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第9話 炎に包まれる王国
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ワシが、なんとか、ミレイとエルフたちと転移で城へ戻って来たタイミングは、既に遅かった。
膨大な魔力を行使した影響で、ミレイは、ワシの横でくたばっている。
ワシも、転移する前に吸い込んだ煙のせいで意識を朦朧とさせながらも、ふらふら、城の外の様子を確認するために、城壁の横穴から顔を出す。
城下を見渡すと、そこにはゴブリンとケンタウロスの群れが突撃しようとし。
軍勢を受け止める文太の部隊は徐々に、城の間際まで後退を余儀なくされた。
どうやら、かなり時間が経ってしまっていたようだった。
移動距離に応じて、時間間隔も変わるのかと、ワシは妙な感覚に陥る。
そして、急いで一番の懸念点であった、右翼と左翼の巨人級のゴブリンを探す。
あれ、いない。
ワシはもう一度、目を凝らして探しだす。
血に染まった平野からは、丸太のような断面で切り落とされた正体不明の大柄の巨体は転がっていた。
やったのか?
ほんとにやったのか?
ワシは思わずガッツポーズをする。
直政が作戦を立ててやってくれたのだと、ワシはいつものように推測する。
そして、では、次の行動を考えなければと、周囲の情報をできるだけ読み取るために、順番に状態を確認していく。
向かって正面の平野には大勢のケンタウロスとゴブリンの死体の山が転がっている。
弓矢の雨が降り注いだあとがあった。
あの中では、なにも残らないだろう。弓矢も特殊品なのか、地面を抉っているものも時折、存在している。
きっと、直政が本気で、興隆の意見を伺いながら、作り上げたのだと推測する。
その死体の面積を鑑みても、ケンタウロス軍は半壊。
ゴブリンの軍勢は左翼と右翼から中央に集まっていた軍は半壊。
およそ、1万の軍勢が城攻めを行っているということか。
2万から1万の部隊を削った直政の戦略の影響はとても大きい。
しかし、未だ戦力は5倍の差がある。
これも、こちらに全く損傷がないことが前提で、劣勢であることに変わりはない。
まだ、作戦が足りない。
ワシはそう考える。
5倍の戦力差を覆すには、あと2,3手足りないと。
そのまま、戦闘に持ち込めば、ジリ貧。
でも、地の利として活かしていた距離はもうすでに無い。
おそらく、弓矢も使い果たし、文太の部隊も限界が近いはずだ。
思案を巡らせていると、遠方から別働隊の騎馬隊の姿が見える。
先頭を走っているのは、興隆の娘の紅花《べにか》だった。
勇ましく直刀を構えて、城攻めを行う1万の軍勢に挟撃を行おうとしている。
これで、1対1で5分5分の勝率に変化が生じる。
ゴブリンはまだしも、ケンタウロスは旋回には時間がかかるし、すし詰め状態ではお得意の突破力は活かせない。
しかし、興隆の娘の紅花《べにか》の手勢が敵軍を押すには、手勢が足りない。すると、左翼の丘陵の方角から、ほら貝の音が聞こえてくる。
戦闘を走るのは、弓の名手。長老の興隆だった。慣れない長剣を手に愛娘の軍勢に同じく5百の軍勢を率いて体当たりを行う。
娘に負けてられないという長老の気概が聞こえてくるようだった。
ワシは関心をしていると、左翼と右翼のゴブリンたちが剣撃で吹き飛ばされるのを目撃する。
幸長《ゆきなが》と宋雲《そううん》だった。
幸長《ゆきなが》は大太刀を振り回し、宋雲《そううん》は素早い剣術で打刀《うちがたな》を振り、何十人力の力を発揮する。
1万に対して、こちらの味方は総勢1500+α(武将2人の武力)。
おそらく、丘陵で構える直政の軍勢は500。本陣の軍勢をこれ以上、割くことはないだろう。
挟撃も相まって、城への圧力はいっそう、強いものがかかる。
そして、ついに城門が開けられ、大きな城壁の内部・城下内での戦闘が始まり、
ガタガタという階段を駆け上がる音をして、文太たちが徹底抗戦の準備をしだした。
ワシがいる3階に文太が駆け上がったとき、城内で慌てるワシと、くたばるミレイ。救出したエルフたちを見て、文太が騒ぐ。
「なぜ。殿がこんなとこに居るんだ!」
「なぜって、、牝馬撹乱作戦の後、転移でこちらに戻って来たのじゃよ」
ワシは驚いた表情を作る文太に回答する。
しかし、その回答に、文太は表情を曇らせる。
まずいな。
え、まずいって。なに?
