26 / 37
第1章 王国編
第26話 木霊
しおりを挟む
次の朝、僕は何かの大きな音で目を覚ました。なんの音だろう? 耳を澄ますと金属のぶつかり合うような「カチャカチャ」という音やサワサワと囁き合うような音が聞える。
うっすらと目を開けて周囲の様子を見回すと、少し向こうに何やら人のような、しかし明らかに人では無い鮮やかな色をした者達がいた。こちらを観察してるのだろうか、何かしてきそうな気配はない。
もう少ししっかりと見てみると、そいつらは色鮮やかな鎧を着て武器を持った人型の何かだった。人にしては少し小さいが、巨人も竜人もいるような世界だ、小人がいてもなんの不思議も無い。もしもの時に黒凰の黒い炎をいつでも出せるように、僕は体内で魔力を練った。静かに薄目でそいつらを見ていると、そいつらはすぐにどこかへ行ってしまった。
僕は呑気に寝ているドレイクを揺り起こした。
「ねえ! おきて! ねえ小人っているの?」
「なんだ! 敵か! 敵襲か!!」
ドレイクはそう言って飛び起きると、周囲を見回してこちらを見た。
「・・小人っているの?」
「・・・・、小人? 体が小さい奴らのことか? そんなの世界中にいるに決まってんだろ。エルフだって大きいのから小さいのまで色々いるし、ドワーフとかレイフとかいっぱいいるよ。おまえそんなこと聞くために俺の事起こしたのか?」
「違うよ! いや違くないけどそうじゃないよ!」
「・・何言ってんだ?」
「カクカクシカジカ、フンタラカンタラ」
「そいつらはどこにいたんだ?」
「あっちの山の方」
そう言いながら僕は左側にある山の手前の茂みを指さした。
「そこか・・山の方から出てきたのか?」
「それはわからないけど、山の方に戻ってったよ」
「う~ん、なるほどな~」
「何かわかった?」
「う~ん、まあわからんことは無いが、分かったとも言い難い」
「どうゆうこと?」
「まあそんなに気にしなくていいんじゃないか? なにもしてこなかったんだろう?」
「まあね・・」
「多分大丈夫だろ」
「多分ねぇ・・」
「まあとにかく出発しようや、もう食料も全くないし」
「え! なんでないの!?」
「え? だって昨日奮発しようって・・」
「何にも残ってないの!?」
「おう、まったく! 完全にスッカラカンだな」
「なんでやぁねぇぇぇぇぇん!!!!!」
「ダッハッハッハッハ」
*****
「かなり上まで飛んで確認したけど山と平原しか見えないよ!」
「え~っと、ドラゴンの平均飛行高度が400メートルで、高いって行ってたから今のお前の目線の高さが大体600メートルとすると見える距離は大体92.6kmで・・・・」
「ん? どういうこと?」
「まあ少なくとも100キロ以内には王都は無いって事だな」
「・・・・100キロって、どれくらい?」
「俺が1日頑張って進める距離が大体40キロだから、まあ全力で進んで3日くらいの距離だな」
「ん? その中には王都は無いんだよね?」
「そうだな・・」
「だめじゃん・・」
「そうだな・・、ダッハッハッハ」
「何笑ってんの!」
「いやけど多分途中に人家とかがあるからそこでご飯もらったりすればいいじゃねえか」
「無いかもしれないじゃん!」
「まあ何日か飯抜きでもいいじゃねえか、最近食べ過ぎてたし」
「それドレイクだけでしょ!」
「ハッハッハ、まあまあ気楽に行こうや!」
そうしてしばらく進んでいくと、段々と周囲に霧が立ちこめはじめ、すぐに1メートル先も見えないほどの霧に囲まれてしまった。
隣を歩くドレイクが僕の方に近づいてきて言った。
「何か聞えたらすぐに教えてくれ」
「うん、わかった」
「絶対飛ぶなよ」
「・・うん」
なんで駄目なのか聞こうかとも思ったが、今は周囲の警戒を優先した。
耳を澄ませて慎重に進んでいると、「カサッ」という何かのこすれるような音が聞えた。
「右! なんか聞えた」
僕がそう言うと、ドレイクは青く光る球をそっちに向かって放った。球は周囲の霧をぼんやりと照らしながら進んでいったが、特になんの影も浮かんでこなかった。
すると今度は背後から「カチャッ」という何かのぶつかるような音が聞えてきた。
