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第一章 初めての夜よりも、身体は確かに応えていく
荒波の結婚式
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短い対話が終わると、扉の外から側近の声が響いた。
「殿下、神殿の準備が整いました」
ギリアンはわずかに頷き、シルヴィアへ視線を向ける。
「……到着早々で申し訳ありません。式は本日、執り行われます」
シルヴィアは一瞬だけ瞬きをした。
(えぇ!? 今日……? 着いたばかりなのに……)
驚きはあったが、顔には出さない。
「……承知いたしました」
(想像以上の荒波だわ……)
高くそびえる大理石の柱、白い光を受けて冷ややかに輝いていた。
アーチには赤紫の大輪の花が飾られ、その香りが冬の空気に溶け込んでいる。
広い床は磨き上げられ、そこを真っ直ぐに伸びる道が祭壇へと続いていた。
その奥、主祭壇の前に、王太子ギリアンが立っていた。
黒の礼装に金糸の飾りをまとい、両手に王冠を抱く姿は、荘厳で揺るぎない。
その表情には感情の色はほとんどなく、ただ式の一つ一つを確かめるように静かに進めている。
扉が開き、シルヴィアは歩み出た。
灰色のドレスには銀糸が織り込まれ、長い裾が白い床をなぞった。
髪にはレースのヴェール、そこには細やかな刺繍が施され、陽を受けて淡く光る。
年若い花嫁の顔は凛としていたが、その瞳の奥にはわずかな緊張が宿っている。
列席する貴族たちの視線が、二人を交互に行き来する。
そこには祝意だけでなく、探るような冷ややかさも混じっていた。
(――やっぱり、歓迎されているとは言い難いわね)
シルヴィアは微笑みを崩さず、定められた歩数を進む。
香炉から立ち上る灰色の煙が、ゆるやかに空気を満たしていく。
紫の紐飾りを付けた高官たち、黒衣の護衛兵、そして珍しい立場から招かれた商人や異国の客人までもが、この瞬間を見守っていた。
教王の朗々たる声が響く。
「――この婚姻は、二つの王国を結ぶ契約であり、繁栄を願う証である」
ギリアンとシルヴィアが向かい合い、宣誓の言葉を交わす。
言葉は儀礼的で、声色に温度はない。だが、最後に交わされた指輪と握手だけは、かすかに温かかった。
ギリアンの大きな手に包まれたシルヴィアの指先は、ほんのわずかに震えていた。
(殿下に、気付かれてしまったかしら。こんなことで震えるなんて、子どもっぽいわ……)
鐘の音が高く鳴り響く。
網鳥の声が庭に広がり、まるで長い未来を告げるかのように反響する。
この日、ヴァロニア王国に新たな王妃、いや、まだ王太子妃が立った。
それは祝福の証であると同時に、嵐の始まりを意味する鐘の音でもあった。
「殿下、神殿の準備が整いました」
ギリアンはわずかに頷き、シルヴィアへ視線を向ける。
「……到着早々で申し訳ありません。式は本日、執り行われます」
シルヴィアは一瞬だけ瞬きをした。
(えぇ!? 今日……? 着いたばかりなのに……)
驚きはあったが、顔には出さない。
「……承知いたしました」
(想像以上の荒波だわ……)
高くそびえる大理石の柱、白い光を受けて冷ややかに輝いていた。
アーチには赤紫の大輪の花が飾られ、その香りが冬の空気に溶け込んでいる。
広い床は磨き上げられ、そこを真っ直ぐに伸びる道が祭壇へと続いていた。
その奥、主祭壇の前に、王太子ギリアンが立っていた。
黒の礼装に金糸の飾りをまとい、両手に王冠を抱く姿は、荘厳で揺るぎない。
その表情には感情の色はほとんどなく、ただ式の一つ一つを確かめるように静かに進めている。
扉が開き、シルヴィアは歩み出た。
灰色のドレスには銀糸が織り込まれ、長い裾が白い床をなぞった。
髪にはレースのヴェール、そこには細やかな刺繍が施され、陽を受けて淡く光る。
年若い花嫁の顔は凛としていたが、その瞳の奥にはわずかな緊張が宿っている。
列席する貴族たちの視線が、二人を交互に行き来する。
そこには祝意だけでなく、探るような冷ややかさも混じっていた。
(――やっぱり、歓迎されているとは言い難いわね)
シルヴィアは微笑みを崩さず、定められた歩数を進む。
香炉から立ち上る灰色の煙が、ゆるやかに空気を満たしていく。
紫の紐飾りを付けた高官たち、黒衣の護衛兵、そして珍しい立場から招かれた商人や異国の客人までもが、この瞬間を見守っていた。
教王の朗々たる声が響く。
「――この婚姻は、二つの王国を結ぶ契約であり、繁栄を願う証である」
ギリアンとシルヴィアが向かい合い、宣誓の言葉を交わす。
言葉は儀礼的で、声色に温度はない。だが、最後に交わされた指輪と握手だけは、かすかに温かかった。
ギリアンの大きな手に包まれたシルヴィアの指先は、ほんのわずかに震えていた。
(殿下に、気付かれてしまったかしら。こんなことで震えるなんて、子どもっぽいわ……)
鐘の音が高く鳴り響く。
網鳥の声が庭に広がり、まるで長い未来を告げるかのように反響する。
この日、ヴァロニア王国に新たな王妃、いや、まだ王太子妃が立った。
それは祝福の証であると同時に、嵐の始まりを意味する鐘の音でもあった。
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