ワシは思わなかった文太の反応に焦る。
軍勢が増えたら、良いことあるのでは?
こちとら、魔法が使えるエルフちゃんを連れてきたんですよ。と。
待ちに待った増援ですよと。
一生懸命アピールしようと考える。
「この城は炎で包まれる予定なんだ。最後の1万の軍勢。これを仕留めるには、魔獣たちを誘導し、城ごと燃やすしかないというのが、直政の決断だ。俺達はこの城の中にギリギリまで、軍勢を引きつけ、紅花《べにか》たちが、軍勢の出口に蓋をする算段だ。」
文太は、拙い言葉でその緊迫感と、状況を身振り手振りで伝える。
「すでに、火種は仕込んであって、一度火をつけたら、導火線を通って、あちこちが燃え上がる予定だ。俺は最悪、討ち死ににしても良いと思って、承諾したが、殿がいるのでは、わけが違う」
なるほど、焦っている様子がわかった。
ワシは文太に、落ち着かせる。
「火をつけなければ、良いのではないか?残り1万は別の方法で仕留めることにして」
ワシは、自分が危ないというよりも、文太が危ない橋を渡ろうとしていることに驚き、何か方法を考える。
「いや、もう、方法はない。時間はない。殿は早くここから脱出してくれ」
「えええい。なんで、文太はいつもそうなるのじゃ。己の命を捨てるなど容易いことだ。捨てずに生き延びる方法を考えよ」
ワシは長年連れ添ってきた戦友の言葉に、動揺する。
しかし、どうすればよいのじゃ。確かに、文太話すとおり。
この5倍の戦力差を覆すには、火攻めのような、大規模の範囲攻撃が必要となる。
「エルフたちは、城下に入り込んだゴブリンのみを燃やすような範囲攻撃はできないのか」
ワシは、見慣れない場所で、動揺を隠せないエルフたちに話しかける。
「すじょげふふぬぬ」
「あー。何言ってるかわからん。ミレイ通訳を頼む」
「うへぇ」
まずい。ミレイはまだ、くたばっている。使い物にならん。
「と、とにかく。早まるな。文太よ。時期尚早じゃ。」
そう告げた途端、城が揺れる。
な、なんじゃ。
巨人級のゴブリンは倒したはず。
なぜ。
なぜ、今、城が揺れるんじゃ。
急いで城の外を眺めると、空を飛ぶ鳥の姿があった。
目を凝らすと、ちゃんと胸がある鳥だった。
いやいやいや。
ワシは近づいてくる鳥に焦点を合わす。
間違いなく、セクシーなお召し物をされている鳥たちだった。
「あ。あれは、イカロスです。翼の生えた民。隣国ではないはずですが、なぜ。」
ミレイはだるそうな体を引きずりながら、壁に捕まりながら、必死に横穴から覗き込む。
どんどん揺れる間隔が狭まっていく。一気に遅いにかかってきているのだと、体で感じる。
きゃっ
ミレイが、尻餅をつく。
そして、ワシは目にしたくないものを見てしまった。
そう。イカロスたちが、こちらに向かって、火炎瓶を投げてきたのだ。
彼らは、両手で抱えた火炎瓶をこれでもかと、投げつける。
案の定、火の手がすぐに城の周りを囲み、あっという間にこの部屋の周囲も赤く染まる。
熱い。床の温度も段々上がってきた。
「え、なんで?どうして?」
ミレイは、急に頭が冷えたのか、温まったのか、騒ぎ出す。
ワシはもう一度、外の軍勢を確認する。
おそらく、新たな敵イカロスは十数羽。
外にいたケンタウロスとゴブリン勢は、完全に紅花《べにか》たちが、出口に蓋をしていた。
あとは、真っ黒焦げになれば、ワシらの勝ち。
もはや、戦闘の優先順位は変わった。
その1、ワシらは、火の手が完全に王宮の上まで上がる前に脱出する必要がある。
その2、イカロス共をかいくぐって、脱出する必要がある。
その3、ゴブリンたちが炎を逃れるために、階段を登ってくることを阻止する必要がある。
故に、ワシたちは、体にムチを打ちつつ、王宮の最上階に上がるために階段を駆け上がる。
そして、歩けないミレイを急ぎ、お姫様抱っこというやつをしながら、階段を駆け上がり、考える。
回せ。回れ。思考よ。
直政の本陣は、このあとどう動く?これ以上、敵の増援が無いと踏めば、こちらに助けに来るのか?
