追放王子の流刑地脱出劇!〜背に腹はかえられないので罪人をパーティに入れようと思います!〜

天海二色

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第二章 ダンジョンの奥に行けないんだが?

第十五話 希望の光

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「へへッ! へへへへッ!!」

 ナイフが胸に刺さり、地面に手をつき呻き声をあげるグレンを見て、イギーは興奮のままリックを茂みに投げ飛ばし、前脚で地面をざりざりと掻いた。

「こレで! 心置きなく食エるなァッ!」

 そして丸腰で立ちすくんでいるレオナルトの背中に向け、イギーはサソリの尾をしならせ、先端の毒針を向ける――!

 がしっ

 がしかし、毒針はレオナルトの首を貫く前に止まった。
 すかさず立ち上がったグレンが、尾を鷲掴んだからだ。ナイフの刃が深々と急所に突き刺さっているのに、どうして動けるのか。

「うぉおおおおりゃああっ!!」

 困惑している間にも、尾を両腕で掴んだグレンの剛力によって、イギーの巨体は浮き上がり大木の幹に叩き付けられた!

「ったく、昨日に引き続きよく拾いもんを使う日だなぁっ!」

 ぼとり。
 元気よく叫ぶグレンの胸元からナイフが落ち、地面へ転がった。
 ――服の中から落ちてきた、巨大猪ビッグ・ボアの分厚い肉と共に。
 リックが持ち込み、イギーが尾で払いのけ辺りに転がした物だ。
 実はレオナルトはナイフを拾いイギーに背を向けた際、グレンに向け足元に転がる巨大猪ビッグ・ボアの肉を顎でさし、「使え」と目配せをしていたのだ。
 しゃがんだ状態だったグレンは巨大猪ビッグ・ボアの肉を手早く拾うと胸元へ仕込み、レオナルトのナイフを受け入れる。
 そして迂闊に近付いてきたイギーを叩きのめした、という訳である。

「モンスターと言えど! 食物は粗末にしてはならぬぞ!」

 見事にイギーを出し抜いたレオナルトは、ナイフを拾い直し、勝気に笑う。

「な、ナ、舐めやガッてェ……!!」

 幹に叩き付けられ、地面に転がったイギーがずりずりと体を起こす。
 そして口が裂けている人面の歯を剥き出しにし、レオナルト達へ敵意を向けた。
 同時にイギーの背中がメキメキと音を立てて盛り上がり、二つのコブを作る。やがてコブの皮膚を突き破り、破裂するように生えてきたのは――コウモリの翼だ。
 両翼を得たイギーは大きく羽ばたかせ、空へと飛び上がった。

「げぇっ!? こいつ飛べんのか!?」
「なんと……! 翼を生やせる個体は魔力が多い個体でもある! 気を引き締めてかからねば!」
「つっても俺は空中戦なんざできねぇぞ!?」

 グレンは試しに地面に落ちていた石や枝を投げてみたものの、鬱蒼とした密林では障害が多く、イギーに届く前に樹木にぶつかり、当てることができない。
 対するイギーはサソリの尾を振り回し、樹木や葉を容易に貫く威力を持った毒針を発射してくる。おまけに毒針は直ぐに再生できるようで、ほとんどインターバルなしに次々と落とされ、レオナルトとグレンは回避に追われた。

「おいレオ! このままじゃジリ貧だ、何かいい魔法ねぇのか!?」
「そうは言っても、毒針に当たれば終わりなうえ、暗くてよく見えない、動き回る的に当てるのは難易度が……っ!」

 一帯を火魔法で焦土にする手もなくはないが、それは自分達も巻き込まれる諸刃の剣。となると、使える魔法は限られてくる。
 レオナルトはグレンと木の陰に隠れ回りながら頭を悩ませた。
 
「お、お、おれに魔力ヲ使わセたんだ! 楽に死ネると思うなよォッ!?」

 空を飛んだり、木の枝に飛び乗ったり、身軽な動きで翻弄してくるイギー。
 だが翼の維持や毒針の再生には魔力の消費が必須で、使い続ければいつかは力尽きる。尤も人間よりも膨大な魔力を持つモンスター相手に、魔力切れを待つのは得策とは言えない。
 せめて戦いやすい場所を見付けなければ、とレオナルトは毒針に警戒しつつ辺りを見回す。

