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第一章 初めての夜よりも、身体は確かに応えていく
宴
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その夜、王宮の大広間では戴冠を祝う宴が開かれた。
長いテーブルには山のような肉料理や、宝石のように飾られた菓子が並び、音楽と笑い声が天井高くまで響く。
燭台の炎が金糸の刺繍や宝石の光を反射し、まぶしいほどの光景だった。
けれどシルヴィアは、杯を手にしながらも、人々の祝辞を半ば上の空で聞いていた。
昼間、聖堂で感じた無数の視線を思い出す。
賛美も、憎悪も、同じだけの熱を帯びて押し寄せてきたあの圧力が、まだ胸の奥に残っている。
(……あれが、王妃になるということ)
あの婚姻の申し出を、レーヴェンヌ家は断れる立場ではなかった。
けれど、あの時のわたしは、王妃というものの意味を何ひとつ知らなかった。
軽率だった自分を、今さら恥じる。
たとえ正しい道だったとしても、この覚悟を持たずに踏み出したのだと、痛感させられる。
やがて宴が一段落した頃、向かいの席からギリアンが静かに立ち上がる。
人々の間を抜け、ギリアンは迷いなくシルヴィアの椅子の横まで来た。
周囲に聞こえぬよう、低く囁く。
「……長い一日だったな」
その声には、昼間の堂々たる王の顔ではなく、ただのギリアンとしての温度があった。
シルヴィアは思わず顔を上げる。
その瞳に、昼間にはなかった柔らかさ、それはまるで、彼女だけに向けられたもののような光が宿っている気がした。
次の言葉を探す間もなく、ギリアンの手がそっとシルヴィアの手に重なる。
温かな掌が指先を包み、胸の奥までじわりと熱が広がる。
「王妃殿下。……これからも、共に」
短い言葉の中に、ギリアンの覚悟と、シルヴィアへの信頼が込められているのを感じた。
しかし、それはまだ、王と王妃としての約束だ。
シルヴィアは視線で答える。
――はい、と。
その刹那、二人の間だけに静かな誓いが結ばれた。
離れた掌の温もりだけが、いつまでも残っていた。
長いテーブルには山のような肉料理や、宝石のように飾られた菓子が並び、音楽と笑い声が天井高くまで響く。
燭台の炎が金糸の刺繍や宝石の光を反射し、まぶしいほどの光景だった。
けれどシルヴィアは、杯を手にしながらも、人々の祝辞を半ば上の空で聞いていた。
昼間、聖堂で感じた無数の視線を思い出す。
賛美も、憎悪も、同じだけの熱を帯びて押し寄せてきたあの圧力が、まだ胸の奥に残っている。
(……あれが、王妃になるということ)
あの婚姻の申し出を、レーヴェンヌ家は断れる立場ではなかった。
けれど、あの時のわたしは、王妃というものの意味を何ひとつ知らなかった。
軽率だった自分を、今さら恥じる。
たとえ正しい道だったとしても、この覚悟を持たずに踏み出したのだと、痛感させられる。
やがて宴が一段落した頃、向かいの席からギリアンが静かに立ち上がる。
人々の間を抜け、ギリアンは迷いなくシルヴィアの椅子の横まで来た。
周囲に聞こえぬよう、低く囁く。
「……長い一日だったな」
その声には、昼間の堂々たる王の顔ではなく、ただのギリアンとしての温度があった。
シルヴィアは思わず顔を上げる。
その瞳に、昼間にはなかった柔らかさ、それはまるで、彼女だけに向けられたもののような光が宿っている気がした。
次の言葉を探す間もなく、ギリアンの手がそっとシルヴィアの手に重なる。
温かな掌が指先を包み、胸の奥までじわりと熱が広がる。
「王妃殿下。……これからも、共に」
短い言葉の中に、ギリアンの覚悟と、シルヴィアへの信頼が込められているのを感じた。
しかし、それはまだ、王と王妃としての約束だ。
シルヴィアは視線で答える。
――はい、と。
その刹那、二人の間だけに静かな誓いが結ばれた。
離れた掌の温もりだけが、いつまでも残っていた。
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