それとも、イカロスも漁夫の利を狙ったこちらへの増援と捉えるのか?
文太の話だと、このまま、この戦は放置され、イカロスの襲撃も都合よく為すがままに終局となる。
ワシがここにいると分かれば、本陣が救助に動くか?
「私のことは、置いていって」
ワシに抱えられているミレイは、弱々しく話しかける。
「こんな役立たずは、見殺しにしてもらって、構わないわ。」
「あなたが、亡くなってしまうことのほうが、私には辛いの」
ミレイはぼそぼそと、ワシの胸元でつぶやく。
「ええい。うるさい。黙って。ジッとしておれ」
ワシはミレイのつぶやき声に思考が中断されて、イライラする。
「うん。。」
ミレイはいつもは、すぐに歯向かってくるのに、今回は流石に状況がわかっているのか、すぐにおとなしくなった。
「ありがとう」
え。なんで。
ミレイの反応に驚きながらも、また思考を巡らす。
大事なのは、終局を回避する方法である。
1.このまま、屋上まで、上り詰めワシがここにいることを伝える。
2.直政がいるあんなに遠い場所からワシがいくら叫んだところで、その声は届かない。
3.ましてや、屋根に登ると、イカロスが襲ってくるために、巨大な城壁の外で蓋をしている紅花《べにか》たちに、状況を伝えるのはとてもむずかしい。
ええい。どうすれば、良いのじゃ。
「殿っ。殿!!」
なんじゃこんな時に
そう言われて、振り向くと、文太が話しかけてくる。
「この先、もう少し進めば、塔の出口から、城の屋根に飛び移れる。
俺は、戻って、ゴブリンの部隊食い止めるから、このエルフたちもよろしく頼みますよ」
文太は、そう言うと、急いでここから立ち去ろうとする。
わけもわからず、文太に手を惹かれてついてきたエルフたちは、寂しそうに文太を見上げていた。
ワシは、その様子を確認しながらも、文太に声をかける。
「絶対に。戻ってくるのじゃぞ。ワシは屋根のイカロスどもをなんとかするから。
お主も、生き残るのじゃぞ」
ワシがそう言うと、文太は驚いた表情を浮かべながら、笑って答える。
「いくつもの戦場を殿と生き抜いてこれた。殿がそういうなら、今回も必ず、戻ってくる」
そう言って、走り去る文太の背中を確認しながらも、ワシは外の光が差し込む出口へと向かった。
とにかく時間はない。
直政に自分の居場所を知らせる方法は、動きながら考える。それしかない。
塔と屋根が一体となっている王宮の瓦屋根には、少し平になっている部分があった。
ワシはそこにエルフや、ミレイを連れて、出る。
眩しい太陽が出ている。牝馬撹乱作戦が真夜中だったせいか、変な感覚に
襲われつつも、目の前の様子を確認する。
そこには、屋根の上で「飛ぶのが疲れた」と、座りながら、笑いながら、城下に火炎瓶を投げ込むイカロスたちの姿があった。
「いやぁ。楽勝だな。まさか、サキュパス軍とゴブリンケンタウロス連合軍が戦っている最中、どっちも倒せるような作戦が実行できるなんて」
ワシたち、愉快におしゃべりをするイカロスに攻撃を受けていた。
舐められたもんじゃ。
ワシは、おそらく守りきれないために、せっかく出れたエルフたちを塔の出口に押し込めながらも、脇差しを抜く。
なんで、刀を持ってこなかったのかと、少し後悔しながら構える。
「あなた、戦えるの?殿様なのに」
ミレイが横から、意外そうに口を出す。
「もちろんじゃ。ワシだって武道は心得ている」
あとは、奇襲して首根っこを切るだけじゃ。そう思いながら、ワシは、ミレイの言葉は簡単に済まして、出口から出るタイミングをはかる。
「すじょげーふぇふ」
完全に横槍を刺された。
エルフの突飛な赤ん坊のような言葉に、屋根でくつろいでいたイカロスが反応する。
