嫌われた大賢者と未来の竜王 ~「あれ、お前の鱗って金色だったっけ?」隠居した森で見つけたドラゴンの子供が成長しすぎて怖いです~

陽好

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第1章 王国編

第22話 進化

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 僕の鱗は生まれたばかりの時は薄い肌色、成長するにつれてその色は段々と緑がかってきていて、最近では鮮やかな深緑色になっていた。しかし今の僕の鱗の色はどうだろうか、うん、明らかに銀色だ。どこからどう見ても銀色だ。控えめに言っても銀色だ。試しに軽く叩いてみると、前の鱗よりも堅いような気がした。・・・・進化?ってこと? でも何でだ? 思い当たることといえばグレーズを眷属にしたことくらいだけど・・・・
 
「デューク、体なにも問題無いのか?」

 ドレイクが心配そうな顔で聞いてくる。

「ぜんぜん平気だけど・・」

「おまえ昨日の夜ヤバかったんだぞ」

「え・・、記憶に無いけど」

「う~ん、確かに意識はなさそうだったな」

「どういうこと? 何があったの?」

「いや~、すごかったぞ。まじで」

「だから何があったの!」

「簡単に言うと、ものすごい暴れてたな」

「・・え?」

「すごい暴れてた」

「・・・・それだけ?」

「おまえ!! それだけって! お前ドラゴンなんだぞ!? ドラゴンに近くで暴れられてみろよ!?!? 怖くて寝れねえぞ!!??」

「あ、だからそんなに疲れてるの!」

 僕が手を打って納得した様子を見せるとドレイクは更に続けた。

「あと一つ気になったことがあってな、グレーズ達がお前の影に溶けていったんだよな。気づいた時にはもう半分以上がお前の影に吸収されてたな」

「・・・・暴れてたことよりもそっちの方が大問題でしょうがぁぁぁぁぁ!!!!」

「それでな、吸収され終わったと思ったら突然お前が苦しみはじめたんだよ。だけどどうしようも無いからな、とりあえず様子を見ることにしたんだよ。そのままお前を監察し続けて今に至る」

「・・・・なるほどね、つまりグレーズ達はいま僕の影の中にいて、・・・・何かしてるってことね」

「そういうことだな。ただそれがお前の鱗の色の変化と関係があるのかは全くわからん。夜だったから暗くて鱗の色もわからなかったんだよな。せめて昼だったら良かったのにな」

「そうだね」

 ある程度の現状把握が終わって二人の間に沈黙が流れた。すると僕の影がムクムクと動き出し、中から段々と何かが出てきた。ドラールかな?
 しばらくすると影はドラールの大きさを超えてしまった。そして大きさが僕の3倍ほどになった時、ようやく影は大きくなるのをやめた。影は何やら大きな動物の形をしていたが、どう見てもハイエナでは無かった。体全体を黒い影が覆っていてよく見えなくなっている。
 
「ドラール?」

 僕がそう呼びかけると、それを覆っていた黒い影が一気にパァンッ!と晴れた。影が無くなってよく見えるようになったそいつは、黒い翼をもった大きな鳥だった。信じられない大きさの真っ黒な鳥だった。体の所々に金色の毛が生えており、その爪や嘴は信じられないほど鋭かった。
 
「ドラールなの?」

「そうですご主人様! ドラールです!」

「えーっとさ、昨日の時点では君は」

「ハイエナでしたね」

「それで今は」

「鳳凰の一種の黒凰《こくおう》です」

「・・・・なんで?」

「これが我々の本来の姿なのです。しかし長い間主人がいなかったために力を失っていき、その結果あのような姿になってしまっていたのです」

「・・・・あ、なるほど」

 あまりの出来事に思考停止する僕とは対照的に、ドレイクは冷静に黒凰を観察している。

「あ、もしかして僕の鱗の色が変わった理由とかもわかる?」

「いえ、我々を眷属にすることで体が大きくなったり魔力が増大した方はおりましたが、鱗の色が変わったという方は存じ上げません」

「そっか」

「黒凰さんよ、俺の見たところじゃあ君たちもドラゴンのと似たようなブレスが吐けると思うんだが、どうだい?」

 突然のドレイクの発言に、黒凰になったドラールは動じた様子もなく答えた。

「ご名答です。一つ撃って差し上げましょう」

 なんだか黒凰になってからしゃべり方がものすごい上品になった気がするけど気のせいかな? そんなことを思っていると黒凰(ドラール)は羽ばたいていき、何も無い更地に向かって黒い炎を吐き出した。

ゴォォォ~、ボンッ!

 黒い炎が当たったところは「ジュージュー」というものすごい音と共に煙を吐き出した。黒凰の飛んでいった風で煙が吹き飛ぶと、地面がドロドロになっていた。

「岩をも溶かす高温って事か・・」

「え・・、エグすぎぃ!」

 ドラールはこちらに戻ってくると誇らしげに着地した。

「どうです、私の自慢のブレスは?」

「す、すごいです」

「ああ、やべえな」

 ドラールは嬉しそうにパタパタしている。ただサイズがサイズなので巻き送る風は中々に強かった。

 こうして僕たちは頼もしい仲間を手に入れた。
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