最強のチー

クロクマ

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転移は森から

第十三話 紳士だからな

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 アスカと試合してからノイルのおっさんの家に来ていた。既に時間は夕方で村の人達は晩御飯の準備中だった。
 玄関ではおっさんとその隣に緑髪ロングの優しそうな美人がいた。多分おっさんの奥さんだろう、人妻だ。そして見ず知らずの俺を優しく迎えてくれた。

「それじゃーアキ!あの時のお礼をさせてもらうぜ!約束通り1週間俺の家に泊まってけ!」

「っ!?アキ、約束って!それじゃあの試合の賭けって意味無いじゃない!」

「俺は紳士だからなぁ~」

「むぅ…私は納得しないからね」

「ガッハッハッ、どうだったアスカ?アキは強いだろう?」

「私だって…もっと強く…なるもん」

 恥じらっちゃって可愛いなぁー。でもさっきからやけに騒がしい。祭りか?


 カン、カン、カーーン、


 突如鳴り響いた鐘の音は村の人々に緊張を与えた。それは敵襲の鐘だった。
 やっべぇ~フラグを綺麗に回収したか?てことは相手はあいつらか。

「ゴブリンが集団で攻め込んで来たぞぉ!」

 誰かが叫んだ。女子供は逃げ、男は生きるために守るために戦う。
 しかし、それは普通の村がする事でこの村は違った。みんな獰猛な笑みを浮かべ武器を手にしていた。
 俺は村のが存在する所と訓練場がある時点である程度予想できていたが本当にアレだとは信じてなかった。否、信じたくなかった。まさかアレだとは……
 勿体ぶらずに結論を言おう。
 彼らは戦闘狂だ。
 
「おいアキ!ゴブリンだってよ!お前のせいだな、ガッハッハッ!!」

 笑い事じゃない、ゆっくりできないじゃないか。おっさんの奥さんもスイッチ入って目のハイライト消えてるし、めっちゃデカイ包丁持ってるし。人妻だし、いや人妻は関係ないか。

「私行ってくる!」

 飛び出したアスカはもう見えなくなった。どんだけ戦いたいんだよ。

「じゃー俺は休んでますね」

「おう!家は頼んだ!」

 誰も守るなんて言ってねー


==1時間後==


「まだ終わんないの?お腹空いたんだけど」

 そう独り言を呟いた俺は『ワールドマップ』で敵の数を調べた。今敵は1000匹くらい、んで1匹強いのがいる。おっさんより強いな、なんて考えてたその時!

 ビーーーーー!!

 頭の中に痛いほど響いた。一瞬なんの音か分からなかったがこれは『危険回避』のスキルによるものだった。
 そしてある事に気づいた俺はドアを蹴り飛ばし全力で走り出した。全力で。


===アスカside===


「今日は悔しかったなぁーでもアキは何考えてるのかよく分かんないのよねぇ、なんか読めないというか」

 そんな事を考えながらゴブリンを蹴散らしに行く。しばらく進むとある異変に気づいた。肌がピリピリを痛み、手に汗をかき、足に力が入らない。



「ガァァァァァ!!!」



 咆哮は唐突で大きなものだった。そしてその正体は…

「レジェンドオーガ!もっと森の奥の洞窟にいるんじゃなかったの!」

 勝てるわけがない、が、私の中の戦闘狂が戦いたいと言っている。確かに倒せないけど負傷させて村の被害を減らすことはできる。そしてお父さん達に倒して貰おう。

 戦闘が始まるがそれは戦闘になってはいない、レジェンドオーガの棍棒の一撃で持っていた剣は粉々に、咆哮で意識は薄れ最後に見えたのはレジェンドオーガの大きな棍棒だった。必死に目を閉じて痛みに耐えようとする。
 しかしいつまで経っても痛みが来ない、まさか痛みも感じる間もなく、って思ったけど感覚はある。恐る恐る目を開けるとそこには、

「あ‥れ?なん‥で‥いるの‥?」

 レジェンドオーガの一撃を弾き返してなお神々しい笑顔をしたアキがいた。そしてアキは私の質問の答えにこう返した。


「紳士だからな!」


 


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