「あれ。もしかして、城の中から炎から逃れるために登ってきたのか?」
イカロスは楽しげな笑みを浮かべながら、すくっと立ち上がり、ワシたちに目を向ける。
まずい。バレた。
イカロスは、翼を広げて羽ばたくと、鳥の足のようなつま先で、ワシたちに襲い掛かってくる。
その動きは意外と早く。ワシもかろうじて、脇差しで弾けるレベルだった。
「だっ大丈夫?」
ミレイは、横から、また口を出そうとするので、ワシはその動きを制止する。
「出てくるな。エルフたちと下がっていろ」
ワシは鋭い剣幕で、ミレイたちをかばいながら、後ずさりをし、人一人分の出口を自分自身を使って防ぐ。
幸い、若干、出口が狭いために、大勢のイカロスを相手にせずに済んでいるが。
これを人海戦術でやられたら、ワシの体力はジリ貧じゃ。
くそ。
ワシは歯を食いしばりながら、必死に抵抗する。
こんなところでは、終われない。
ワシはなんのために、異世界に来たのじゃ。
人生をかけて、やっとのことで一国一城の主になり。
たくさんの命を失いながらも、この歳まで生き抜き。
便器から上半身を出した美少女・ミレイを助けるために、
目の前の命を失う後悔をしないためにこの場所に降り立った。
亡くなった幼馴染によく似た面影の王妃シオンとの結婚イベントは、まだ完了していない。
むろん。
その気配すらない。
だから、だから。
こんなとこで終われないのじゃぁぁああああ。
ワシの猛攻に目の前のイカロスは足さばきが遅れる。
「ちょっなんだこいつ。おい、交代してくれ」
目の前のイカロスが、耐えきれなくなって、役割を交代してもらおうと、
屋根に腰掛けているイカロスに話しかけようとしたとき。
えっ
その場にイカロスがいなかった。
「お姉ちゃん」
ん?お姉ちゃん?
ワシは、後ろに控えているミレイの声を感じながらも、戦っているイカロスの奥の様子を観察する。
屋根の上には、誰も見当たらない。
さっきまで、十数羽いたはずなのに。
「おいっ。どうなってんだっ」
ワシの代わりに目の前で戦うイカロスが、返事をしたかと思うと、
風切音とともに、額を貫かれ、ワシの目の前で倒れた。
いったい。なにが。
しかし、その理由はすぐに確認ができた。
「お姉ちゃん」
その声とともに、空を見上げると、宙に浮いているシオン王妃と興隆の娘の紅花《べにか》の姿があった。
そうか、紅花《べにか》の弓矢か。
しかし、なぜ。
紅花《べにか》がシオン王妃と一緒にいるのじゃ。
そう思い、その勇姿を讃えようと、二人の姿に目を凝らすと、叫び声が聞こえた。
「きゃっ。見ないでぇ」
その言葉通り、両手で抑えた部分に視線を移すと、たまたま、強風によって、スカートが広がり、艷やかな肌が露わになり、必死に、股間を抑えるシオン王妃の姿があった。
ワシはその様子に、興奮しながらも、腰を抜かす。
そして、挙がるミレイの声にワシも回答を求める。
「お姉ちゃん。お召し物は?」
膨大な魔力を行使した影響で、ミレイは、ワシの横でくたばっている。
ワシも、転移する前に吸い込んだ煙のせいで意識を朦朧とさせながらも、ふらふら、城の外の様子を確認するために、城壁の横穴から顔を出す。
城下を見渡すと、そこにはゴブリンとケンタウロスの群れが突撃しようとし。
軍勢を受け止める文太の部隊は徐々に、城の間際まで後退を余儀なくされた。
どうやら、かなり時間が経ってしまっていたようだった。
移動距離に応じて、時間間隔も変わるのかと、ワシは妙な感覚に陥る。
そして、急いで一番の懸念点であった、右翼と左翼の巨人級のゴブリンを探す。
あれ、いない。
ワシはもう一度、目を凝らして探しだす。
血に染まった平野からは、丸太のような断面で切り落とされた正体不明の大柄の巨体は転がっていた。
やったのか?