「後ろ!」
僕がそう叫ぶのとほとんど同時にドレイクが青い球を放った。すると、大きな人の影が霧に映し出されたが、影はもの凄い速さで移動してすぐに見えなくなってしまった。
「今の何?」
「俺の予想が正しければあれは木霊《こだま》の一種だな」
「木霊?」
「木の精霊の総称だ。森の性質によって木霊の性質も変わるんだ。この前まで住んでた森で言えば、あそこの木霊は基本的には優しかった。しかしこの辺りの木霊は少し意地悪なんだろうな、多分俺たちで遊ぶつもりだろ」
「・・どうやって?」
「ひたすら霧の中をさまよわせたり、吸い込むと寝ちまう花粉を一生吸わせたりするんじゃないか?」
「・・・・なんで?」
「・・面白いんじゃないか?」
「・・・・なにが?」
「いや知るか、お前アースドラゴンなんだから訊いてみろよ。」
「どゆこと?」
「アースドラゴンは木霊と話せるんだ、たぶん、俺の研究が正しければ」
「どうやって?」
「しらねえよ! 知ってたら多分なんて言うか!!」
「え~、それじゃ話しようがないよ~」
「・・とりあえず何でもいいから話しかけてみろよ」
「どうやって?」
「念じるとか、叫ぶとか?」
「・・・・じゃあ念じてみる」
そう言って僕は木霊に呼びかけてみた。
(木霊さん! 木霊さんですか? もしそうだったら返事をください!)
(・・・・)
(お名前なんて言うんですか? 何歳ですか? 僕はカレーが好きなんですけど好きな食べ物はなんですか?)
(・・・・・・)
(最近成長期なのかもしれないンですけどお腹がよく空くですよね)
(・・・・)
(米派ですかパン派ですか?)
(・・・・)
(じゃあ犬派ですか猫派ですか?)
(・・・・)
「なんて念じてるんだ?」
「・・好みとか」
「・・・・は?」
「好きな食べ物とか聞いてた。あと名前とか」
「・・・・はぁ」
なんでため息疲れたんだろ? ドレイクが何でもいいって言ったのに。
デュークが何度呼びかけても、木霊からの返事は返ってこなかった。
うっすらと目を開けて周囲の様子を見回すと、少し向こうに何やら人のような、しかし明らかに人では無い鮮やかな色をした者達がいた。こちらを観察してるのだろうか、何かしてきそうな気配はない。
もう少ししっかりと見てみると、そいつらは色鮮やかな鎧を着て武器を持った人型の何かだった。人にしては少し小さいが、巨人も竜人もいるような世界だ、小人がいてもなんの不思議も無い。もしもの時に黒凰の黒い炎をいつでも出せるように、僕は体内で魔力を練った。静かに薄目でそいつらを見ていると、そいつらはすぐにどこかへ行ってしまった。
僕は呑気に寝ているドレイクを揺り起こした。
「ねえ! おきて! ねえ小人っているの?」
「なんだ! 敵か! 敵襲か!!」
ドレイクはそう言って飛び起きると、周囲を見回してこちらを見た。
「・・小人っているの?」
「・・・・、小人? 体が小さい奴らのことか? そんなの世界中にいるに決まってんだろ。エルフだって大きいのから小さいのまで色々いるし、ドワーフとかレイフとかいっぱいいるよ。おまえそんなこと聞くために俺の事起こしたのか?」
「違うよ! いや違くないけどそうじゃないよ!」
「・・何言ってんだ?」
「カクカクシカジカ、フンタラカンタラ」
「そいつらはどこにいたんだ?」
「あっちの山の方」
そう言いながら僕は左側にある山の手前の茂みを指さした。
「そこか・・山の方から出てきたのか?」
「それはわからないけど、山の方に戻ってったよ」
「う~ん、なるほどな~」
「何かわかった?」
「う~ん、まあわからんことは無いが、分かったとも言い難い」
「どうゆうこと?」
「まあそんなに気にしなくていいんじゃないか? なにもしてこなかったんだろう?」
「まあね・・」
「多分大丈夫だろ」
「多分ねぇ・・」
「まあとにかく出発しようや、もう食料も全くないし」
「え! なんでないの!?」
「え? だって昨日奮発しようって・・」
「何にも残ってないの!?」
「おう、まったく! 完全にスッカラカンだな」
