虐げられるのは嫌なので、モブ令嬢を目指します!

八代奏多

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学院編

28. 夏休みの計画

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 夕食会の翌日、私はクラスの人達と共にホールにいる。

「……学院はおよそ300年前に当時の国王陛下によって設立され……」

 今は前期終業式の最中で、学院長が拡声装置を使って話している。
 もう10分も経っているのだけど、いつになったら終わるのかしら?

「相変わらず学院長のお話は長いですわね」
「ええ。そろそろ終えてくださってもいいと思いますのに……」

 小声でアエリア様にそう返す。

 アエリア様も学院長のお話は長いと感じているみたい。

「……以上です。休暇中はつつがなくお過ごしください」

 やっと終わったわ……。



 終業式が終わってから、私は裏門に向かった。
 今日から夏休みで生徒会室が使えないから、普段誰も使わない裏門前でレオン様と待ち合わせをしている。


「リリー、顔色悪いけど大丈夫?」

 裏門に向かう途中、ちょうど廊下の角から出てきたレオン様にそんなことを言われた。

「学院長のお話が長くて疲れてしまっただけですわ」
「ああ、確かにあれは疲れるよね」

 そう口にするレオン様は疲れている様子なんて欠片ない。
 殿方の方が体力があるって聞くけど、そのせいかしら?

「とりあえず、誰かに見つかる前に馬車に乗ろう」
「はい」

 返事をした私はレオン様の少し後ろを歩いていく。
 これなら、誰かに見つかっても言い訳が出来るから。



 それから1分ほど歩いて裏門に到着した。
 周りを確認してから先に馬車に乗る。

「今日は邪魔入らなかったね」
「誰にも見つからなくて良かったですわ」
「そうだね。
 早速本題に入るけど、夏休み中はうちの領地にある観光地に行こうと思ってるんだけど
リリーはどうかな?」

 そう言いながら地図を広げるレオン様。
 そこには既に10個以上メモが書かれていた。

「こんなにあるんですか?」
「もっとあるけど、行くならここがいいかなって思ってね」
「あの、もしかして一緒に泊まるんですか……?」

 まだ婚約していないのに、一緒に旅行だなんて色々と問題になってしまう。
 主に間違いが起きないかどうかの問題だから、大丈夫だとは思う。

 でも、お父様が許してくれるか心配だわ……。
 お父様、私が殿方と少しでも部屋で2人きりになることですら嫌っているから。

 貴族の令嬢が婚約前に純潔を失ったら婚姻に影響があるからなのだけど。
 ちなみに、婚約してからなら大丈夫らしい。

 こういう理由があるから、基本的に殿方と2人きりになることは無かった。
 お客様と2人でお話しする時には、必ず使用人さんが付いていたから。

「一応そのつもりだよ。ダメかな?」
「両親から許可をもらえるか次第ですわ」
「分かった。じゃあ、許可がもらえたらお邪魔しに行くから、その時に決めよう。
 これが行く場所の候補だから、他に気になる場所があれば書いておいてくれると助かるよ」
「分かりましたわ」

 公爵領の観光地は全く行ったことがないから、すごく楽しみだわ。
 いきなり旅行は緊張するけど、レオン様となら大丈夫よね……?
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