ほんとにやったのか?
ワシは思わずガッツポーズをする。
直政が作戦を立ててやってくれたのだと、ワシはいつものように推測する。
そして、では、次の行動を考えなければと、周囲の情報をできるだけ読み取るために、順番に状態を確認していく。
向かって正面の平野には大勢のケンタウロスとゴブリンの死体の山が転がっている。
弓矢の雨が降り注いだあとがあった。
あの中では、なにも残らないだろう。弓矢も特殊品なのか、地面を抉っているものも時折、存在している。
きっと、直政が本気で、興隆の意見を伺いながら、作り上げたのだと推測する。
その死体の面積を鑑みても、ケンタウロス軍は半壊。
ゴブリンの軍勢は左翼と右翼から中央に集まっていた軍は半壊。
およそ、1万の軍勢が城攻めを行っているということか。
2万から1万の部隊を削った直政の戦略の影響はとても大きい。
しかし、未だ戦力は5倍の差がある。
これも、こちらに全く損傷がないことが前提で、劣勢であることに変わりはない。
まだ、作戦が足りない。
ワシはそう考える。
5倍の戦力差を覆すには、あと2,3手足りないと。
そのまま、戦闘に持ち込めば、ジリ貧。
でも、地の利として活かしていた距離はもうすでに無い。
おそらく、弓矢も使い果たし、文太の部隊も限界が近いはずだ。
思案を巡らせていると、遠方から別働隊の騎馬隊の姿が見える。
先頭を走っているのは、興隆の娘の紅花《べにか》だった。
勇ましく直刀を構えて、城攻めを行う1万の軍勢に挟撃を行おうとしている。
これで、1対1で5分5分の勝率に変化が生じる。
ゴブリンはまだしも、ケンタウロスは旋回には時間がかかるし、すし詰め状態ではお得意の突破力は活かせない。
しかし、興隆の娘の紅花《べにか》の手勢が敵軍を押すには、手勢が足りない。すると、左翼の丘陵の方角から、ほら貝の音が聞こえてくる。
戦闘を走るのは、弓の名手。長老の興隆だった。慣れない長剣を手に愛娘の軍勢に同じく5百の軍勢を率いて体当たりを行う。
娘に負けてられないという長老の気概が聞こえてくるようだった。
ワシは関心をしていると、左翼と右翼のゴブリンたちが剣撃で吹き飛ばされるのを目撃する。
幸長《ゆきなが》と宋雲《そううん》だった。
幸長《ゆきなが》は大太刀を振り回し、宋雲《そううん》は素早い剣術で打刀《うちがたな》を振り、何十人力の力を発揮する。
1万に対して、こちらの味方は総勢1500+α(武将2人の武力)。
おそらく、丘陵で構える直政の軍勢は500。本陣の軍勢をこれ以上、割くことはないだろう。
挟撃も相まって、城への圧力はいっそう、強いものがかかる。
そして、ついに城門が開けられ、大きな城壁の内部・城下内での戦闘が始まり、
ガタガタという階段を駆け上がる音をして、文太たちが徹底抗戦の準備をしだした。
ワシがいる3階に文太が駆け上がったとき、城内で慌てるワシと、くたばるミレイ。救出したエルフたちを見て、文太が騒ぐ。
「なぜ。殿がこんなとこに居るんだ!」
「なぜって、、牝馬撹乱作戦の後、転移でこちらに戻って来たのじゃよ」
ワシは驚いた表情を作る文太に回答する。
しかし、その回答に、文太は表情を曇らせる。
まずいな。
え、まずいって。なに?