「なんでやぁねぇぇぇぇぇん!!!!!」
「ダッハッハッハッハ」
*****
「かなり上まで飛んで確認したけど山と平原しか見えないよ!」
「え~っと、ドラゴンの平均飛行高度が400メートルで、高いって行ってたから今のお前の目線の高さが大体600メートルとすると見える距離は大体92.6kmで・・・・」
「ん? どういうこと?」
「まあ少なくとも100キロ以内には王都は無いって事だな」
「・・・・100キロって、どれくらい?」
「俺が1日頑張って進める距離が大体40キロだから、まあ全力で進んで3日くらいの距離だな」
「ん? その中には王都は無いんだよね?」
「そうだな・・」
「だめじゃん・・」
「そうだな・・、ダッハッハッハ」
「何笑ってんの!」
「いやけど多分途中に人家とかがあるからそこでご飯もらったりすればいいじゃねえか」
「無いかもしれないじゃん!」
「まあ何日か飯抜きでもいいじゃねえか、最近食べ過ぎてたし」
「それドレイクだけでしょ!」
「ハッハッハ、まあまあ気楽に行こうや!」
そうしてしばらく進んでいくと、段々と周囲に霧が立ちこめはじめ、すぐに1メートル先も見えないほどの霧に囲まれてしまった。
隣を歩くドレイクが僕の方に近づいてきて言った。
「何か聞えたらすぐに教えてくれ」
「うん、わかった」
「絶対飛ぶなよ」
「・・うん」
なんで駄目なのか聞こうかとも思ったが、今は周囲の警戒を優先した。
耳を澄ませて慎重に進んでいると、「カサッ」という何かのこすれるような音が聞えた。
「右! なんか聞えた」
僕がそう言うと、ドレイクは青く光る球をそっちに向かって放った。球は周囲の霧をぼんやりと照らしながら進んでいったが、特になんの影も浮かんでこなかった。
すると今度は背後から「カチャッ」という何かのぶつかるような音が聞えてきた。
「後ろ!」
僕がそう叫ぶのとほとんど同時にドレイクが青い球を放った。すると、大きな人の影が霧に映し出されたが、影はもの凄い速さで移動してすぐに見えなくなってしまった。
「今の何?」
「俺の予想が正しければあれは木霊《こだま》の一種だな」
「木霊?」
「木の精霊の総称だ。森の性質によって木霊の性質も変わるんだ。この前まで住んでた森で言えば、あそこの木霊は基本的には優しかった。しかしこの辺りの木霊は少し意地悪なんだろうな、多分俺たちで遊ぶつもりだろ」
「・・どうやって?」
「ひたすら霧の中をさまよわせたり、吸い込むと寝ちまう花粉を一生吸わせたりするんじゃないか?」
「・・・・なんで?」
「・・面白いんじゃないか?」
「・・・・なにが?」
「いや知るか、お前アースドラゴンなんだから訊いてみろよ。」
「どゆこと?」
「アースドラゴンは木霊と話せるんだ、たぶん、俺の研究が正しければ」
「どうやって?」
「しらねえよ! 知ってたら多分なんて言うか!!」
「え~、それじゃ話しようがないよ~」
「・・とりあえず何でもいいから話しかけてみろよ」
「どうやって?」
「念じるとか、叫ぶとか?」
「・・・・じゃあ念じてみる」
そう言って僕は木霊に呼びかけてみた。
(木霊さん! 木霊さんですか? もしそうだったら返事をください!)
(・・・・)
(お名前なんて言うんですか? 何歳ですか? 僕はカレーが好きなんですけど好きな食べ物はなんですか?)
(・・・・・・)
(最近成長期なのかもしれないンですけどお腹がよく空くですよね)
(・・・・)
(米派ですかパン派ですか?)
(・・・・)
(じゃあ犬派ですか猫派ですか?)
(・・・・)
「なんて念じてるんだ?」
「・・好みとか」
「・・・・は?」
「好きな食べ物とか聞いてた。あと名前とか」
「・・・・はぁ」
なんでため息疲れたんだろ? ドレイクが何でもいいって言ったのに。
デュークが何度呼びかけても、木霊からの返事は返ってこなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
465
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる