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第七章 闇の中に溶ける
温かな食卓
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シルヴィアの一行は、隣町で一晩過ごした後、翌日の午後にグラディス邸へ到着した。
晩鐘の音が遠くで鳴り響く頃、ノールウッドの館に灯が入り、温かな食卓が整えられた。
古い銀器に磨き上げられた食器が並び、陶器の皿には地元でとれた小魚と根菜のロースト、クリームで煮込んだ茸のスープ、林檎のタルトなど、素朴ながらも丁寧に仕立てられた料理が湯気を立てていた。
「どうぞ、お口に合いますかしら。王宮の華やかな宴とは違い、全て山の田舎料理ですが――」
グラディス伯爵夫人が、銀の丸杓を手に、柔らかく微笑んだ。
「とても美味しいです。こういうお食事が、今のわたしには、何よりありがたいです」
シルヴィアは礼儀正しく答えた後、すこし肩の力を抜くように微笑んだ。
食卓には夫人の他に、レオナールと数名の給仕のみ。静かで落ち着いた、家族だけの夜だった。
「本当に、王妃殿下がこうしてお越しくださったこと、嬉しく思っております」
伯爵夫人は改めて、姿勢を正してシルヴィアに頭を下げた。
シルヴィアはわずかに目を丸くし、そしてやわらかに微笑み返した。
「――叔母様、ここではどうかシルヴィアとお呼びください」
そう言って、隣のレオナールに視線を向ける。
「ね、レオ?」
「……あ、うん、そうだね、ルビ」
レオナールも気軽な調子で返し、スープを口に運ぶ。
打ち合わせをしていた訳ではないが、レオナールは空気を読んだ。
「まぁ!」
伯爵夫人は目を丸くしながらも、目元には笑みを宿す。
「レオナール! そんな舌足らずではなくて、せめてルヴィとお呼びなさい、ルヴィ様と! まったく、王妃様の従弟がそれでは、見習う者も困ってしまうわよ」
笑い声がテーブルに弾けた。
長旅の疲れも、王宮の重圧も、この場だけはどこか遠いことのように思えた。
「そう言えば、リアナは、元気ですか?」
伯爵夫人がワインを注ぎながら、何気ない口調で尋ねた。
「ええ。とても優秀な方です。今は、わたしの代理として王宮に残ってくださっていて……心強い方です」
「まあ、それは頼もしい。あの子は昔から賢くて、少し気位が高いところもありましたけれど、とにかく色んな事を学ぶのが大好きなので。……殿下とも、お付き合いは?」
「仲良くしていただいてます。最近は、侍女のラシェルと親しくしているようで」
「ふふ、そうですか。異国の御友人が出来るのも、文化の違いを知る上で、良い刺激になりますものね……」
言葉を切ると、伯爵夫人はそっとカップを置いた。
そして、シルヴィアの目をしっかりと見つめ、落ち着いた声で言った。
「――シルヴィア様。明日は、わたくしと少しだけ、お時間をいただけますか?」
「もちろんです、叔母様」
「女同士の話を、たまにはしましょう。お互い、きっと少しは楽になりますわ」
そう言って差し出された手に、シルヴィアは静かに自分の指を重ねた。
晩鐘の音が遠くで鳴り響く頃、ノールウッドの館に灯が入り、温かな食卓が整えられた。
古い銀器に磨き上げられた食器が並び、陶器の皿には地元でとれた小魚と根菜のロースト、クリームで煮込んだ茸のスープ、林檎のタルトなど、素朴ながらも丁寧に仕立てられた料理が湯気を立てていた。
「どうぞ、お口に合いますかしら。王宮の華やかな宴とは違い、全て山の田舎料理ですが――」
グラディス伯爵夫人が、銀の丸杓を手に、柔らかく微笑んだ。
「とても美味しいです。こういうお食事が、今のわたしには、何よりありがたいです」
シルヴィアは礼儀正しく答えた後、すこし肩の力を抜くように微笑んだ。
食卓には夫人の他に、レオナールと数名の給仕のみ。静かで落ち着いた、家族だけの夜だった。
「本当に、王妃殿下がこうしてお越しくださったこと、嬉しく思っております」
伯爵夫人は改めて、姿勢を正してシルヴィアに頭を下げた。
シルヴィアはわずかに目を丸くし、そしてやわらかに微笑み返した。
「――叔母様、ここではどうかシルヴィアとお呼びください」
そう言って、隣のレオナールに視線を向ける。
「ね、レオ?」
「……あ、うん、そうだね、ルビ」
レオナールも気軽な調子で返し、スープを口に運ぶ。
打ち合わせをしていた訳ではないが、レオナールは空気を読んだ。
「まぁ!」
伯爵夫人は目を丸くしながらも、目元には笑みを宿す。
「レオナール! そんな舌足らずではなくて、せめてルヴィとお呼びなさい、ルヴィ様と! まったく、王妃様の従弟がそれでは、見習う者も困ってしまうわよ」
笑い声がテーブルに弾けた。
長旅の疲れも、王宮の重圧も、この場だけはどこか遠いことのように思えた。
「そう言えば、リアナは、元気ですか?」
伯爵夫人がワインを注ぎながら、何気ない口調で尋ねた。
「ええ。とても優秀な方です。今は、わたしの代理として王宮に残ってくださっていて……心強い方です」
「まあ、それは頼もしい。あの子は昔から賢くて、少し気位が高いところもありましたけれど、とにかく色んな事を学ぶのが大好きなので。……殿下とも、お付き合いは?」
「仲良くしていただいてます。最近は、侍女のラシェルと親しくしているようで」
「ふふ、そうですか。異国の御友人が出来るのも、文化の違いを知る上で、良い刺激になりますものね……」
言葉を切ると、伯爵夫人はそっとカップを置いた。
そして、シルヴィアの目をしっかりと見つめ、落ち着いた声で言った。
「――シルヴィア様。明日は、わたくしと少しだけ、お時間をいただけますか?」
「もちろんです、叔母様」
「女同士の話を、たまにはしましょう。お互い、きっと少しは楽になりますわ」
そう言って差し出された手に、シルヴィアは静かに自分の指を重ねた。
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