ワシは思わなかった文太の反応に焦る。
軍勢が増えたら、良いことあるのでは?
こちとら、魔法が使えるエルフちゃんを連れてきたんですよ。と。
待ちに待った増援ですよと。
一生懸命アピールしようと考える。
「この城は炎で包まれる予定なんだ。最後の1万の軍勢。これを仕留めるには、魔獣たちを誘導し、城ごと燃やすしかないというのが、直政の決断だ。俺達はこの城の中にギリギリまで、軍勢を引きつけ、紅花《べにか》たちが、軍勢の出口に蓋をする算段だ。」
文太は、拙い言葉でその緊迫感と、状況を身振り手振りで伝える。
「すでに、火種は仕込んであって、一度火をつけたら、導火線を通って、あちこちが燃え上がる予定だ。俺は最悪、討ち死ににしても良いと思って、承諾したが、殿がいるのでは、わけが違う」
なるほど、焦っている様子がわかった。
ワシは文太に、落ち着かせる。
「火をつけなければ、良いのではないか?残り1万は別の方法で仕留めることにして」
ワシは、自分が危ないというよりも、文太が危ない橋を渡ろうとしていることに驚き、何か方法を考える。
「いや、もう、方法はない。時間はない。殿は早くここから脱出してくれ」
「えええい。なんで、文太はいつもそうなるのじゃ。己の命を捨てるなど容易いことだ。捨てずに生き延びる方法を考えよ」
ワシは長年連れ添ってきた戦友の言葉に、動揺する。
しかし、どうすればよいのじゃ。確かに、文太話すとおり。
この5倍の戦力差を覆すには、火攻めのような、大規模の範囲攻撃が必要となる。
「エルフたちは、城下に入り込んだゴブリンのみを燃やすような範囲攻撃はできないのか」
ワシは、見慣れない場所で、動揺を隠せないエルフたちに話しかける。
「すじょげふふぬぬ」
「あー。何言ってるかわからん。ミレイ通訳を頼む」
「うへぇ」
まずい。ミレイはまだ、くたばっている。使い物にならん。
「と、とにかく。早まるな。文太よ。時期尚早じゃ。」
そう告げた途端、城が揺れる。
な、なんじゃ。
巨人級のゴブリンは倒したはず。
なぜ。
なぜ、今、城が揺れるんじゃ。
急いで城の外を眺めると、空を飛ぶ鳥の姿があった。
目を凝らすと、ちゃんと胸がある鳥だった。
いやいやいや。
ワシは近づいてくる鳥に焦点を合わす。
間違いなく、セクシーなお召し物をされている鳥たちだった。
「あ。あれは、イカロスです。翼の生えた民。隣国ではないはずですが、なぜ。」
ミレイはだるそうな体を引きずりながら、壁に捕まりながら、必死に横穴から覗き込む。
どんどん揺れる間隔が狭まっていく。一気に遅いにかかってきているのだと、体で感じる。
きゃっ
ミレイが、尻餅をつく。
そして、ワシは目にしたくないものを見てしまった。
そう。イカロスたちが、こちらに向かって、火炎瓶を投げてきたのだ。
彼らは、両手で抱えた火炎瓶をこれでもかと、投げつける。
案の定、火の手がすぐに城の周りを囲み、あっという間にこの部屋の周囲も赤く染まる。
熱い。床の温度も段々上がってきた。
「え、なんで?どうして?」
ミレイは、急に頭が冷えたのか、温まったのか、騒ぎ出す。
ワシはもう一度、外の軍勢を確認する。
おそらく、新たな敵イカロスは十数羽。
外にいたケンタウロスとゴブリン勢は、完全に紅花《べにか》たちが、出口に蓋をしていた。
あとは、真っ黒焦げになれば、ワシらの勝ち。
もはや、戦闘の優先順位は変わった。
その1、ワシらは、火の手が完全に王宮の上まで上がる前に脱出する必要がある。
その2、イカロス共をかいくぐって、脱出する必要がある。
その3、ゴブリンたちが炎を逃れるために、階段を登ってくることを阻止する必要がある。
故に、ワシたちは、体にムチを打ちつつ、王宮の最上階に上がるために階段を駆け上がる。
そして、歩けないミレイを急ぎ、お姫様抱っこというやつをしながら、階段を駆け上がり、考える。
回せ。回れ。思考よ。
直政の本陣は、このあとどう動く?これ以上、敵の増援が無いと踏めば、こちらに助けに来るのか?
