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1章 BIG3
三幕C 『分相応』
しおりを挟む少年シアと少女ミア。
最下層に住む子供の超人。双子の兄妹である。
「ミアちゃんが裏街に連れて行かれた……か」
最下層自警団の拠点のひとつで、事情を聞き終えた自警団リーダーが先程までの笑顔からは想像もできない険しい表情で呟いた。
赤毛の少年、シアは無言でこくこくと頷く。
シアの訴えを聞いたシルクとキクチは、自警団の拠点に戻った。
子供の誘拐という事件の発生に、先程までは居なかった自警団のメンバーも同席し話を聞く。全員が一様に険しい表情である。
たどたどしく、シアが話した内容によると、黒服にサングラス、マスクを着けた男に妹のミアが捕まり、裏街に連れて行かれたという。
「リーダー。サングラスにマスクというと……」
「最近、入区した一団ですか。最下層降りが早かったので、元より裏街関係者かとは推測できていましたが……随分と大胆な動きですね」
どうやら自警団は誘拐犯に思い当たる節があるらしい。キクチはその様子から、攫われた子供はすぐに助かるのだろうと、ほっと胸を撫で下ろした。しかし、リーダーの顔は険しいままで、キクチはすぐにその認識が誤りであった事を理解する。
リーダーは後ろに立つ自警団のメンバーを振り返る。
「アルフベアー氏に連絡を。ミアちゃんの捜索を依頼して下さい。フリッカー一味が怪しいという事も伝えて構いません」
「はい」
アルフベアー。下層の統治者。裏街を取り仕切る者。
彼に連絡をし、捜索を依頼するのは当然とも思える。
ただ、誰一人としていい表情はしていない。
むしろ、張り詰めたような空気が漂い、誰もがそれ以上口を開かなかった。
空気を破るように、シルクが立ち上がる。
「リーダー。まさか、アイツに丸投げするんですか?」
アイツ、アルフベアーの事だろう。
丸投げという聞こえの悪い言葉に対して、リーダーは取り乱す事も包み隠す事もなく、小さく頷いた。
「我々の管轄はあくまで居住区です。裏街はアルフベアー氏の管轄。彼にお任せするしかありません」
シルクがそこで声を発した。
「何、日和った事言ってるんですか。こっちの住民が攫われたんですよ」
彼女は不満を感じている。誰の目からも明らかだった。
硬い表情ではあるものの、その表情を崩さないリーダーからは心中を察する事はできないが、周りの自警団メンバーを見ると、シルクと限りなく近い感情が、憤りがあるようにキクチには見えた。
リーダーはしばらく黙る。その視線がゆっくりと、ぶるぶると震えている少年シアに向く。まるで何かを見通すかのような目に射貫かれ、びくりと大きくシアが肩を弾ませた。
「……シア君。正直に言って欲しい。君は、ミアちゃんは、『本当に裏街に入っていない』んだね?」
シアがもう一度大きくびくりと震える。まるで悪戯がバレた子供のような反応に、キクチも理解した。
「調べれば分かる事ですよ。裏街に繋がる道には監視カメラがあります」
もう言い逃れできないと理解したのか、シアは恐る恐る口を開く。
「あ、う……少しだけ。ボ、ボールが裏街の道に入っちゃったんだ。だから、ミアが取りに行くって。入った瞬間に、ミアが……本当に少ししか入ってないんだ」
言い訳混じりに認めるシア。ミアは裏街にほんの少しだけ踏み入ったという。
リーダーは、目を閉じてふうと息を吐いた。
「……でしょうね。いくら裏街の無法者といえど、アルフベアー氏の定めた『境界』を割ることは絶対のタブー。彼らは裏街でしか、手を汚さない」
そして、冷めた表情を持ち上げ告げる。
「シルクちゃん。分かりましたか? 我々の管轄外です。アルフベアー氏に任せるしかありません」
「ふざけないで下さいよ!」
シルクが声を荒げる。
「アイツが本当に動いてくれるとでも!? こんな黒スレスレのグレーラインの問題、アイツが見過ごす訳がないじゃないですか! 今回の誘拐、アイツは絶対容認してる! 捜索依頼を出しても、どうせロクな返事が……!」
「やめなさいシルクちゃん」
リーダーが低く小さな声で言う。
目を閉じ、重々しく発した言葉に、シルクは言葉をぴたりと止めた。
キクチは困惑する。
アイツ、アルフベアーが、誘拐を容認している?
俄には信じがたい言葉だった。
きっとそれは、最下層におけるタブーなのだろう。自警団の全員がまるで聞こえていないふりでもしているかのように、シルクから目を逸らしていた。
悔しそうにシルクが口をぎゅっと結ぶ。
「……私達が、動かないと……」
「やめなさい」
言い掛けたシルクを制するようにリーダーは強く言う。
閉じた目が開き、鋭い眼光がシルクを睨んだ。
「我々に裏街での活動の権限はありません」
「そんなの……!」
「越権行為はアルフベアー氏の定めた『境界』の維持に影響を及ぼします。『表と裏は交わらない』。表の守りの象徴たる我々が、その禁忌を犯す事の意味が、シルク、君に分かりますか?」
言い淀むシルク。キクチはリーダーに出会ったばかりで、たった短い間しか彼を見ていないが、それでも「似合わない」と思った。
鋭い目付きに威圧的な声色、それだけで彼の『警告』の本気さがよく分かった。
最下層自警団は裏街には関われないのだ。
キクチは深刻な表情を崩さないまま、マスクに隠した口元に手を添えた。
―――困ったなぁ。
キクチの立つ位置からはシルクの表情は窺えない。恐らくは、この場で最も憤りを露わにしているであろう彼女。彼女が今、どんな顔をしているのか。キクチにはそれがずっと気になっていた。声を荒げて異議を唱えていた彼女は今では完全に沈黙している。
気まずい沈黙が続き、やがて険しいリーダーの表情が緩んだ。
「大丈夫ですよ。アルフベアー氏も悪いようにはしないはずです」
慰めとも言えない、無責任とも思える一言。それを聞いた瞬間に、後ろから見ていたキクチにもシルクが強く拳を握ったのがはっきり分かった。シアが不安げにシルクの顔を見上げている。
シルクの憤りがひしひしと伝わってくる。キクチは眉間に指を当て、ぎゅっと目を瞑った。
「……分かりました」
シルクは踵を返し、シアの手を取った。
「シルク」
「大丈夫です。みんなに迷惑を掛けるような事はしませんから」
リーダーの呼び止めに対して、早口でシルクは答える。一切振り返らずに、シアを連れて、シルクはリーダーの前から引き下がった。
シルクが部屋から出て行くと、リーダーは傍に立つ自警団の一員に手招きをする。そして、小さな声で指示を出した。
「シルクちゃんを見張っていて下さい。無茶をしないように」
「はい」
「宜しく頼みますよ。私は少し用事がありますので」
リーダーが席を立つ。そして、部屋の隅で立つキクチを見た。
「あれ。君、居たんですか」
「はい。ずっと居ました」
「これは失礼。お見苦しい所を」
気付いていなかったのか。キクチは苦笑した。
「申し訳ない。案内はまた今度にしましょう。自警団の寮を案内させます。そこならば安全ですので」
物騒な事件を不安に思わせない為の明るい声色に、キクチはこくりと頷いた。
----
自警団の寮はアパートのようだった。
二階建ての建物に小さな部屋が多く入っている。部屋の数を見るに、そこまで自警団のメンバーは多くないのかも知れない。シルクの部屋は一階にあり、彼女を見張るよう命じられた自警団メンバーが、他のメンバーと話しているところを聞いたところ、どうやらシアを連れて部屋に戻っているらしい。
部屋の前では見張りのメンバーが立っており、シルクが早まった行動に出ないかを監視している。
キクチは嫌な予感を覚えながら、一階の一室、彼用に貸し出された部屋のベランダから顔を出す。
―――困ったなぁ。
緑色のジャージを着た、縁日で売っているようなヒーローのお面を被った不審者が、一階の窓から飛び出した。
「あ」
不審者とキクチは目を合わせる。互いに相手の存在に気付いた。
自警団の寮のベランダは、別の建物を囲う塀に面している。塀と建物の隙間は人一人がギリギリ通れるくらいの広さである。細身な不審者は、何とかそこを通れそうであった。 キクチは勘がぴったり当たった事に内心げんなりしながら、不審者の名を呼んだ。
「シルクさん」
先程までは学校指定の赤ジャージを着ていた彼女が、今では市販の緑色のジャージに着替え、ヒーローのお面を着けている。更に首には赤いマフラー。変装のつもりだろうか。キクチに気付いたシルクは、キクチにぐいと顔を寄せて、押し殺した声で言う。
「チクったら殺す」
直球な脅しにキクチは頭を抱える。
―――ああ、本当に困ったなぁ。
シルクの去り際の目を見たキクチは直感していた。
これは無茶苦茶をやらかす人間の目である、と。
案の定、見張りがいる事も見抜いた上で、それを出し抜き一人行動を起こそうとしていたシルク。彼の深い溜め息は、彼女のド直球な脅しよりも、勘が当たってしまった事に対してのものだった。
脅しに対して、キクチは「はい分かりました」と屈する事なく、シルクの目を真正面に見て問い掛ける。
「シルクさん。まさか、裏街に一人で乗り込むつもり?」
「関係無いでしょアンタには」
「関係有るよ、抜け出すの見ちゃったんだから」
ヒーローお面の奥で、不満たっぷりにシルクの目が尖ったように見えた。
「……『自警団として』行ったら問題になるけど、無関係な一人として行動するなら関係ないでしょ」
その為の変装。シルクはやはり一人で誘拐犯の元に乗り込むつもりのようだ。
キクチは小さな声で言った。
「やめた方がいい」
「だから……」
「迷惑かどうかじゃない。シルクさんが危ないって言ってるんだよ」
シルクは少しお面の奥の険しい表情を崩す。
「シルクさんは強いのかも知れないけれど、どんな相手なのか分からないんでしょ? それに、何人居るのかも分からない。そこに一人で乗り込むなんて無謀だ」
「……だったら、ミアを見捨てろって、そう言いたいの?」
「そうじゃない」
「だったら、アンタが代わりにミアを助けてくれるっての? できないでしょ?」
キクチは閉口した。彼の反応に、シルクは深く溜め息をつき、ベランダの柵を乗り越える。彼女は最初から彼に期待などしていない。一般人を巻き込むつもりもない。ちょっとした脅しのつもりで言ったのだが、思いの外深刻な表情で言い淀んだキクチが少し気になったが、これ以上構っているのも時間が惜しい。
「……心配してくれてありがと。でも、放っとけないの」
「ま、待って!」
シルクはその一言を最後に、柵を跳び越え、隣の塀に飛び乗った。そして、身軽な猫の様に、塀の上を駆けていく。
キクチの制止も虚しく、シルクは一人、裏街に向けて走り出した。
「……あー、もうっ!」
がしがしと、髪を掻き乱し、キクチは声を荒げる。
「……最悪だ。いきなり誘拐事件? しかも、外部の組織が? おかしい。何でよりにもよってこの時期に? タイミングが悪すぎる。いや、タイミングが良すぎる? 待て。待て待て待て待て。もしかして……? って、違う! 今は考えてる場合じゃない!」
キクチはポケットに突っ込んだ携帯電話を取りだした。今は電源を切っている携帯電話。それをじっと見つめた後、キクチは苦々しく目を瞑り、ふるふると震える手で、意を決した様に電源ボタンに指を掛けた。
「これを押したら終わるこれを押したら終わるこれを押したら終わる……!」
自分の中で悪魔と天使が戦っている。そんな感覚を覚えながら、キクチはそれでも、泣きそうな顔で、ぐっとボタンに手を掛けた。
「……でも、あんなの放っておける訳ないだろ!」
携帯電話の画面が点いた。
これで終わった。
キクチの『逃亡計画』が全て台無しになった。
それでも、彼にはとてもできなかったのだ。
目の前で、危険に突っ込んでいく少女を放っておく事など。そして、見ず知らずとはいえ、知ってしまった誘拐された子供のことを見捨てる事など。
携帯が震える。早速、着信が入った。
予想通りに見覚えのない番号が、画面に表示されていた。
普段ならば絶対に取らないそのコールを、今日は即座に取る。そして電話を耳に当て、聞き慣れた声にうんざりしながら、キクチは小さく呟いた。
「今は最下層に居る」
それだけ告げて、キクチは電話を切った。
続けてまた電話が鳴る。やっぱりか、とうんざりしながら、キクチは再び電話を取る。今度は知っている電話番号の主が声を発するよりも先に、キクチは短く用件を告げた。
「分かってるんだろ。僕も分かった。だから、とっとと教えてくれ」
電話の相手がくすりと笑った。そして、短くとある男の名前をひとつを告げた。
それだけ聞くと、少年は相手が続けて喋るよりも先に電話を切る。
そのタイミングでまた電話が鳴った。
―――最悪だ。
うんざりしながらも、ベランダから部屋に戻り、少年はすぐに玄関へと向かう。電話先の相手の喧しい声に「分かった分かった」と答えながら、最後に小さく「頼む」と呟き、再び電話を切った。
一旦コールは収まる。しかし、メールの受信を告げるバイブが絶えず鳴り響く。それでも、電話の電源はもう切れない。切るわけにはいかない。
玄関で靴を履き、キクチは扉を開け放つ。
「……もう、なるようになれッ!」
キクチは口を覆うマスクに指を僅かに引っ掛けて、最下層の街へと駆けだした。
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