水巫女はハレムで溺れる

愛月なみ

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先輩水巫女、ジェシカさんに教えてもらう(2)

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 やった!
 とうとう、精霊様の力をかりることができた!!

 降り注ぐ水を上向きにした顔で受け止めながら、私はきっと満面の笑みを浮かべていた。

「えー!ずるーい!!」

 ジェシカさんや私のお世話係、エルザさんが「すごい!すごい!」とはしゃいでいる声にまざって、非難めいた声もあがった。

 ふりかえると、口を尖らせたれいかちゃんが不機嫌さを隠そうともせずに立っていた。

「アンナさん、できないって言ってたのに!
嘘ついたんですか?! そんなすぐにできて、ずるい!!」

 えーー!!
 ほんとにできなかったからお願いして教えてもらってたまたまうまくいっただけなんだけど……

 でも、同時にきて一人先にできちゃったら焦るよね。

 それにまだ高校生なんだし。

「いやいや、私も急にできただけだよ!
それにまぐれかもしれないし、一緒にやってみよう?」

 ぶーっとふくれっ面をしたままれいかちゃんも私の隣でしゃがんで両手を泉につける。

「なんかさ、さっき、ジェシカさんの水が降ってきたときとか、私の水がふってきたときに湿気というか、しっとりしたような水をまとった空気みたいなのを感じなかった?」

 うまく説明できないけど、れいかちゃんもできるようになるならばと一生懸命、さっきの一連の流れを思い出して口にしていく。

「それでね、そのときに青い人型のような、そんな感じのがジェシカさんの腕から泉に移動するのが見えた気がしたの。
 あ!!それと、ジェシカさんが精霊様すごい!!お願いします!!ってお願いと尊敬みたいな言葉をずっと唱えていたから、それも真似したみたの。
 見ててね」


 間近に人がいて恥ずかしいけど、またもや精霊様万歳!すごい!!女神!!な台詞を口にだす。

 すると、やっぱりミストのようにまわりの空気に水気が満ちてくるのを感じた。

 そして、腕からつるりと何かが泉の中に入っていくのがわかった。

 横にしゃがんでいるれいかちゃんも息をのんだのが気配でわかったので、きっと彼女も何かを感じてくれたのだろう。

 そして、先ほどと同じように高い水しぶきが空中にはねあがった。

 その一瞬、青い長い尾をもつ人魚の姿がみえたような気がした。


「すごいわ!アンナさん!お力をかりられるようになったのね!」

 ジェシカさんが駆け寄って、両肩をつかんでくる。
エルザさんもすごいです!!とその横で嬉しそうに微笑んでいるのがみえた。


 よかった!二回目もできた!まぐれじゃなかった!

 横をみると、れいかちゃんも同じように、少し恥ずかしそうにしつつも精霊様お願い!!を口にしていた。

 静かに様子をみていると、ジェシカさんエルザさんもそれに気づいて固唾をのんで見守り始めた。

 少したつと空気に水気が混じり始めたのがわかった。

 そして、れいかちゃんの腕から何かがつたうと水面が波打ち、私のとき同様に水柱が吹き上がり、四方に水しぶきが散った。

「やった!!できた!!」

「すごいです!!レイカ様、さすがです!!!!」

 れいかちゃんの喜びの声と、お世話係の少女の絶賛の声があがった。

「やった!!れいかちゃん、やったね!!」

 私も嬉しくって、れいかちゃんに駆け寄って泉の中につかったままだった両手をとってぶんぶん振った。

「昨日からもう少しでできそうだったから、これぐらいなんてことないけど、でも、ありがとう」

 口をとがらせて言うれいかちゃんはとっても嬉しそうで、二人揃って成功したことに私はとてつもない喜びを感じた。
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