それとも、イカロスも漁夫の利を狙ったこちらへの増援と捉えるのか?
文太の話だと、このまま、この戦は放置され、イカロスの襲撃も都合よく為すがままに終局となる。
ワシがここにいると分かれば、本陣が救助に動くか?
「私のことは、置いていって」
ワシに抱えられているミレイは、弱々しく話しかける。
「こんな役立たずは、見殺しにしてもらって、構わないわ。」
「あなたが、亡くなってしまうことのほうが、私には辛いの」
ミレイはぼそぼそと、ワシの胸元でつぶやく。
「ええい。うるさい。黙って。ジッとしておれ」
ワシはミレイのつぶやき声に思考が中断されて、イライラする。
「うん。。」
ミレイはいつもは、すぐに歯向かってくるのに、今回は流石に状況がわかっているのか、すぐにおとなしくなった。
「ありがとう」
え。なんで。
ミレイの反応に驚きながらも、また思考を巡らす。
大事なのは、終局を回避する方法である。
1.このまま、屋上まで、上り詰めワシがここにいることを伝える。
2.直政がいるあんなに遠い場所からワシがいくら叫んだところで、その声は届かない。
3.ましてや、屋根に登ると、イカロスが襲ってくるために、巨大な城壁の外で蓋をしている紅花《べにか》たちに、状況を伝えるのはとてもむずかしい。
ええい。どうすれば、良いのじゃ。
「殿っ。殿!!」
なんじゃこんな時に
そう言われて、振り向くと、文太が話しかけてくる。
「この先、もう少し進めば、塔の出口から、城の屋根に飛び移れる。
俺は、戻って、ゴブリンの部隊食い止めるから、このエルフたちもよろしく頼みますよ」
文太は、そう言うと、急いでここから立ち去ろうとする。
わけもわからず、文太に手を惹かれてついてきたエルフたちは、寂しそうに文太を見上げていた。
ワシは、その様子を確認しながらも、文太に声をかける。
「絶対に。戻ってくるのじゃぞ。ワシは屋根のイカロスどもをなんとかするから。
お主も、生き残るのじゃぞ」
ワシがそう言うと、文太は驚いた表情を浮かべながら、笑って答える。
「いくつもの戦場を殿と生き抜いてこれた。殿がそういうなら、今回も必ず、戻ってくる」
そう言って、走り去る文太の背中を確認しながらも、ワシは外の光が差し込む出口へと向かった。
とにかく時間はない。
直政に自分の居場所を知らせる方法は、動きながら考える。それしかない。
塔と屋根が一体となっている王宮の瓦屋根には、少し平になっている部分があった。
ワシはそこにエルフや、ミレイを連れて、出る。
眩しい太陽が出ている。牝馬撹乱作戦が真夜中だったせいか、変な感覚に
襲われつつも、目の前の様子を確認する。
そこには、屋根の上で「飛ぶのが疲れた」と、座りながら、笑いながら、城下に火炎瓶を投げ込むイカロスたちの姿があった。
「いやぁ。楽勝だな。まさか、サキュパス軍とゴブリンケンタウロス連合軍が戦っている最中、どっちも倒せるような作戦が実行できるなんて」
ワシたち、愉快におしゃべりをするイカロスに攻撃を受けていた。
舐められたもんじゃ。
ワシは、おそらく守りきれないために、せっかく出れたエルフたちを塔の出口に押し込めながらも、脇差しを抜く。
なんで、刀を持ってこなかったのかと、少し後悔しながら構える。
「あなた、戦えるの?殿様なのに」
ミレイが横から、意外そうに口を出す。