「……ん?」

 そして視界に入ったに、レオナルトは勝気に笑った。

「グレン、走るぞ!」
「チッ、わかったよ!」

 希望の光に向け、一気に駆け出すレオナルトとグレン。逃すまい、とその背中を追うイギー。

「待てェ! 待てェ! 待……ッ!?」

 がくんっ
 時に空を舞い、木々に飛び移り、着実に距離を詰めていたイギーだったが、突如としてその動きが止まる。

「な、な、ナんだァッ!?」

 首に何かが引っかかっている。紐状の……蔦で作られた、輪っか。
 木と木の間に仕掛けられていた、輪っか罠スネアトラップ。追い詰めることに気を取られ、また暗がりだったこともあり全く見えていなかった。

「蒼穹を裂く雷よ! 我が意志に応え、裁きを下す光となれ!」

 状況を理解しきれず思考停止をしたイギーの隙を見逃さず、レオナルトは右手を掲げ詠唱を唱えると、青い稲妻をイギーに叩き付けた!

「サンダーボルト!!」
「あぁああアあッ!!」

 全身に焼けるような激痛が走ったイギーは悲鳴をあげ、ぐったりと力が抜ける。すると自重に耐えきれなかった蔦のロープが切れ、イギーはどさりと地へ堕ちた。
 そこにのしのしと、わざとらしいぐらいの遅さで歩み寄ってきたのは、指をバキバキと鳴らすグレンである。

「さっきはよぉくも悪趣味なことしてくれたなぁ?」

 人質を取った上に、仲間に仲間を刺させたのだ。これを悪趣味と呼ばずなんと呼ぶのか。
 グレンは恨み辛みが乗った右腕を振りかぶると、

「……死ね」

 情けなく口角を下げているイギーの眉間にめり込ませ、骨を砕き脳を貫き、トドメを刺したのであった。
 夜の密林に、断末魔が響き渡った。

 *
 *
 *

「ど、ど、どうにかなってよかったですぅ~」

 絶命したイギーを前に、今にも泣きそうな顔でへたり込むのは、密林に輪っか罠スネアトラップを仕掛けてくれていたリックである。
 彼はイギーがレオナルト達に夢中になっている間、あちらこちらに罠を張り、レオナルト達が劣勢となった際は、鏡の如く磨かれた銀色のロケットペンダントに月光を反射させ、暗がりの中を誘導。仕掛けた罠へ導いた。
 それがうまくハマり、イギー討伐を成し遂げたのだ。

「助かったぞ、リック! 貴殿がいなければどうなっていた事やら」
「あんなのに目ぇ付けられていたとか、災難だったなお前も」
「……あの、いつから気付いていたのですかぁ?」

 労わってくれるレオナルトとグレンに対し、リックはおずおずと訊ねた。
 彼らはリックがモンスターに降っていることを、知っていたかのような振る舞いだったからだ。

「具体的に気付いていた訳ではない。隠し事をしているな、と思っていただけだ。最初からな」
「え、えぇえええ~っ!? 最初からですかぁっ!?」
「あぁ。貴殿は私が名乗る前から、私のことを『レオナルト』と呼んだだろう?」
「え? あ、はいぃい」

 リックがレオナルト達の前に姿を現し、事情を説明した時。リックは確かに「」と呼んだ。ついでにグレンを奴隷護衛だと分析していた。
 しかしそれはおかしいのだ。何故ならばレオナルトの名を知るグレンは、レオナルトのことを「レオ」と呼ぶ。自己紹介をすませていない初対面のリックが、本名を知る機会などないのだ。

「貴殿はダンジョン探索時に私達を見た、と言っていたが……。本当はもっと前から見ていたのではないか? 例えばそう、ポール討伐時から」

 ぐっと、リックが口をキツく結ぶ。図星なようだ。

「……はい。その頃からずっと、僕は貴方達を尾けて回っておりましたぁ……」

 そして観念した彼は、これまでの経緯を聞かせてくれた。
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