追放王子の流刑地脱出劇!〜背に腹はかえられないので罪人をパーティに入れようと思います!〜

天海二色

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第三章 ドラゴンが邪魔なのだが?

第二十五話 雉も鳴かずば

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 ――ルゥ! ルゥ! もう一度、見せてくれ!

 僕は島流しにされる前、とある貴族の護衛兼従者として仕えていたんだ。元々は騎士団の弓兵団長とかやっていたのだけれど、公開演習の見学に来ていた旦那さまと若さまに気に入られてね。引き抜かれたんだ。
 平民出身の僕からすると、お屋敷の生活は慣れないことも多くて大変だったけど、楽しかったよ。一応、騎士団で礼儀作法は学んでいたから、何とか粗相はしないで済んだし。

 幼い若さまは僕の弓術を見るのが好きで、よく屋敷の敷地にある射的場で射るのを強請られていたよ。
 旦那さまが狩猟に参加する時は、必ず僕も同行していた。若さまも都合がいい時はついて来て、僕の側にずっといたよ。
 やれ兎を捕って、やれ鳥を捕って、と、願われるがまま、僕は弓を引いた。
 若さまが喜んでくれるならって、僕はただ従順に、無心に矢を放った。
 それが、いけなかった。

 ――うわぁあああっ!

 茂みにいる鹿に向けて矢を放った時、人の悲鳴が聞こえた。子供の声だった。
 慌てて確認しに行くと……子供の首に、僕の矢が刺さっていたんだ。
 その子は今回の狩猟に招待されていた、異国の親善大使のご子息だった。矢は急所を貫いていたから、その子は治療の甲斐なく亡くなって……国際問題に発展した。
 勿論、悪いのは僕だ。旦那さまも若さまも悪くない。
 僕は直ぐに解雇を申し出て、公での解雇時期を細工して貰い、狩場へ不法侵入した挙句に子供を射殺してしまった蛮人の立場を作り、全ての罪を負えるようにした。
 そして裁判所で、流刑地送りが決まった。

 ◇

「細工のお陰で、旦那さま達に累が及ぶことがなかったのは不幸中の幸いかな。大変お世話になったのに、迷惑をかけてしまって終わってしまって、申し訳なかったけれど」

 ルゥが語り終えたと同時に、風が吹く。焚火の炎が揺れる。

?」

 ぼそりと口を開いたのは、グレンだった。
 ルゥが目を細める。

「どういう意味かな?」
「弓兵の頭やってた奴が、本当に誤射したのか? って訊いてんだよ」
「どんな達人でも、失敗はするものだろう?」
「……訊き方を変えるか」

 そこでグレンは膝に右肘を置き、頬杖をつく。

「お前の話に出ていた若は、お前が誤射した時なにを持っていた?」

 焚火の炎が再び揺れた。
 薪が爆ぜる音が、夜の静寂に小さく響く。

「何って、若さまは弓を持っていたよ。……狩猟に来ていたんだ、当たり前だろう?」
「そうか。それじゃ、使?」

 グレンはルゥを真っ直ぐ見詰めて言う。まるで彼の僅かな反応すらも見逃すまい、と言うかのように。
 レオナルトもリックも、静かに息を呑んでいた。誰もが、ルゥの言葉を待っている。

「……」

 数秒の沈黙後、ルゥは焚火を見つめながら、まるで心の整理をするようにゆっくりと息を吐いた。

使

 静かな声だった。
 しかしその言葉が落ちた瞬間、場の空気が確かに変わる。
 狩猟の時、ルゥの側について回っていたという、幼い若。その子はルゥの弓術に憧れ、彼を真似て弓を持っていたのだろう。そして興奮のまま、未熟な腕を奮っていたことだろう。
 誤射を、したのは――

「そうかよ」

 そこでグレンは一転して追及をやめ、ぶっきらぼうな表情を浮かべてルゥから顔をそらす。
 その反応が予想外だったのか、ルゥはきょとんと目を瞬いた。

「訊かないのかい?」
「あ? 何をだ。俺はただ、若も弓を持っていたのか気になっただけだよ」
「……」
「それで、。これで話は終わりだ」

 その言葉はかつて、レオナルトがグレンへ送った言葉だ。
 本人が話したことを否定はせず、されど鵜呑みにはせず、 真相はどうあれ「自分はこう思うことにした」と、伝える為の言葉。
 ふっと、ルゥが微笑む。

「そう」

 グレンとルゥが落ち着いたところで、ようやく鍋の中身が配膳され、四人は牡丹肉を堪能する。もう険悪な空気になるとことはなく、和気藹々と夕食を楽しめた。
 そして各々の器が空になった時、レオナルトが勢いよく立ち上がる。
 次いで拠点として使っている洞窟の中に一度入ったかと思うと、木材で作ったコップを四つ分、抱きしめるように抱え直ぐに戻って来た。

「実は! 昨日ジズの観察をしていた際、よく熟したモモモの実とハチミツを見付けてな! 今日の昼間に回収し、ハチミツモモモジュースを作ってみた!」

 宣言と同時に周囲に漂う甘い香り。
 昼間に小休憩を取った際、レオナルトは「水を飲みに行く」とだけ告げパーティから離れ、暫く姿を消していた時間があったのだが、その時に一人こそこそとサプライズを用意していたらしい。

「明日のドラゴン討伐に備え! そしてルゥのパーティ加入を記念し! これで乾杯しようと思うっ!」
「そこは酒じゃないのかよ」

 グレンが不満そうに突っ込む。

「酒は何ヶ月も発酵させなければ作れないではないか! あとリックは未成年(※十六歳)なのだし、ジュースでいいだろう!?」

 レオナルトが堂々と言い放つと、グレンは「ちっ」と舌打ちしつつも、差し出されたコップを受け取った。
 リックも「未成年って言われると、ちょっとムズムズしますけど……でも、ありがとうございますぅ」と恐縮しながら手を伸ばす。
 ルゥは静かに、それでいて穏やかな微笑みを浮かべながら、レオナルトの好意を受け取った。

「では――乾杯!」

 レオナルトが高らかに杯を掲げる。

『乾杯!』

 四つのコップが軽く触れ合い、焚火の橙色の灯りの中で小さく音を立てた。
 口に含めば、モモモの実の優しい甘みと、ハチミツの濃厚な香りが広がる。疲れた身体にじんわりと染み渡るような、素朴で滋味深い味だ。
 四人は顔を見合わせ、笑い合う。

「決戦は明日! 必ず、ドラゴンを打ち倒してみせよう!」

 そうして夜は過ぎていき――
 ドラゴンとの再戦が、幕が上がる。



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