「もちろんじゃ。ワシだって武道は心得ている」
あとは、奇襲して首根っこを切るだけじゃ。そう思いながら、ワシは、ミレイの言葉は簡単に済まして、出口から出るタイミングをはかる。
「すじょげーふぇふ」
完全に横槍を刺された。
エルフの突飛な赤ん坊のような言葉に、屋根でくつろいでいたイカロスが反応する。
「あれ。もしかして、城の中から炎から逃れるために登ってきたのか?」
イカロスは楽しげな笑みを浮かべながら、すくっと立ち上がり、ワシたちに目を向ける。
まずい。バレた。
イカロスは、翼を広げて羽ばたくと、鳥の足のようなつま先で、ワシたちに襲い掛かってくる。
その動きは意外と早く。ワシもかろうじて、脇差しで弾けるレベルだった。
「だっ大丈夫?」
ミレイは、横から、また口を出そうとするので、ワシはその動きを制止する。
「出てくるな。エルフたちと下がっていろ」
ワシは鋭い剣幕で、ミレイたちをかばいながら、後ずさりをし、人一人分の出口を自分自身を使って防ぐ。
幸い、若干、出口が狭いために、大勢のイカロスを相手にせずに済んでいるが。
これを人海戦術でやられたら、ワシの体力はジリ貧じゃ。
くそ。
ワシは歯を食いしばりながら、必死に抵抗する。
こんなところでは、終われない。
ワシはなんのために、異世界に来たのじゃ。
人生をかけて、やっとのことで一国一城の主になり。
たくさんの命を失いながらも、この歳まで生き抜き。
便器から上半身を出した美少女・ミレイを助けるために、
目の前の命を失う後悔をしないためにこの場所に降り立った。
亡くなった幼馴染によく似た面影の王妃シオンとの結婚イベントは、まだ完了していない。
むろん。
その気配すらない。
だから、だから。
こんなとこで終われないのじゃぁぁああああ。
ワシの猛攻に目の前のイカロスは足さばきが遅れる。
「ちょっなんだこいつ。おい、交代してくれ」
目の前のイカロスが、耐えきれなくなって、役割を交代してもらおうと、
屋根に腰掛けているイカロスに話しかけようとしたとき。
えっ
その場にイカロスがいなかった。
「お姉ちゃん」
ん?お姉ちゃん?
ワシは、後ろに控えているミレイの声を感じながらも、戦っているイカロスの奥の様子を観察する。
屋根の上には、誰も見当たらない。
さっきまで、十数羽いたはずなのに。
「おいっ。どうなってんだっ」
ワシの代わりに目の前で戦うイカロスが、返事をしたかと思うと、
風切音とともに、額を貫かれ、ワシの目の前で倒れた。
いったい。なにが。
しかし、その理由はすぐに確認ができた。
「お姉ちゃん」
その声とともに、空を見上げると、宙に浮いているシオン王妃と興隆の娘の紅花《べにか》の姿があった。
そうか、紅花《べにか》の弓矢か。
しかし、なぜ。
紅花《べにか》がシオン王妃と一緒にいるのじゃ。
そう思い、その勇姿を讃えようと、二人の姿に目を凝らすと、叫び声が聞こえた。
「きゃっ。見ないでぇ」
その言葉通り、両手で抑えた部分に視線を移すと、たまたま、強風によって、スカートが広がり、艷やかな肌が露わになり、必死に、股間を抑えるシオン王妃の姿があった。
ワシはその様子に、興奮しながらも、腰を抜かす。
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