで寝ていたから眠気は無いが、護衛達は疲れた様子だった。

 そんな時、索敵役達が声を上げた。


「左前方より大型の魔物の群れが接近中です!」

「右方向より赤竜が接近中です!」

「後方、ダークウルフの群れが接近中です!」


 逃げられそうな谷筋全てから魔物が来ている……。どうやら囲まれてしまっているらしい。

 僕達を狙っているのか、それとも縄張り争いか。どちらにせよ危険な状況に変わりはない。


「どこから突破するのが一番安全かな?」

「ダークウルフの群れが対策方法もありますので一番確実でございます」

「分かった、それで行こう。任せたよ」

「はっ」


 その直後、周りを見回した時に崖を駆け下りてくるダークウルフの群れが目に入った。

 あまりにも多すぎる数に、恐怖心が煽られた。


「に、逃げろ……!」


 僕が思わずそう口にすると、近衛隊の1人がこう言ってきた。

「前方の群れを突破します。何があっても我々から離れないでください」


 そして、僕の進路を切り開くように隊形を組んで馬を走らせた。
 僕はそれについて行った。

 馬の上から魔法で近くのダークウルフを倒しながら駆け抜けていく途中、左腕に激痛が走った。
 同じ速さで走ってきたダークウルフが腕に噛み付いてきたからだ。


「ぐっ……」

「殿下!」


 近衛隊の魔法で喉元を射抜かれダークウルフの力が抜け、すぐに振り払うことが出来たが腕から血が流れ出ていた。

 だが、この痛みはまだ耐えられる痛みだから、必死に馬を駆り続けた。


「殿下、もうすぐ街です! それまで耐えてください!」


 ダークウルフはもう追って来ていなかったが、僕は馬を潰す勢いで全力で逃げていた。
 この時、ダークウルフが追ってこない理由が、あの場から僕達を逃すために囮りとなった200人近くの護衛のお陰だということは頭になかった。


 街に着いてからは止血だけして、急いで王都に向かった。
 この時、治癒魔法が使える者を連れてくれば良かったと後悔していた。

 もっとも、治癒魔法を使える者は少ないのであの短時間で連れてくることなど出来なかったのだが……。
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