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漂流者、ダイヤモンドを手にする
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とある島に一人の男が流れ着いた。
荒波で帆が失われ、漂流したのだ。
男は岸に上がると、まず人をさがした。見るかぎり小さな島なので無人島かもしれない。
森の中に入ると、木造の小屋が見てきたので、どうやら人が住んでいるらしい。
男に気付いた老人が奥からやってきた。
「この島の長老じゃ。おまえさん、漂流者かい」
「そうです……あのう、水と食べ物をください、もうかれこれ三日飲まず食わずです」
言うと長老はしぶい顔をした。
「たくさん飲み食いさせてあげたいところだが、あいにくこの島には食べ物が少なく、我々先住民も毎日ひもじい思いをしておるのだ。おまえさんには一日にヤシの実一個しかあげられないがそれでいいか」
「それでいいです。そのうちわが国の船がこの島の近くを通るでしょうから、そのとき助けてもらいます。それまでの辛抱です」
長老はいったん奥に引き返すと、ナタで割ったヤシの実と、布袋を持って来て男に渡した。
「この袋は?」
「ダイヤモンドだ」
中に入っていたのは、キラキラした眩しい透明の石で人の拳ほどの大きさがある。
「こんなに大きな? これ、ダイヤモンド? 本当ですか」
「この島では約に立たんからおまえさんにあげる。国に持って帰ればいい」
「すごい……これ、換金すれば億万長者だ」
男は喜び、ぴょんぴょん跳ねた。
それから男は一日にヤシの実一個で頑張った。
乾きと空腹で気が狂いそうになっても、ダイヤモンドの輝きを見ると生きる勇気が湧く。
「耐えるのだ……国に帰ったら億万長者だ、頑張れ」
やがて男は体力を失い寝たきりになった。しかし右手でダイヤモンドを握りしめ、絶対に死んでなるものかとおのれ鼓舞した。
長老が語る。
「何年か前におまえさんと同じような男が流れ着いたが、あのときもヤシの実一個しか与えなかった。男は10日後に死んだ」
「俺は死なんぞ……絶対に死なんぞ。億万長者になるのだ」
それから何日たっただろう。大型の船が島の近くを行くのが見えた。
「あれが見えるか……おまえさんの国の船だ」
長老が男の半身を起こす。
「ふ、船……ああ、船だあ! 船だあ!」
男は立ち上がり、衣服を引き裂いて棒きれに巻き付けて旗にし、力の限り叫んだ。
船はやがて島に向かって接近してきた。
男は無事救助され、島を離れて行った。
男は痩せこけた顔に満面の笑みをうかべ、長老に別れの手を振っている。
長老は船が遠ざかるのを見送りながら、独り言をいった。
「ヤシの実一個で20日も耐えるとは大したものだ。これからまた誰か流れ着いたらこの方法で助けてあげよう」
ダイヤモンドにそっくりなその透明な石は、裏山にいくらでも転がっている。
荒波で帆が失われ、漂流したのだ。
男は岸に上がると、まず人をさがした。見るかぎり小さな島なので無人島かもしれない。
森の中に入ると、木造の小屋が見てきたので、どうやら人が住んでいるらしい。
男に気付いた老人が奥からやってきた。
「この島の長老じゃ。おまえさん、漂流者かい」
「そうです……あのう、水と食べ物をください、もうかれこれ三日飲まず食わずです」
言うと長老はしぶい顔をした。
「たくさん飲み食いさせてあげたいところだが、あいにくこの島には食べ物が少なく、我々先住民も毎日ひもじい思いをしておるのだ。おまえさんには一日にヤシの実一個しかあげられないがそれでいいか」
「それでいいです。そのうちわが国の船がこの島の近くを通るでしょうから、そのとき助けてもらいます。それまでの辛抱です」
長老はいったん奥に引き返すと、ナタで割ったヤシの実と、布袋を持って来て男に渡した。
「この袋は?」
「ダイヤモンドだ」
中に入っていたのは、キラキラした眩しい透明の石で人の拳ほどの大きさがある。
「こんなに大きな? これ、ダイヤモンド? 本当ですか」
「この島では約に立たんからおまえさんにあげる。国に持って帰ればいい」
「すごい……これ、換金すれば億万長者だ」
男は喜び、ぴょんぴょん跳ねた。
それから男は一日にヤシの実一個で頑張った。
乾きと空腹で気が狂いそうになっても、ダイヤモンドの輝きを見ると生きる勇気が湧く。
「耐えるのだ……国に帰ったら億万長者だ、頑張れ」
やがて男は体力を失い寝たきりになった。しかし右手でダイヤモンドを握りしめ、絶対に死んでなるものかとおのれ鼓舞した。
長老が語る。
「何年か前におまえさんと同じような男が流れ着いたが、あのときもヤシの実一個しか与えなかった。男は10日後に死んだ」
「俺は死なんぞ……絶対に死なんぞ。億万長者になるのだ」
それから何日たっただろう。大型の船が島の近くを行くのが見えた。
「あれが見えるか……おまえさんの国の船だ」
長老が男の半身を起こす。
「ふ、船……ああ、船だあ! 船だあ!」
男は立ち上がり、衣服を引き裂いて棒きれに巻き付けて旗にし、力の限り叫んだ。
船はやがて島に向かって接近してきた。
男は無事救助され、島を離れて行った。
男は痩せこけた顔に満面の笑みをうかべ、長老に別れの手を振っている。
長老は船が遠ざかるのを見送りながら、独り言をいった。
「ヤシの実一個で20日も耐えるとは大したものだ。これからまた誰か流れ着いたらこの方法で助けてあげよう」
ダイヤモンドにそっくりなその透明な石は、裏山にいくらでも転がっている。
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